第311話(第八章第28話) 本当の栄光を手にするのは3(セツ視点)
ライザが立てた「アメショ無力化作戦」。
それはつつがなく進行しました。
全てはライザの計画通りに。
――「クエストを受注しててクロの装備を持ってるあなた方にお願いしたいことがあるんです」
『プディン帝国』さん、『シニガミファンクラブ』さん、『ギフテッドの旅団』さん、『イベント特攻隊』さん、『ベータテスターの集い』のジオさんと話をして協力を取り付けたライザ。
――「ああ、あなた方も力を貸してください。まさか、嫌、とは言いませんよね?」
ハーツさん、クローバーさん、ダイヤさん、あと、ワワワとシーヴァには若干脅迫気味に言って頷かせていました。
ハーツさんたちは無理にお店を開かせたということがありましたし、ワワワたちは二人の方から私に助けを求めてきていたためライザからの指示を拒否できない、といった様子でした。
ちなみにワワワとシーヴァは、アメショに襲われた際ミックスに庇ってもらっており、そのミックスを助けるために恥を忍んで私の元に来ていました。
この人たちは私を犠牲にしようとした過去がありますから、初めは追い返してやろうとも思ったのですが、私はミックスを助ける手伝いをすることにしました。
また裏切られるかもしれませんが、ひどいことをされたからやり返す、というのは彼らと同類になるような気がして嫌だったので……。
あと、『ギフテッドの騎士団』さんが加わっているのは、ギルドマスターであるクロノスさんが参加するからついてきたらしいです。
皆さんが集まった時、ライザが説明をしていました。
――「皆さんに声をおかけしたのはほかでもありません。クロの装備によって奴の『スキル強奪』を無効化できるからです」
――「奴はシニガミの『黒粒子化』を奪っているため、皆さんにはセツ特製の復活薬と、『バイロケーション』を多用して分身を量産することが考えられ、その対処にMPを大量に持っていかれる恐れがありますので、セツ特製MP回復ポーションも配布しておきます。それらがなくなっても心配しないでください。セツとマーチを戦場で走らせますから」
――「以上のことから奴との戦いでスキルを失うことと、HP・MPが尽きることはありません」
――「皆さんにやっていただきたいのは、アメショを拘束し無力化することになります」
――「まず、ネプ。『ミラージュ』でアメショを惑わせておびき出してください」
――「待ち伏せして一斉攻撃する、っつーのが理想ですが、相手もこちらの存在に気づいたら抵抗してきやがるでしょう」
――「数的不利を覆すために『バイロケーション』を使ってくる可能性が高いです。あとは『土オートマ生成』や『スワンプマン』なども……」
――「なので、相手が数を増やしたらハーツ、分身でも本体でもどっちでもいいので腕の主導権を奪い取って、近くにいる分身か本体を殴っちゃってください」
――「それで何が起きたのかわからずに相手側は怯んでくれるはずです」
――「そこを
キノシタの『呪術師』
クモの『色褪せた心』
ジオの『地属性の賢者』
クレムの『プディン沼』
ハーデスの『アンデッドマスター』
ボンゴの『見えざる侵略者』
ロワの『プディンの王国』
ダイヤの『物体操作』
ウラノスの『トールハンマー』
キンジンの『スキルキャンセリング』
ボネの『拳で語る』
クロノスの『全部俺のターン!』
オカピの『女王の威光』
GPの『ベルセルクモード』
で、一気に畳みかけましょう」
――「それでも奴を止められない可能性も想定して、クローバーにはレアアイテム『簡易テント』を手に入れられるまで『小さな4合わせ』を使用し続けてもらいます。また、ピグミーヒッポには『縮小化』で相手の
――「ここまでやれば取り押さえられるはずです。最後に『黒粒子化』を乱発する、っつー悪あがきをしてくることも想定されますが、奴が持ってる危ないスキルは範囲指定ではなく対象指定のスキルですので、セツとマーチが動き回って認識されない限りやられる心配はありません」
――「あとは自棄を起こして『スキル強奪』をあいつらに使ってもらえば……無力化完了です」
これが、ライザが考えた策でした。
そして今、私とマーチちゃんを視認したらしいアメショが私たちに向けて髪を伸ばしてきていました。
「あ、あんたらか! この不気味な状況を作り出してたのはっ!」
スピードを落として視認させたのはわざとです。
ライザから、そうしろ、という指示があったので。
(相手が他人のスキルをコピーできる状態であり、ライザは『アナライズ』を相手に使われるのを防ぐ必要があるため私たちに同行していません)
(彼女は装備に特殊効果を付与するという仕事を終えているクロ姉とともにサブハウスに待機しており、そこから通話機能で私やマーチちゃんと連絡を取っていました)
私たちはあるものの後ろへと回り込みました。
その場を最初から動いていないまるで置物のような人たちの後ろに。
「あんたらのスキルだけでも! 何がなんでも奪ってやる……!」
アメショが髪で私とマーチちゃんに迫ってきましたが、私たちは彼らを壁にしてアメショの髪がその人たちに触れるように誘導していきます。
そして。
「『スキル強奪』っ!」
アメショは使いました。
スキルを奪うスキルを。
その結果。
「ひ、ひいいいいっ! こ、怖かった……! 動けるようになってよかった……っ!」
「お、俺には何が起きてたのかさっぱりだ……。これって、成功した、ってことでいいんだよな?」
先ほどまでまるで置物のように微動だにしなかった二人が動き始めます。
王子様っぽい見た目の人が三白眼の男の人に震えながら抱きつきました。
彼らとは反対に、動きを止めた人物が一名。
……アメショです。
彼ら、ワワワとシーヴァは「スキル変更の巻物」によってスキルを替えていました。
そのスキルは
――『行動不能(会話不可)』『アイテム使用不可』『スキル使用不可』(ワワワ)
――『石像化』『通話・連絡不能』『無想の境地』(シーヴァ)
……マイナスな効果のスキルのオンパレード。
見事に地雷です。
それをアメショに奪わせること――それがライザの考えた、アメショを完全に無力化する方法でした。
(彼らは「スキルが奪われなくなる特殊効果」がついた装備を着ておらず、スキルを奪えるようにしていました)
(ちなみに、アメショが他の全員のスキルを奪おうとした時、ワワワたちだけは標的にされていませんでした……動いていなかったので敵だと認識されていなかったのだと思います)
ライザに抜かりなし、です。
何はともあれこれにて、害悪行為をし続けてきた迷惑プレイヤー・アメショを止めるクエスト、達成です!
依頼が完了すると気になるのは報酬の件、でしょうか?
ワワワが聞いてきました。
「こ、これクエストクリアだよな? で、でも、こんなにいて、誰が報酬を受け取るんだ?」
「ワワワたちでいいのでは? アメショの無力化に成功したのはあなたたちがあの危険な役を引き受けてくれたから、ですし」
「お、俺たちでいいのか!?」
私が他の方たちに確認すると、皆さん、賛同してくれて。
報酬はワワワたちに譲ることになりました。
マーチちゃんは私に呆れ返っていましたが……。
ワワワたちは私に感謝と謝罪を繰り返していました。
私たちが健闘をたたえ合ったり、喜びを分かち合ったりしていた時でした。
――一人の少年が乗り込んできたのは。
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