第314話(第八章第31話) 波乱の文化祭1
~~~~ とある豪邸(現実) ~~~~
「何をしている!? さっさと探し出さんかっ!」
「そ、そう仰られましても……! 検索しても名前がヒットせず……! お嬢様に思い出していただかなければどうにも……!」
「何!? あの子が悪いと言うのかっ!?」
「め、滅相もございません! し、しかし、『
「ええい! 学園の監視カメラや入校記録を見ればよかろう! そうすれば、どこのどいつが私の可愛い娘に卑劣極まりない行いを働いたのか、すぐに判明するであろう!」
「は、ハッ! 承知いたしました!」
――カタカタカタ、カタカタカタッ(キーボード音)
「っ!? こ、これは……!」
「なんだ!? 見つけたのか!?」
「そ、それが……
――例の事件があった日のその丸一日の監視カメラのデータが削除されています……!」
「な、なんだと!? 早く復元しろ! 命令だっ!」
「は、はい……! ……? ……、……っ、……っ!? な、なんだ、この消し方!? か、完全に消されてる……!? い、いったい、どうやって……!? い、いや、そ、それよりも、こ、これじゃ、復元できない……っ」
「はぁああああ!? 貴様、今なんと言った!? 復元できん、だと!? ふざけるな! それが得意だというから雇っているのではないか! 与えられた仕事をこなさんか!」
「も、申し訳ありません! ……く、くそっ、このデータからじゃ無理だ……! にゅ、入校記録の方から……なっ!?」
「今度はどうした!?」
「入校記録も消されています……! 事件のあった日から一週間ほど遡ってAIに調べさせましたが、『京』の字がつく人物が入校した、という記録はなく……っ」
「ぐっ! 復元だ! とっとと復元しろっ!」
「……っ! で、できません……っ!」
「うがああああ! なんて使えん奴だ! もういい! 貴様はクビだ! 早急に出て行け!」
「っ! ど、どうかそれだけはご勘弁を……!」
「ええい! 鬱陶しい! クビと言ったらクビだああああっ!」
「そ、そんなああああ!」
~~~~ セツ視点 ~~~~
「ありがとう、コエちゃん。コエちゃんのおかげで迷わずに来れたよ」
「いえ。私にできることをしたまでですので♪」
私とコエちゃんは現実で、ある駅の前に来ていました。
というのも今日は十一月三日。
ライザが通っている学校とススキさんが通っている学校の合同文化祭が開催される日です!
ライザが通う百合花萌芽女学園は首都の中心といってもいい場所に位置しており、二回も乗り継ぎをする必要がありました。
入り組んだ地下を移動する際は迷いそうで怖かったのですが、コエちゃんが手を引いて導いてくれたので迷わずに百合女の最寄り駅まで来ることができていました。
あと、コエちゃんですが、昨日からずっとこの調子です。
声が弾んでいてとっても楽しそう。
文化祭を体験できる、ということでワクワクしている彼女のことを見ると私も気分が高揚してくるのを感じます。
現在の時刻は八時半。
私たちですが、駅の前で立っていて学園にはまだ向かっていません。
文化祭が開かれるのがあと三十分後ということもあるのですが、私たちがこうしている理由は……、
「あ、あれは……コエさん? ということは……」
「えっと、あの子がセツさん……?」
「っ!? お、大きいわね……。あれは確実にあたしより大きいわ……」
「え? 大きい? 大きい、かな……? むしろ、小さくて可愛らしい感じだと思うんだけど……」
待ち合わせをしていたからです。
駅の中から眼鏡を掛けた黒髪ロングの美少女が二人と――あっ、いえ、一人はたぶん美少女じゃないですね――と、ポニーテールでキリッとした感じの長身の美人さんが出てきて私たちの方にやってきました。
(コエちゃんはゲームの外でもコエちゃんだと認識ができるようなので目印になってもらった感じです)
私はこちらに向かってきた方たちに確認しました。
「えっと、キリさんとパインくん、ですか?」
「はい。こちらでは桐生になります。
「ほ、ほんとにキリさんなんだ……っ。なんかもっとこう、あっ、セツちゃんだ、やっほー! って感じなのかと……」
「それは
「い、いえ……! あっ、セツです。こっちでは刹那の方がいい、のかな?」
「よろしくお願いします、刹那さん」
眼鏡を掛けた黒髪ロングの美少女の一人はやはりキリさんでした。
ゲームではギャルさんなのに、現実では黒髪清楚系……?
あれ? ゲームではもしかしてススキさんと何もかも入れ替えてたりします?
本名は桐生さんというそうですが、キリさんの方がしっくりくるのでそう呼ばせてもらうことにしました(こっちでそう呼んでいても違和感はないはずですし)。
そしてもう一人の黒髪美少女に見える子は……。
「ぼ、ボク、
「よろしく、松里くん。……それにしても、松里くんとキリさんってそっくりなんだね……」
「双子だからね。一応、男女の双子だから二卵性だけど」
「よく言われます。松里の方が表情豊かで可愛らしいので私よりも男子から人気がありますが」
「ちょ、ちょっと、桐生!? それ、刹那さんに教えなくてもいい情報だよね!?」
やはりパインくんでした。
本名は松里くんとのこと。
キリさんに余計なことを言われて頬を膨らませて怒る松里くん。
……カワイイ。
確かに、すんとしているキリさんより人気は出そうな気がします。
松里くんの学校生活は気になるところではありますが、今はそれよりも気になることが……。
私とコエちゃんは、ここでキリさんとパインくんの二人と待ち合わせをしていたのですが、この場にはもう一人、謎の美人さんがいるのです。
この人かも、という人はいるのですが、その人はここにはいないはずの人で……。
私は混乱しながらその人の顔を見ていました。
「あの、えっと……?」
「あっ、サクラよ。
「え、ええ!? サクラさん!? どうして!? 今日は来られないんじゃ……!?」
「諸事情でサークル活動がなくなったのよ。暇になったからススキちゃんの文化祭に行けるようになったってわけ」
「そ、そうだったんですか! よかったです! 一緒に回りましょう!」
彼女はサクラさんでした!
(サクラさんと呼んでても違和感はないはずなのでそう呼ばせてもらうことにします)
ダメージジーンズに革ジャンという格好で、普段の袴姿とはイメージが違って新鮮に感じます。
ちなみに、私とキリさんは通っている学校の制服(私はセーラー服、キリさんはブレザー)で、松里くんは学校指定だというジャージです。
この文化祭では学生には特権がある、ということをススキさんが言っていたので。
全員揃って挨拶も済んだところで、私は百合女に向かおうとしたのですが。
(ライザとススキさんは先に学園に行っているそうなので)
「それにしても刹那さんは可愛いですね。あと柔らかそうです。むぎゅ~」
「ちょっと、キリさん!? なんで急に抱きついて――」
「あっ! キリちゃんずるい! あたしも抱きつきたい!」
「ひゃわ!? サクラさんまで!?」
何故かキリさんとサクラさんに抱きつかれてもみくちゃにされました……。
松里くんに助けを求めたのですが、彼には真っ赤な顔で目を逸らされてしまって。
私はしばらくの間二人、いいえ、謎に対抗意識を燃やしたコエちゃんにも抱きつかれて、三人にいいようにされていました……。
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