第326話(終・第九章第6話) 大型アップデートの前に3
「「「「「「「「えいっ!」」」」」」」」
「グァアアアアアアアアッ!」
「「「「「「「「それっ!」」」」」」」」
「キェエエエエエエエエッ!?」
……シニガミさん、絶好調です。
第三層「アホクビ海底谷」ダンジョンも、第四層「タチシェスの自然保護区」ダンジョンも難なく突破することができています。
私は何もしていません。
する暇もありませんでした。
ただ見ていただけです。
シニガミさん、強すぎませんか?
前は『バイロケーション』だけでなく、即死攻撃も可能だったんですよね?
さらにMPも減らなかった、と……。
最強と言われていたことにも頷けます。
まだ時間に余裕があったため続けることに。
ここからの攻略はコエちゃんも加わります。
コエちゃんを一人で攻略させるのは私は気が気ではありませんでした。
カラメルが強いので大丈夫だとは思うのですが、一人では万が一のことが起きた場合、対処できなくなる可能性があります。
コエちゃんは私たちと会う前に、何回も殺されてやり直させられた記憶を持っている、ということを話してくれました。
そんな彼女にはもう、やり直しになることを体験させたくはありませんから。
ですので、私とシニガミさんが第五層に上がってくるまで待機をしてもらっていたのです。
それから第五層「スクオスの天空城」に挑んだわけですが……。
「「「「カァーーーー!?」」」」
「「「「カァーーーーーーーーッ!?」」」」
わかってはいましたが、さらに安全性が担保されました。
私が出る幕なんてありません。
敵は見かけたらシニガミさんとカラメルがもう倒していましたから。
モンスターフロアでは40体のスクオスが宙を舞っていました。
……これ、やっぱり私いらないですよね?
ちなみに今のカラメルですが、
光の加減や見る角度によって金緑や金紫などの色に変わって見える美しいプディンに。
ライザが「タチシェスの自然保護区」にあったお宝「アイテム合成の教本」を使ってスキル、ジョブ、種族、属性の四つの「パワーアップの秘玉」を掛け合わせて「進化の秘玉(テイムモンスター)」をつくり上げ、それをカラメルに使用したら、こうなりました。
プディン系統の特殊な進化形態らしく、その強さはステータスの面で見れば虹色プディンと変わらないのですが覚える特殊効果の数は玉虫色プディンの方が圧倒的に多い、とのこと。
中でも「スキル学習」という特殊効果はヤバいものでした。
だって、その内容は、
――プレイヤーが持っているスキルを四つまで覚えることができる
というものだったのですから。
カラメル、進化しなくてもできることが多かったのですがもっと増えました。
バステ(特殊な状態異常含む)やデバフは効かず、
全ステータスを上げるバフ魔法が使用できてバフで上げられる上限もなく、
全ステータスを下げるデバフ魔法が使えて相手がバフなどで上げているステータスをその魔法で上書きして低下させることができ、
HPとMPは継続的に回復し、
相手が持っている特殊効果を無効化できる魔法も習得している……。
そして、大きさを自由に変えられる『スケール自在』に、
その身体の中にアイテムやプレイヤーを収めることができる『体内収納』(容量は一般プレイヤーの40倍)、
収納したプレイヤーのHPやMPを吸収する『サクイット』、
小さなカラメルをつくり出す『切り離し』と『分裂体統括』、
MPを消費することで虹色プディンの粘質水や虹色魔石を生成できる『粘質水のお裾分け』と『虹色魔石製造』、
それに『全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視(好影響は受けられる)』。
そこにマーチちゃんから『ポケットの中のビスケット+』、私から『霊薬製造』と『有効期限撤廃(自作ポーション限定)+』、クロ姉から『数だけ強くなる+』を学習して。
カラメルの成長がとどまるところを知りません。
この子だけで覇権が取れちゃうレベルだと思うのですが……。
素材を持参できる点で明らかに私よりもポーションをつくることに特化していますよね……。
(ライザが「アイテム合成の教本」を使って全ての植物系のアイテムを混ぜて……このアイテムは四つずつしか混ぜられないのでかなりの数の「教本」が必要だったそうですが、マーチちゃんに増やしてもらって……「ナントカナリ草」という、どの植物系アイテムとしても代用できるアイテムをつくってくれて、それを私とカラメルに渡してくれています)
(カラメルは、スキルでナントカナリ草を究極のナントカナリ草にまで品質を上げていて、聖水のレジェンド品質である命の水も持っていて増やせるので……)
カラメルが頼もしくなりすぎてひとり立ちしてしまうようなそんな感覚に陥って、ちょっと切ない気持ちになってしまいましたが、有能さに磨きがかかってもカラメルは私に飛びついてきて甘えてきて……。
この子は強くなっても可愛い子のままでいてくれました。
私はそのことが嬉しくて、嬉しすぎて感謝していました。
……あっ。
今のカラメルのレベルは12,000を超えています。
自分で魔石をつくれますし、それをコエちゃんに食べさせてもらうことでレベル上げができますから。
(一時は進化の影響で「1」になりましたが)
プレイヤーの上限は9,999でしたが、モンスターは仕様が異なるようです。
もはや単純作業であるかのように簡単にエリアボスの前の間へ。
雲の階段を上って辿り着いたその場所には珍しい光景が広がっていました。
閉ざされている大きな扉の前で順番待ちをしているプレイヤーの方たちが三組ほどいたのです。
私たちはこれまでタイミングがよかったのか、エリアボス戦を待つことはありませんでした。
エリアボスの前の間までやってきたらすぐにエリアボスに挑みに行くことができていたのでなんだか新鮮です。
ルールには従うべきだと思ったので素直に最後尾に並ぼうとすると、順番待ちをしていた方たちの話し声が聞こえてきました。
「薬師だ……」
「薬師だな……」
「なんで薬師がこんなとこに……?」
「あっ、あれじゃないか? 最近噂になってるあの『ファーマー』の! 俺、『ラッキーファインド』の店に入ったけど、対応してくれたのはネタちゃんで姿見たことないけど……」
「バカだな、お前。あの絶対一位の『ファーマー』が第五層なんかにいるわけねぇだろ? 『ファーマー』に触発されて薬師を始めた世間知らずだろ、絶対」
「そうだな、キャリーしてもらってるみたいだし」
「神官と……なんだ? なんか、農家みたいなオーバーオールを着た子だな……」
「あの神官の子、胸デケェ……」
「農家っぽい子はちっちゃくて可愛いけど、何を抱えてるんだろう?」
「よくわかんないけど、キレイ……」
その内容な私たちのことについてでした。
『ファーマー』・『ラッキーファインド』の薬師、ってまあまあ有名になっているんですね……。
目立つのはあまり得意な方ではないので黙って順番が来るのを待とうとしていたのですが……。
『戦闘が終了しました。ゲートが通行可能になります』
という機械音声がどこからともなく流れてくると、順番待ちをしていたうちの一人が私たちに向けて言ってきました。
「なあ、あんたら。次、譲ってやるよ。俺たちはもう二回くらい敗走させられてるからさ。この二組とももう顔なじみだ。いいだろ、お前ら?」
と。
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