第337話(終・第九章第17話) 「運営」の本気4

 現在、③の22時12分。

 場所は「古代文明の地下遺跡」ダンジョンB48階の安全階セーフティフロア

 私たちはこれからのことについて話し合っていました。

 認識を合わせるために、です。


「B1階からB3階が第一層のダンジョンボス、B5階からB7階が第二層のダンジョンボス、B9階からB11階が第三層のダンジョンボス……」

「B13階からB15階は第四層のダンジョンボス、B17階からB19階は第五層のダンジョンボス、B21階からB23階は第六層のダンジョンボスだったわね……」

「そして、B25階からB27階までが第七層、B29階からB31階までが第八層、B33階からB35階までが第九層、B37階からB39階までが第十層、B41階からB43階までが第十一層、B45階からB47階までが第十二層だった……」

「そうなると、次は第十三層のダンジョンボスが出てくる、って流れっすかね?」

「えっとー、B47階にいたのがアホクビで、第十二層のエリアボスはタチシェスだったから……B49階にいるのはリスセフかな? ほら、B31階もアホクビが出てきてて、そこは第八層のボス群で第八層のエリアボスってタチシェスだったじゃん? それでB32階は安全階でB33階にはリスセフが出てきてたから、そん時と一緒だなー、って」(←キリ)

「第十三層にいたリスセフ……。気になったのだけど、第十三層ってどういう構成になってるの? エリアボスの間に四種全て出てきてたの」

「……謎。マーチちゃんの言う通り」

「ぼ、ボクたちは第十三層のダンジョン1からダンジョン3の内容を知らないもんね……。次の階にはオトギリスセフが出てくる、とかかな……?」

「……何にしても。ここにはこれまでのエリアのエリアボスは出てこないんでしょう? それさえわかっていれば充分よ。あの四体を同時に相手する、なんてもうこりごりだわ」

「うっわ、フラグ立てんなし! これもう、確実にどっかでオトギ四種同時に出てくるやつじゃん!」(←ススキ)


 私たちがまだ何が待っているのか推し測れていないB49階について予想を立てていると、ライザが口を開きました。


「……悲報です。次のB49階には第十三層ダンジョン1のダンジョンボスが出てくると想定されますが、第十三層のダンジョン……



――その全てのダンジョンボスが、エリアボスと同じオトギモンスターズです」



「「「「「……え?」」」」」「「「「「……は?」」」」」


 とんでもないことを聞かされました。

 ライザの言葉は、他のみんなも思ってもみなかったことだったのでしょう。

 疑問の声が重なりました。

 第十三層にあるダンジョンのその全てのボスがエリアボスと同じ……?

 それってどういう……?


 私の頭の中がこんがらがっている間にサクラさんとシニガミさんがライザに質します。


「ちょ、ちょっと待って! それっておかしいんじゃない!?」

「そ、そうだよ……! エリアボスとダンジョンボスが同じだなんて……!」

一人称わーに聞かれても……」


 ライザも、なんでエリアボスとダンジョンボスが同じなのか? その答えはわからないようで困っていました。

 そんなライザを助ける子が一人。


「このダンジョンの難易度を上げるためのようです。ダンジョン1からダンジョン3が未攻略であってもダンジョン4に挑めるようにしてしまった影響でダンジョン1からダンジョン3はレベルを上げるためだけの場所としてすっかり定着してしまったのです。ボスに挑まなくてもレベル上げは可能であるため、ダンジョンボスはどのプレイヤーからも見向きもされず放置されることになりました。それなので『運営』は、どうせつくっても挑まないなら……、と第十三層のダンジョンボスをエリアボスの内容と全く同じにして、この『古代文明の地下遺跡』ダンジョンを鬼畜仕様にする計画を思いついた、らしいです。そのような情報を……『どこか』で見つけました」


 コエちゃんです。

 ……最後の方、ぼかしていましたが、これ、現実のことはなんでも調べられる、という能力で「運営」のところから情報を抜き取ってきていますよね、コエちゃん……。

 だた、彼女が言うことなのでそれは事実なのでしょう。

 コエちゃんは嘘をつかないので。


 コエちゃんによる補足の説明があって、ライザがみんなに言いました。


「……つーことですので、B49階はオトギモンスターズとの戦闘が予想されます。気を引き締めていきましょう。……バカみてぇな数が出てくるっつー計算も出てますし……」


 ライザの言葉に私たちは覚悟を決めて階段を下っていきました。



 B49階。

 そこは地獄でした。



――合計1,024体のオトギモンスターズが襲ってきたのです……!



「ひ、ひぃ……っ!」


 こんなの、どうしろ、って言うんですか!?

 正直、勝ち方がわかりません!

 パインくんが全員が入るようにドーム型の障壁を展開してくれていますが、敵が多すぎです!

 『堅牢優美の障壁』がすぐに壊されてしまいます!

 私は必死になってMP回復ポーションをつくって、それをパインくんに投薬して、彼が障壁をまた展開できるようにして……!

 シニガミさんが分身体を障壁の外につくって、また、ベリアさんも真っ赤な剣を障壁の外で操って戦っていましたが、オトギタチシェスの障壁に妨害されてその間にオトギリスセフたちやオトギアホクビたちに分身体と剣を消滅されられて……!

 あまりにも相手の数が多すぎる……っ。

 私たちはパインくんに守ってもらうことしかできなくなっていました。

 分身体や剣だから消滅させられてもまだ諦められるのですが、それが私たちの誰かであったなら……最悪です。

 この状態で障壁の外に行くことなんてできませんでした。


 なんとか事態を好転させようとしてススキさんとマーチちゃんが動きました。

 『パラダイムシフト』を使ってステータスを下げた一体のタチシェスにマーチちゃんが魔石の弾を射たのです。

 しかし、狙ったタチシェスの前にオトギスクオスが割り込んできて。

 マーチちゃんが射た弾を撥ね返してきました。

 その弾はどういうわけかパインくんの障壁をすり抜けて……!


「あぐっ!?」

「マーチちゃん!?」


 マーチちゃんに直撃しました。

 倒れるマーチちゃん。

 辺りに彼女が持っていたアイテムが散らばります。

 私はマーチちゃんの元に駆け寄りました。


「だ、大丈夫なの。お姉さんのポーションでHPを上げてたから……」


 マーチちゃんは無事のようでした。

 ……ただ。

 オトギスクオスの特殊効果でアイテムが散らばらされたことによる被害者は他にもいて……。


「るるっ!?」


 リゼです。

 あの子はマーチちゃんのバッグの中にいましたから、突然放り出されて障壁に激突していました。

 私が呼ぶとリゼは私の腕の中に収まってきます。

 障壁にぶつけられたことを痛がっていたので撫でていると、何かが閃きそうに――。


「……あれ? リゼって――」

「リゼ! 『特殊効果無効化魔法』使用できますよね!? お願いします!」

「るる! るーりるー!」


 私が引っ掛かっていた何かをライザが先に言いました。

 彼女もリゼを見て思いついたようです。

 この状況を打開する策を……!


 リゼがライザのお願いを聞いてくれて、敵を対象とした広範囲型の「特殊効果無効化魔法」を使用してくれます。

 そうすると、相手のできることはかなり制限されて形勢は逆転。

 私たちはスキルをフル活用して勝利を収めることができました!

 リゼ、すごいです!

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