第335話(終・第九章第15話) 「運営」の本気2

 モンスターを倒すと出現した下り階段。

 私たちは当惑していました。


「……あの、えっと、どういうこと?」

「さ、さあ……?」

「いきなり帰れなくなったのには焦らされたけれど……」

「ダンジョンに入ってすぐモンスターフロアでしたからね……」

「しかも二連戦っすっからね……」

「それも初めてのことだったけど、敵が二体ずつしか出てこなかったのも初なの」

「意味わかんねぇですよね……。くそっ、『アナライズ』が使えれば……っ」

「『運営』はふざけてるのかしら? バカなの? 死ぬの? のレベルよ?」

「で、でも、ここ、今の段階では最難関のステージ、なんだよね……?」

「……最難関ステージのスタートがこれって、なんか不気味じゃね?」

「この調子でいくなら、次に出てくるのは二体のタチシェスだと推測します」

「コエちゃん、賢い! ……ん? 疑問。それ、次もモンスターフロアってこと?」


 どうするのが正解なのかがわかりません……。

 B1階からモンスターフロア。

 ですが、敵は二体……。

 B2階もモンスターフロア。

 出てくる敵の種類は変わっていましたが数は変わらず……。

 苦戦はしませんでしたが、パインくんやキリさんが言っているようにここは現段階において最難関ダンジョンなのです。

 空恐ろしさを覚えます。

 『アナライズ』を封じられているので、余計に……。

(ちなみにライザによると、第十四層の他のダンジョンの情報を閲覧するのに制限はかけられていない、とのこと)

 私たちは警戒を解かないようにして階段を下っていきました。


 B3階、



――モンスターフロア。



「三連続!?」

「っ! わかりました! ここ、ボス連戦モードのダンジョンです!」


 降りた階もモンスターフロアの構造をしていたのを見て、ライザが声を上げました。

 ボス連戦モード……。

 ボスラッシュとも言われるそうでその意味は、今までに戦ってきたボスと連続して戦う、というもの……!(マーチちゃんによる解説)

 言われてみれば、B1階やB2階に登場した敵は大きかったような……?

 第一層ダンジョン1「リスセフ平原」とダンジョン2「アホクビの住む洞」のダンジョンボスと同じ姿だったように思います(数は違いますが)。

 ということは……。


 B3階に全員が足を踏み入れると階段が消え、それと同時に姿を現したのは大きなタチシェスでした。

 これは「タチシェスのいる自然公園」のダンジョンボスと同じです……!

 それが二体で出現しました!(コエちゃんが推測した通り)

 ……どうやら、今までに登場したボスとの連戦(相手の数が増えているので難易度は上がっている)というのは間違いなさそうです。

 難なく倒せはしましたが……。


 続くB4階。

 コエちゃんがしたみたいに、次はスクオスが二体で出てくるのでは? と推測しましたが、まさかの何も起きない階……。

 B4階は安全階セーフティフロアでした。

 「帰還の羽」が入っている宝箱も置いてあります。

 これはプレイヤーへの配慮なのでしょう。



 そしてB5階へ。

 今度こそビッグスクオス戦(二体)だと思ったのですが……



――現れたのは翅の生えたスクオス(二体)!



「あ、あれ!?」


 想定していたことと違うことが起きて私たちは戸惑ってしまいました。

 私はというと、テンパったことで固まってしまっていて……。


「『スクオスの夜砂漠』のダンジョンボスです!」


 ライザの叫び声が正気に戻してくれました。

 「スクオスの夜砂漠」は確か、第二層のダンジョン3だったはずです。

 ボス連戦は必ずしも順番通りに出てくるとは限らない、ということを私は把握しました。


 B6階。

 変化が生じます。

 出てきたのは羽が増えたアホクビ・スカイアホクビ(第二層ダンジョン1「アホクビ砂丘」のダンジョンボス)だったのですが、



――その数は四体になっていました。



 このタイミングで……?

 増えるなら安全階の次の階から、の方が纏まりがある気がするのですが……。

 敵の種類や数はどのような法則で決められているのか、さっぱりわかりません。

 ……ただ。

 このモンスターフロアの変化は、私に若干の不安を覚えさせました。


 B7階。

 スカイタチシェス四体(第二層ダンジョン2「タチシェスサボテンパーク」のダンジョンボス)。


 B8階は安全階。


 B9階。

 スカイと冠するモンスターではなくなって、ブリザードスクオス(第三層ダンジョン2「スクオスの住まうラグーン」のダンジョンボス)に。

 数はまだ四体のまま……。


 B10階。

 ブリザードリスセフ四体(第三層ダンジョン3「リスセフの沈没船」のダンジョンボス)。


 B11階。

 ブリザードタチシェス(第三層ダンジョン1「タチシェス海浜公園」のダンジョンボス)



――八体。




「……」


 私は考えていました。

 今はB12階の安全階で少し休憩を取っています。


 これまでの流れを踏まえると、このダンジョンはB56階構造で、4階ごとに安全地帯(このダンジョンの場合は安全階)が設置されている、と見ていいはずです。

 そしてこのダンジョンの仕組みは、今まで戦ってきたボスと連続して戦うというボス連戦、というもの……。

 私はこれまでの内容を纏めてみました。


 B1階がビッグリスセフ二体。

 B2階がビッグアホクビ二体。

 B3階がビッグタチシェス二体。


 B5階がスカイスクオス二体。

 B6階がスカイアホクビ四体。

 B7階がスカイタチシェス四体。


 B9階がブリザードスクオス四体。

 B10階がブリザードリスセフ四体。

 B11階がブリザードタチシェス八体。


 B4階、B8階、B12階は安全階……。

 ……安全階を経るごとにモンスターのタイプが変わってる?

 それと、こうしてみると……、


「……ある程度は順番通りに来てるんだ……。でも、第一層のビッグスクオス……第二層のスカイリスセフ……第三層のブリザードアホクビは……?」


 ボス連戦は必ずしも順番通りに出てくるとは限らない、という解釈は早とちりだったのかもしれません。

 あと、エリアボスとして出てきたモンスターが登場していないことに気づきました。

 エリアボスが省かれているからでしょうか?

 モンスターの数が増えるタイミングがずれ込んでいるのは……?


 ……兎も角。

 この推理が正しいのであれば、次に出てくるのはウィザードスクオス、ウィザードリスセフ、ウィザードアホクビのうちのどれかが恐らく八体で現れるはず……。

 私はライザに確かめてみました。

 このダンジョンの情報は得られないようですが、『アナライズ』がなくても彼女はよく気が付く人なので。


「ライザ、次ってウィザードスクオス、ウィザードリスセフ、ウィザードアホクビのどれかが八体で出てきたりするかな?」

一人称わーもそう思います。そういう法則で出てきてるんで。わーの推測が当たってるなら、B13階は八体のウィザードスクオスです」


 ライザは私よりも予想を絞っていました。



 ライザの意見を聞き、水分補給やトイレなどの休憩が終わって、みんなでB13階へ移動します。

 そこで出てきたのは、八体のウィザードスクオス(第四層ダンジョン1「スクオスのジャングル」のダンジョンボス)。

 ライザは見事に予想を的中させていました!

 『アナライズ』で調べられないようにされているのに……。

 ……私はまだまだライザの思考に追いつけていないようです。

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