第338話(終・第九章第18話) 「運営」の本気5
「……あの、ライザ? これ、第十三層のエリアボス戦でも使えたんじゃ……」
「……言わねぇでください、セツ。やっちまったなぁ……、って思ってんですから」
B49階に出てきた合計1,024体のオトギモンスターたちを
マーチちゃんの武器・スリングショット、
クロ姉の技・ダブルスタンプ、
サクラさんの技・電光一閃、
ススキさんのスキル『大爆発』(パインくんが『堅牢優美の障壁』で私たちに被害が出ないようにしてくれている)、
シニガミさんのスキル『バイロケーション』、
ベリアさんのスキル『ダーインの遺産』
の総攻撃でその数を大きく減らしていった私たち。
もちろん、私も戦っています。
敵を投げ、器用さの高さによって敵同士をぶつかり続けるビリヤードのような戦法で。
ライザもヒットアンドアウェイで加勢していました。
相手のモンスターたちは特殊効果を封じられているため、反撃することも守ることも増えることも投擲を反射することもできなくなり、逃げ惑うことになりました。
リゼのおかげで、苦戦した第十三層のエリアボス戦をさらに強化しているこのダンジョンのB49階のモンスターフロアをなんとか制圧することができてホッとします。
……ただ、階段を下る前に思ったのが先ほどの私の発言。
第十三層のエリアボス戦もカラメルやリゼに頼めばあれほど苦戦することもなかったのではないか? と。
ライザは、あの時はなんで思いつかなかったんだ……、と相当ショックを受けているようでした。
……よくない言い方をしてしまいました。
ライザの気分が沈んでいます。
このままではいけない、と判断した私はライザに言いました。
「ご、ごめん! 責めるつもりで言ったんじゃなくて……っ。私もなんで思いつかなかったんだろう、って思って……! でも、あのエリアボス戦でライザが思いついたことって悪い作戦じゃなかったと思うよ? それでみんな無事に切り抜けられたんだから。それが一番重要なこと、だよね? 私もあなたを頼るばかりじゃなくて偶にはあなたを助けられるようになりたいな……」
「セツ……。
「ええー……」
「……ふふ」
笑い声……。
私の気持ちが伝わったのか、彼女は気持ちを切り替えていました。
B50階へ。
そこは先ほどと同じ合計1,024体のオトギモンスターズが登場するフロアでした。
ただ、違ったのは、
――その階に降りた瞬間、二チームに分けられてしまったこと。
間を見えない壁に仕切られて……!
しかもその壁は、魔法を通さない仕様のようで……!
私がいる方にいたのはクロ姉、コエちゃん、サクラさん、ススキさん、キリさん。
コエちゃんがいて、カラメルに敵の特殊効果を封じてもらえたのは救いでしたが、守ることに関してとても優秀なパインくんとアンジェさんの二人がどちらもこっちにいなかったことが悲劇を生みました。
ススキさんがやりやがったのです。
――チュドオオオオオオオオンッ!
障壁を張れないというのに……!
ダメージを無効化できないというのに……っ!
強化された『大爆発+』の威力はすさまじく……。
私たちの方にいた512体の敵は一体残らず消し飛びました。
……それだけで済めばよかったのですが。
私たちも消されかけました。
復活薬を持っていなければ黒い粒子になって散っていたでしょう。
そんなことを仕出かしたススキさんは、サクラさんとキリさんに思いっきり頬を引っ張られたあと、ブチギレたクロ姉によって頭以外を地面に埋められていました。
カラメルも怒っていて、埋められた彼女の頭の上で彼女をさらに埋めるように飛び跳ねていました。
私とコエちゃんは何もしていません。
私は、クロ姉とカラメルがあれだけやってくれればもういいかな、と思ったので。
ススキさんは向こうの戦いが終わるまで数分の間、そのままの状態で放置されました。
B51階。
ここも合計1,024体のオトギモンスターズが出てきたのですが、今度は四チームに分けられることに……。
ライザ・コエちゃん・パインくん
マーチちゃん・サクラさん・シニガミさん
クロ姉・アンジェさん・ベリアさん
……私・ススキさん・キリさん
ちょ、ちょっと待ってください!?
守りも特殊効果の無効化もできない分け方をされてしまっているのですが……!?
そ、そんなことよりも……!
「ちょ、セツちゃん……? なんかチョー嫌な予感がするんだけど……っ」
「き、奇遇ですね……。私も、何か既視感が……っ」
キリさんが引き攣ったような顔を私に向けてきて……。
私も同じような顔で返していたその時。
「先ほどのフロアで通用することは証明されています! また蹴散らしてみせましょう! エクスプロージョン!」
――チュドオオオオオオオオンッ!!
「きゃああああああああっ!?」「ひゃわああああああああっ!?」
私たちの視界は一瞬にしてホワイトアウトしていきました。
結果から言いますと、私たちはB51階のモンスターフロアを制圧しています。
ですがそれは、ススキさんの成果ではありません。
あの爆発がもたらしたのは私とキリさんのHPを吹き飛ばしただけ。
敵の皆さんはオトギタチシェスの障壁によって一切のダメージを負っておらず、平然としていました。
私たちがこのモンスターフロアを制圧できたのは、クロ姉が透明な壁を『ブレイクスルー』で壊して他のみんなと合流させてくれたからです。
……本当、ススキさんには学習してもらいたいものです。
B52階でススキさんに少しお灸を据えて。
何が起こるのか想像もつかないB53階へ細心の注意を払いながら進んでいきました。
B53階。
B49階からB51階までが地獄のようなゾーンだったためそれはもう警戒していたのですが、さほど難しくはありませんでした。
いたのはマザーシェディムというシェディムを生み出し続けるモンスター。
フロア内には既に2,000体を超えるシェディムがいましたが、お構いなしにマザーへと突っ込んでいって投げ飛ばすと周りにいたシェディムたちは消えて戦闘が終了しました。
(マザーシェディムを見て情報を取得したライザに、バステ・デバフ完全無効はあるがそれ以外に注意すべき点がない、と教えられていたので)
B54階はマザートレック戦。
(今度はサクラさんが一瞬で間合いを詰めて切り伏せました)
B55階はマザーオートマ戦。
(ここはベリアさんがすぐに真っ赤な剣で串刺しにして倒しています)
こうして長かった連戦もいよいよ終わりを迎えます。
B56階、エリアボスのいる階。
ここには隠し部屋(入手できるアイテムは鍛冶の最高級素材)があり、ライザがその場所に「転移シート」を設置してからエリアボスを討伐するための作戦会議を行って。
私たちは第十四層のエリアボスに挑むために大きな扉を開けました。
そこにいたのは――
――16体のプディンでした。
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