第313話(第八章第30話) 緊急クエストは完了して(セツ視点)
少し日数が経過して十月二十九日(日曜日)。
この日、私はライザと一緒に、製品版発売200日記念で新しく実装された第十一層と第十二層の攻略をしていました。
彼女がいると圧倒的です。
何故なら迷わないので。
タイムアタックをしようと思っていたわけではないのですが、
クリアタイム
第十一層「アホクビ大地獄」――42分39秒。
第十二層「タチシェス地下帝国」――39分42秒。
……一時間を切りました。
第十一層のダンジョンは44階構造、第十二層に至っては48階構造だったのですが……。
私、一人で第十層を攻略した時は90分かかってました(第十層は40階構造)から、ライザの『アナライズ』のすごさを再認識させられました。
ちなみに、第十一層は異界エリアで街は「ビクビクの街」、第十二層は暗闇エリアで街は「ボヤボヤの街」というそうです。
それと、
第十一層のお店には封印薬、封印耐性ポーション、急所や致命的な一撃を与えやすくなる「会心」状態になるゾーンポーション、攻撃を回避しにくくなる「鈍化」状態になるトーパーポーション、
第十二層のお店には魅了薬、魅了耐性ポーション、「自動防御」状態になるセーフガードポーション、「パリィ」を成功しやすくなるインテュイティブポーションが、
置いてありました。
(第十層には暗闇薬、暗闇耐性ポーション、「自動回避」状態になるアボイドポーション、自分の素早さよりも低い相手の追尾攻撃を誘導できるようになるアフタイメージポーションが置いてあって、ライザ曰く、買える薬品類は今のところこれで全て、とのこと)
(「運営」が用意している薬品系アイテムが今はこれ以上ないそうです)
もちろん全て買っています。
あと、第十二層「タチシェス地下帝国」ダンジョンの隠し部屋にライザが案内してくれて行ってみると、そこに私が求めていたコエ草がありました。
これで今までつくれなかったポーションもつくることが可能になります。
欲を言えば、もっと早くゲットできればよかった、とはどうしても思ってしまうのですが……。
封印薬(効果持続時間・無制限)があれば、アメショへの対策をもっとスムーズにこなせていたはずですから。
アメショが起こした事件ですが……。
アメショが一からのやり直しになったあと、私、マーチちゃん、クロネコさんの三人で第一層へ飛んで行き、パインくんとシニガミさんが押さえていたアメショにバステポーション(猛毒薬だけ解除済み)を使って拘束しました。
パインくんに、スキルを使えなくする魔法「シール」を使ってもらってアメショのスキルを一時的に封じて。
その間にクロ姉に来てもらって、アメショの装備に
「攻撃不可」
「移動不可」
「連絡不可」
「スキル使用不可」
「スキル変更不可」
「アイテム使用不可」
「アイテム無効」
「装備変更不可」
「特殊効果変更不可」
「耐久値∞」
「不動明王」
の特殊効果を付与してもらいました。
「スキル使用不可」でスキルは使えないし、「スキル変更不可」で『スキル強奪』が誰かの手に渡ることもなく。
「アイテム使用不可」、「アイテム無効(以前に付与されたものが解除されるわけではない)」で私が使ったバステポーションが解かれることもなく。
「攻撃不可」、「移動不可」でもう誰にも迷惑をかけることもなく(「連絡不可」はおまけ)。
「装備変更不可」、「特殊効果変更不可」、「耐久値∞」、「不動明王」でこの状態が解かれることもない。
(「不動明王」は、動かなければダメージを受けなくなる、という特殊効果)
あとは、第一層にそのまま放置してまさかの事態が起きてしまってもよくないので、クロネコさんに頼んで『魔女裁判』でアメショを私たちのギルドに加えることに(ライザの案)。
メインハウスの個室に放り込んでおきました(シニガミさんが持っていた『強制転移』で)。
個室はその部屋の主の許可がないと入れない仕様ですが、アメショは幻惑状態で許可を出せる状態ではありません。
メインハウスはフェニーのおかげで絶対に壊れないようになっていますし。
(特殊なスキルの使い方をしていたため、フェニーがやり直しになっていても効果が残っています)
アメショの無力化は完璧です。
クエスト報酬の件ですが……。
私たちと別れたあとのことをキンジンさんたちから伺いました。
宿屋さんにプロデューサーさんがいて、アメショの問題を解決したのをあゆみちゃんの功績にしてしまったそうです。
キンジンさんたちは、やり直しにさせても同じスキルを取られたら意味がない! と抗議したみたいですが、聞き入れてはもらえず……。
この結果を受け容れるしかないのか? と泣き寝入りしそうになっていたところ、あゆみちゃんは仕出かしました。
なんと、報酬の品を見せびらかした、というのです……!
これには皆さん、腹の虫がおさまらなかったようで、行動を起こしたそうです。
ピグミーヒッポさんが『最強のジャイアニズム』という
――アイテムを奪えるスキルを使って報酬を奪い還した
と。
それからすかさず、ネプさんが『ミラージュ』の、ないものをあるように思い込ませる仕様、を使って、あゆみちゃんから報酬を奪ったことをごまかした、のだとか。
(ネプさんは機転を利かせてプロデューサーさんにもあゆみちゃんに使ったのと同じ効果の『ミラージュ』をかけていたそうです)
報酬の「鍵」は軽いので、本当はそこにない「鍵」を持っていると信じ込んでいたあゆみちゃんは笑いながらその場を去って行った、というのが全容のようです。
……あゆみちゃん……。
ちなみに、その「鍵」はピグミーヒッポさんが私に渡してくれました。
マーチちゃんが増やしてくれたのですが、9個よりも多くの数を増やすことができませんでした。
(9個は増やせました)
どうやら規制を掛けられているようです。
ですので、1個はもしもの場合に備えて残しておくことにして、残りをどうやって分けるのかはみんなで話し合って決めました。
その結果、マーチちゃん、ライザ、クロ姉、ピグミーヒッポさん、ネプさん、キンジンさん、ワワワ、シーヴァに渡されることに。
私も、受け取るべきだ、と皆さんから言われていたのですが、辞退させてもらいました。
その代わり、最後の一つを誰に渡すのか推薦する権利をもらって。
私は最後の「第四スキル解放の鍵」を、
――シニガミさんにもらってもらいました。
彼女は、受け取れない……っ! とすごくあわあわしていましたが、無理を言って受け取っていただきました。
そのことでシニガミさんは私に恩義を感じてしまったようで、私や「ファーマー」、「ラッキーファインド」のために行動する! と言ってきて……。
ライザが判断して、シニガミさんは「ラッキーファインド」に加わることになりました。
シニガミさんと言えば……。
彼女、焦ってキャラクターをつくり直したことで現実のままの姿でプレイすることになってしまっているんですよね……。
なんか親近感が湧くスタイルをしています(背は彼女の方がずっと高いですが)。
彼女にもいろいろとあるようで、姿を弄っていて自信満々だった彼女はどこへやら……。
よくアンジェさんの背後に隠れるようになりました。
(シニガミさんがこんな感じなのでアンジェさんたちも私たちのギルドに加わることに)
あと、『肉体改造』の所持者がいなくなったことでパインくんが元の姿に戻れたのですが……。
それをシニガミさんは何故か恨めしそうに見ていました。
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