第332話(終・第九章第12話) 第十三層「モンスター実験室」1
第十三層機械エリアダンジョン4「モンスター実験室」。
52階からなるダンジョンで、狭い通路と部屋に分かれている研究所を想像させるような見た目をしていました。
罠も張り巡らされており、専用アイテムがないと視認できない赤い光線のようなセンサーだったり、熱や音などを感知して侵入者を迎撃しようとしてくる光線銃だったり……。
落とし穴、見えない壁、警報(モンスターを集める)、迫りくる天井や壁というトラップなどもありました。
これらの多くはクロ姉とパインくんが防いでくれています。
(光線銃は防御を貫通するし、迫りくる天井や壁は潰されたら一発アウトとかいう鬼仕様だったので……)
出現する敵は、リスセフ、アホクビ、タチシェス、スクオスの四種。
どれも普通のバステ耐性では防げない状態異常をばらまいてくるタイプの敵でした。
私は自作のポーションで、他のみんなはクロ姉が付与してくれた特殊効果で無効にすることができたので問題はありませんでしたが。
ただ、狭い通路に群がられると少し面倒ではありました。
このダンジョンもこれまでのものと同様に4階ごとに安全地帯が設けられていて、モンスターフロアも存在していました。
ですが、これまでのように点在はしておらず、48階、49階、50階、51階と最後の方に纏められていて(48階がモンスターフロアになっているため安全地帯はなし)。
モンスターは、48階には10体、49階には30体、50階には50体、51階には70体と後半になるにつれてその数を増やしていく仕様で、一つのフロアにいるモンスターは一種類ずつ(48階がリスセフ、49階がアホクビ、50階がタチシェス、51階がスクオス)でした。
私たちは十二人で攻略していたため、この四連続のモンスターフロアも問題なく突破することができました。
51階に、モンスターフロアを制圧したあとにボス戦が控えていたことには驚きでしたが……。
ボスはシェディムという女性型の悪魔9体でした。
(パインくん、シニガミさん、アンジェさんが戦いにくそうにしていましたが、サクラさんとベリアさんが速攻で切り伏せに行っていました)
そして52階、エリアボス前の間へ。
「それで、どう? トラップの脅威もモンスターフロアがある階も当てられてたけど……」
私はライザに聞いていました。
ライザは私からの問いに力なく首を横に振って返します。
「……わかりやがりません。この扉の奥の情報だけ『アナライズ』で調べられねぇようにされていやがります。
……ライザはここまでの情報は得られていました。
しかし、ここからの情報は入手することを阻まれていたようなのです。
それは、これから挑もうとするエリアボスがどういったものなのかがまったくわからない、ということを意味していました。
ライザが感じたという、あの「運営」がよくないことをやってきそうな気配……。
情報を遮断する措置を取ってきたこととライザが感じたことを踏まえると、この先には、私たちを苦しめる何か、が潜んでいる――そんなふうに受け取れます。
私たちは気を引き締めて、しっかりと作戦を立ててからエリアボスの間へと続く大きな扉(このダンジョンでは自動ドア)を開きました。
その部屋は大きな部屋でした。
これまでのエリアボスの間も大きかったのですが、それより一回り、いいえ、二回りは大きかったのです。
ドアを開けただけではエリアボスの姿を確認できず……。
中に入らなければその姿が現れることはなさそうでした。
私たちは顔を見合わせて、意を決して部屋の中へと入って行きました。
大きな部屋の中央辺りまで来た時。
――ウィンッ!
と、ドアが閉まり、シャッターのようなものが降りてきて外へ出ることができなくなります。
直後、私たちを囲むようにして前後左右の合計四カ所の床が円柱状に盛り上がってきました。
上がってくるスピードは結構速く、円柱のサイズも大きめ。
側面には縦に一直線の線が入っていて、隙間が空いているように見えます。
あれは……召し合わせ?
この円柱には何かの仕掛けがある! と感じた瞬間でした。
円柱の側面の三分の一ほどが動きだしたのは。
その中は空洞になっていて、さながら筒状のエレベーターのよう。
……本当にエレベーターなのかもしれません。
乗っていたのです。
――おかしな色合いをしたリスセフ、アホクビ、タチシェス、スクオスが一体ずつ。
それらはエレベーターから出てくると同時に私たちに襲いかかってきました……!
私とクロ姉、サクラさん、パインくんの四人でモンスターたちからの攻撃を受け止め、その間にベリアさんが反撃を開始しました。
ところが……!
「っ!? 待ってください、ベリアっ!」
制止を掛けるライザの声。
「え――きゃっ!?」
その声は間に合わず……!
ベリアさんの真っ赤な剣は四体のモンスターを攻撃していました。
その結果、
――何故かベリアさんが吐血して……っ!
「「「「ベリア(さん)!?」」」」
狼狽える私たちにライザが叫びました。
「オトギアホクビが『オートカウンター』っつー特殊効果を持ってやがります! 受けたダメージをそのまま攻撃した側に与えるっつー効果を! 加えて奴は『超再生』っつー受けたダメージを即刻回復する特殊効果も持ってやがる害悪っぷりです!」
「そ、そんな……っ!」
彼女が即座に解説をしてくれたため、私たちはベリアさんがやられてしまった理由を把握し、何をされたのかわからない、という恐怖で動けなくなるという状態からは抜け出せました。
ベリアさんは私が渡していた復活薬でやり直しになるのは回避することができています。
ちなみにベリアさんの攻撃は敵全体を狙ったもので、アホクビは『超再生』で凌いでいましたが、タチシェスは『障壁』で、リスセフは『分身』で防ぎ、スクオスは地属性の魔法で迎撃していた、とのことです(ライザによる説明)。
復活を果たしたベリアさんの容体を確かめると、まだ戦意喪失はしていないようでした。
彼女が無事であったことに安堵します。
ですが、状況は芳しくありません。
四体のモンスターにダメージが入らないのですから。
……。
私は考えて、思いついた策が通用するか、をライザに確かめました。
「……そうだ! 猛毒薬ならどう!?」
その策とは、『超再生』の余地を与えない、というもの。
一瞬でHPを0にしてしまえば倒せるのではないか? と考えたのです。
私のこの案にライザは、
「アホクビ系統は猛毒に耐性を持ってませんから掛けることができたなら倒せるはずです!」
支持してくれました。
ただし、こう付け加えられます。
「ですが、オトギスクオスには注意してください! あいつ、『投擲反射』を持ってやがるんで!」
「っ! それならみんな! タチシェスとリスセフとスクオスをお願い! 私がアホクビを退治するから!」
「「「「「「「「わかった(わかりました)!」」」」」」」」
その作戦を決行するならスクオスが近くにいないタイミングを見計らうこと! という警告を受けて、私は他の三体をみんなに止めてもらうようにお願いしました。
他の三体がアホクビから離れたタイミングで私はバステポーションをふりかけます!
……しかし、アホクビに薬品をかける直前
――私とアホクビの間にスクオスが割り込んできて。
「――え」
耐性を貫く私のデバフポーションが私に振りかかてきました。
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