第321話(終・第九章第1話) 事件があったあとのこと1(セツ視点)

 あれからいろいろなことがありました。



 まず、ゲームでのこと。


 私たち「ラッキーファインド」が新たに、私、マーチちゃん、ライザ、クロ姉、サクラさん、ススキさん、パインくん、キリさん、コエちゃん、シニガミさん、アンジェさん、ベリアさんの12人体制で始動することになりました。

 問題を起こしていたアメショもギルドメンバーに含まれていますが、あの人は今も個室に封印されています。

 そして、緊急クエスト達成の報酬として手に入れた「第四スキル解放の鍵」でマーチちゃん、ライザ、クロ姉は四つ目のスキルを獲得しました。

 マーチちゃんが『金は天下の回り物』を、ライザが『スキル変更の権利』を、クロ姉が『神器創造』を。


『金は天下の回り物』――使用したお金が二倍になって返ってくる


『スキル変更の権利』――所持しているスキルを変更できる

            (誰も所持していないものに限る)

            このスキルによって変更された(失った)スキルは

            使用できなくなるが、効果自体は残り続ける


『神器創造』――武器・防具につけられる特殊効果が8個になる


 どれもすごすぎる性能をしています……。

 マーチちゃんはこれで「器用貧乏」を気兼ねなく使えますし、ライザは『画竜点睛』を外すとサクラさんとキリさんの職業が上位職ではなくなってしまうため替えることができなくなっていましたが(決闘・PvPイベントは特殊な措置が施されているため例外)、これで問題なく替えることができるようになった、とのことです。

 クロ姉は言わずもがなでしょう。

 クロ姉の付与する特殊効果は一つでもヤバいのに、これまでは四つが上限だった武器スロットの枠が八つまでつけられるようになる、とかもうよくわかりません(もちろんいい意味で)。

 まさにその名に恥じない素晴らしいスキルだと思います。


 スキルと言えば……。

 シニガミさんは『黒粒子化』と『スキルによるMP消費0』を再取得することができませんでした。

 誰かが、アメショがやり直しになってからシニガミさんが再取得しようとするまでに取ってしまったみたいなのです。

 ライザが『アナライズ』で確認したところ、犯人はすぐに判明しました。

 ……私の幼馴染です。

 イベント景品で取っていた「スキル変更の巻物」を使って『天上天下唯我独尊』と、シニガミさんが持っていた二つのスキルを盗っていたあゆみちゃん。

 頭が痛くなってきました……。


 そんなわけでシニガミさんが取得したスキルは、『メメントモリ』、『エンバーミング』、『バイロケーション』、『赤いバラのつぼみ』。


『メメントモリ』――HPが減るにつれて自身と仲間のステータスを上昇させる


『エンバーミング』――HPが0になってから黒い粒子に変わるまでの時間が延びる

           周囲にも影響を与えるスキル


『赤いバラのつぼみ』――テイムされることが可能になる

            (相手より自分のレベルが高ければ拒否することも可)

            (花言葉は「あなたに尽くす」)


 『赤いバラのつぼみ』の効果で一時的にコエちゃんのテイムモンスターという位置づけになったシニガミさんはカラメルがつくった虹色魔石を与えてもらって、


========


名前:シニガミ    レベル:9,999

職業:聖女(神官上位)

HP:251,984/251,984

MP:131,996/131,996

攻撃:224,388(回復魔法に影響/攻撃時は1/16)(×1.1)

防御:97,199(×0.9)

素早さ:155,994

器用さ:227,987


スキル:『メメントモリ』

    『エンバーミング』

    『バイロケーション』

    『赤いバラのつぼみ』


ジョブスキル:『聖女の慈愛』


========


 こんな感じに。

 レベルは9,999が上限のようです。

(「パワーアップの秘玉(ジョブ)」で上位職にチェンジもしています)

(彼女の『バイロケーション』は分身が使ったジョブスキルも本人が使用したとカウントされるようで、ジョブスキルのランクはすぐにレジェンドクラスに到達しました)

 すごかったのはコエちゃんにテイムされている状態を解除してもレベルが下がらなかったことです。

 ライザによると、『赤いバラのつぼみ』は手放してもレベルが下がることはない、とのことだったので、「スキル変更の巻物」を使って『巻き戻し』に替えていました。

(ちなみにシニガミさんのこの強化ですが、ライザの発案です)



 また、緊急クエストを達成したことで私たちのお店は大人気に。


 クエストを成し遂げるために協力してくださった「プディン帝国」の皆さんや「シニガミファンクラブ」のお三方、「ギフテッドの旅団」の皆さん、「ベータテスター集い」のジオさん、「イベント特攻隊」の皆さん、ハーツさんとクローバーさんとダイヤさんが常連さんになってくれました。

 そのほか、クロ姉が付与した装備の特殊効果と私特製の復活薬の効果を実感できた方々やマーチちゃんやライザの力で失ったスキルを取り戻せた方々が来店してくれて。

 しばらくの間はお店の前に長い行列ができるほどで、シニガミさんたちにも協力してもらってローテーションを組んでお店を回していましたが、とても忙しかったです。

 嬉しい悲鳴です。

(余談ですが、「シニガミファンクラブ」のクモさんたちですが、姿が変わってしまっているシニガミさんに気づくことはありませんでした)

(彼女は本人なのですが、同じキャラ名にするなんて私たちには恐れ多くてできないけれどそれほどシニガミ様のことが好きなのね! とファンクラブに勧誘していました)


 あと、ミックスがワワワやシーヴァとともにやってきました。

 ミックスはお店に入ってきてすぐに土下座をして感謝と謝罪の言葉を述べてきました。

 その勢いのまま、ミックスは二つの「第四スキル解放の鍵」を私たちに渡してきました。

 自分たちには過ぎたものだ、というのが彼の考えのようです。

 それから、ミックスは私たちに頼み込んできました。

 「スキル変更の巻物」を売ってほしい! と。

 ライザが、ワワワとシーヴァに「鍵」を渡すのを認めた、のは彼らのスキルはアメショに奪わせていたため一つもスキルを所持していなかったからです。

(私たちと敵対していた人たちには私たちは会いに行っていませんので、彼らは失ったスキルを取り戻せていませんでした……彼らは「スキル変更の巻物」を持っていませんでしたから)

(※ミックスたちは一度イベントで上位に入賞したことがあるのですが、そのあとに私たちに挑んでやり直しになっているため獲得した「巻物」を失っています)

 大いに反省しているようでしたので売ってあげることにしました。

 マーチちゃんは、優しすぎるの……、とちょっと不服そうではありましたが。

 ただ、彼らはライザの目の前で失ったスキルを取り直していたため、反省しているのは嘘ではないと思います。



 ゲーム内であったことと言えば、このくらいでしょうか?


 ……あっ。

 十一月のイベントはもう行われていて、「運営」同士の一対一のバトルでどちらが勝つのか当て、当てたプレイヤーだけがまた別の「運営」同士のバトルの勝者を予想でき、それを続けていって最後の一人になるまで勝者を当て続けられたプレイヤーが優勝、というイベントがありましたが、ライザが優勝しています。

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