第322話(終・第九章第2話) 事件があったあとのこと2
何かよくわからないイベントを経て、一位を取ったライザが受け取った「お宝の地図」でゲットできたものは「設定変更の巻物」、「天下一品の天幕」、「打ち出の小槌」「スキル使用回数アップキャンディ」でした。
「設定変更の巻物」は、種族や保有する属性、性別及び見た目、職業を再設定できるアイテムです。
獲得した経験値と取得していたスキルは失われないそうでシニガミさんがこれを使って前の姿に戻ろうとしましたが、それはアンジェさんに止められました。
今の美珠は『黒粒子化』を持ってないから、その状態で元に戻って配信した場合、あの熱狂的なファンの子たちがどんな行動に出てくるのか読めない、今までは『黒粒子化』で牽制できていたけれどそれが、ない、ってばれたら美珠が配信してるとこに突撃してくるかもしれない――と。
それを聞いてシニガミさんはかなり迷っていましたが、「設定変更の巻物」を使うことを諦めました。
押しかけられる方がデメリットが大きい、と判断したようです。
「天下一品の天幕」は、使用した場所とその周囲を安全地帯にできる「簡易テント」の完全な上位互換アイテムでした。
その特徴は、壊れず、使い捨てではない、ということ。
……もっと早く手に入れたかったです。
アメショと対峙する前とか、それこそ初期から所持できてるようにするとか……。
それができていたなら、あんなにヒヤッとする思いなんてしなくても済んだはずですから……。
「打ち出の小槌」は、攻撃するたびに与えたダメージの一万分の一(「1」以下にはならない)のお金を手に入れられる、という効果を持っていました。
うちにはマーチちゃんがいるため、使い道はなさそう……。
私も金策はできてしまいますし……。
しかもこれ、武器なんですよね……。
ここまではなんか微妙な感じでしたが、「スキル使用回数アップキャンディ」。
これは有用なアイテムでした。
使用すると、スキル(ジョブスキル含む)のどれか一つの使用回数を「4」増やせる、というもの!
しかも、どのスキルに使用するのかは選べるそうです!
さらに……!
クロ姉によってレアリティを上げられました!
「スキル使用回数アップキャンディL」
――任意で一つのスキルに使用できる。
そのスキルの使用回数に「256」プラスされる。
これでマーチちゃん、ライザ、クロ姉が新しく手に入れた『金は天下の回り物』、『スキル変更の権利』、『神器創造』、それからサクラさんとキリさんの『初期装備強化:将軍』と『初期装備強化:上忍』、それらを強化していたライザの『画竜点睛』、まだ強化できていなかったマーチちゃんの『総てはこの手の中になる』、ライザの『トリックスター』、ススキさんの『火薬類取扱保安責任者』及び『大爆発』、キリさんの『急激な気候変動』、シニガミさん、アンジェさん、ベリアさんの全てのスキルのパワーアップがなされました。
そして私の『薬による能力補正・回復上限撤廃』も。
おおう……、圧巻です。
ゲーム内であったことはこんな感じです。
現実では……。
大資産家・
この人は、私やライザ……未来に合同文化祭の時にあの教室でその……ひどいことをしようとした女子生徒・京王未過の父親です。
罪状は、犯人蔵匿及び証拠隠滅罪。
未過が起こした数々の刑事事件の証拠を隠滅・偽造・変造していました。
本来ならこの法律は親族間の特例がありその刑を免除できることがあるそうなのですが、未過が起こした犯罪は多岐にわたり、暴行、傷害、脅迫、恐喝、器物損壊、売春の強要、強制性交、放火など……。
様々な犯罪に手を染めていて、その余罪は百に迫っていたそうで、あまりにもひどい、ということで処罰される運びになったそうです。
未過はこれまでにも多くの他人の人生をめちゃくちゃにしてきていました。
未来も時間や場所、タイミングのどれか一つでも違っていたら取り返しのつかない事態に陥っていたかもしれない、と私はコエちゃんから聞きました。
未来はコエちゃんのおかげで事なきを得た、とのことでホッとしましたが、被害に遭われた方のことを思うと遣る瀬無い気持ちにさせられます。
そんな未過の全ての罪を揉み消していた京王容疑者。
彼は最初、否定しました。
自分はそんなことなどやっていない! と。
誰かが有名な動画配信サイトにて京王容疑者の黒い部分を動画や写真、資料などでそれらを一気に公開して発信していましたが、京王容疑者は、嘘だ! でまかせだ! 捏造だ! と一切認めようとしませんでした。
(この誰か、というのはコエちゃんが「調べた」ところによると、京王家で使用人として勤めていた男性で、未過がやらかしたことに対する証拠隠滅の仕事を一任されていた、とのこと)
(男性は防犯カメラの映像の消去や目撃者の買収、警察官やメディアへの根回しなどを行っていたそうです)
しかし、そのことで報道陣に取り囲まれている最中、京王容疑者が、あれはフェイクだ! このようなことをしたあの使用人には法的措置をとる! と豪語した瞬間、あの動画がネットにアップされて……。
――あの未過が、私や未来にその……ひどいことをしようとしている動画が。
リアルタイムで配信されたそれは、すぐに削除することはできなくて多くの人の目に留まることになりました。
生放送、しかも、多くの目撃者がスマホで証拠を押さえている……。
その上、三桁に迫る未過の被害者の方たちが次々に声を上げ、京王と繋がりがある企業の商品に対する不買運動なども起きたことでそれら全ての企業から絶縁を宣告されることになり、京王は力を急速に失っていきました。
締め付けていた報道に歯止めが効かなくなり、今まで隠されていたことが暴露され明るみに出ることになったのです。
流石の京王容疑者もこれにはどうすることもできませんでした。
伝えられた映像は警備ロボットに取り付けられているカメラで撮られたもので、その映像がどういうわけか流出していました。
ハッキングを受けていたのではないか? と見られています。
そうして情報を抜き取り、映像をネットの世界に流していた犯人は京王家の使用人の男であるとみなされました。
実際にその男性は、
『自分が京王に裏切られることを危惧して、カメラで撮られた未過の犯行の瞬間や京王に、それらをばれないように処理しろ、と命じられた時の音声や映像データといったものをこっそりと記録して隠し持っていて、それらをネットにばら撒いた!』
と出頭してきたそうです。
ただ、その彼が警察署に駆け込む映像を偶々ニュースで見たのですが、
(報道陣が警察署の前にいるタイミングで男の人が叫びながらやってきたため撮られていた)
――その時の彼は、焦っているのと安堵しているのが混ざったような、そんな複雑な表情を浮かべていて……。
それにあの時。
未過があの教室から連れていかれた時の、あの子の言葉……。
――「……それをちょーっと拝借してネット上にアップしたのはわーですが……」
……まさか、ですよね?
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