第295話(第八章第12話) 『スキル強奪』のアメショ
「相手が持ってるスキルは、
『スキル強奪』――対象のスキルを奪い、自由に使えるスキル。
奪われたプレイヤーはそのスキルを失い、使用できない。
スキルスロットに空きがないと奪えない。
『スキルコレクター(奪ったスキル限定)』
――奪ったスキルを保有し管理することができるスキル。
奪ったスキルはこのスキルの中に収められ、スキルスロットにセットすることで
使用できるようになる。
スキルスロットにセットしていないスキルは使うことができないが、
このスキルに収められているスキルとスロットにセットされているスキルは
自由に入れ替えることができる。
『スキルスロット空き』――スキルスロットに空きをつくるスキル。
『スキル強奪』を使用するのに必要。
です。もう何人ものプレイヤーが犠牲にさせられてますね。……『Exp強奪』、『ステータス強奪』、『装備強奪』、『コラプション』、『空中浮遊』……うわっ、『コピーキャット』、『ブレインウォッシャー』、『肉体改造』、『憑依』、『とりかえっこ』、『旅は道連れ世は情け』、『ディープフェイク』、『シェイプシフト』もありやがります」
「そ、それって……っ!」
『わがまま』のアメショは、他人のスキルを奪う、というはた迷惑なスキルを持っていました。
そのことにも驚かされたのですが、そのあと……。
アメショが既に奪っているスキルをライザが読み上げた時、数々の知っているスキル名が出てきたことにはもっと驚かされました。
いつかの詐欺師たちや変態たちが持っていたスキルのはず……。
誰が何を持っていたのかを正確に結びつけることはできません。
ですが、それらのスキルを扱っていた人物のことはよく憶えています。
トイドル――私を『犠牲通過バグ』の犠牲にした、『コピーキャット』というスキルを使って他人のスキルを模倣していた男。
あの男はそれで他人のスキルを模倣し習得していました。
多くのスキルを使うことができた敵だったのです。
ライザの機転がなければどうなっていたかわかりません……。
今回のアメショという人も、多くのスキルを扱えるということがライザのおかげで判明しています。
……これって、かなりまずいことになっているのでは?
「ら、ライザ、なんかこれ、よくない展開のような気がするんだけど……」
「……その感覚は正しいです。相手のスキルを奪えるスキルなんて害悪でしかありやがりません。ですからアンジェたちには注意喚起を行ってほしいんです。人気がある彼女らの名前を使えば耳を貸してくれる人は相当数いるはずですから」
ライザに確かめると、彼女は肯定しました。
そして、アンジェさんたちにお願いしたことの意図も教えてもらいました。
なるほど……。
被害を抑えるために有名人であるアンジェさんたちの協力を仰いだわけですね。
目的のためならできることはなんでもする、そして必要だと判断したことはすぐに行動に移す、というのはとてもライザらしいと思います。
私がライザに感心していると、アンジェさんたちがライザに聞いていました。
「確かに僕らが呼びかければ聞いてくれる人はそれなりにいると思うっすっけど、ライザさんはどうして相手のことをそこまで詳しく知ってるんすか?」
「……まさかあなた、『わがまま』側、なんてことはないでしょうね?」
ライザが相手のスキルについてその詳細を語ったことを不思議に思っていた様子のアンジェさん。
一方でベリアさんは、ライザが敵なのではないか? と疑っていました……。
「違いますよ。
「……スキル、っすかね……?」
「……そうでしょうね。そういえばこの子、PvPイベントの時、まるで相手の行動を読んでいるかのように行動していたような気がするわ。プレイヤーの情報を盗み見れるスキルでも持っている、と言ったところかしら……」
ライザが答えると、アンジェさんとベリアさんはライザが持っているスキルについてひそひそと予想をし始めました。
とりあえず、ライザが『わがまま』側なのではないか? という疑いはそれほど強いものではなくなったようでホッとしました。
アンジェさんとベリアさんが二人で話し始めたので、私はその間にライザにまた確認しました。
「ねえ、相手が多くのスキルを使える、ってことは、トイドルみたいになってる、ってことだよね? そんな人と戦うなんてことになったら、大丈夫なのかな……」
「……そうですね。確かにアメショの奴は
「あの男よりも厄介……!? ……いや、模倣じゃなくて盗む、だもんね。当たり前か……」
ライザが説明してくれます。
髪の毛を、量や長さを自在に変えられて操ることができる『髪には神が宿る』
所持しているスキルの応用の仕方が閃く『馬鹿と鋏は使いよう』
一カ月以上ログインしていないプレイヤーのスキルを使える『宝の持ち腐れ』
(これらもライザに教えてもらいました)
それを受けて私は、不安が掻き立てられるのを抑えることができませんでした。
~~~~ その夜、ゲーム内・第五層天空エリアにて ~~~~
「この! この……っ!」
「りゅりゅ~ん」
「くそ! くそ……っ!」
「りゅりゅりゅ~ん」
二人の男が試行錯誤していた。
場所は第五層ダンジョン2「アホクビの宝船」。
ふくよかな方の男は大槌を使ってアホクビを倒そうとするが、ダメージを与えようとするたびに虹色のプディンがどこからともなく出現してそれを阻んでいた。
もう一人の方のガリガリの男は、アホクビに自らを殺してもらおうとしてアホクビに突っ込んでいこうとしていたが、それも虹色のプディンに阻止されていた。
「このぉ! 倒させろよおおおお!」
「くそぉ! どうやっても死ねない! これじゃ、このゲームをやってる意味が……っ! うがああああああああっ!」
男たちが癇癪を起した時、
「そんなに死にたいなら殺してあげようか?」
そう声を掛けてくる人物がいた。
男たちにそんな提案をしてきたのは、
――一人の少年。
男たちは自嘲するように吐き捨てる。
「お前に何ができるってんだよ。俺たちがどんなに足掻いても、この妙なプディンから解放されねぇっていうのにさ……」
「まったくだ。俺たちが何をやってもダメだったのにお前に何ができるっていうんだよ……」
それを聞いた少年は男に近づいていって。
「『コラプション』」
スキルで男たちを殺そうとした。
もちろん、虹色プディンのセキュリティが作動した。
だが。
「りゅっ!?」
「りゅりゅっ!?」
虹色のプディンは溶けてなくなってしまう。
これを目の当たりにした男たちは歓喜した。
「き、消えた……!?」
「おお、少年! ありがとう! この恩は絶対に忘れ――」
「『コラプション』」
「ぐへぁ……っ!?」
「な、なんで……っ」
しかし、それも束の間。
少年は男たちも同様に消してしまったのである。
その場に残った少年は一人、不敵にほくそ笑んでいた。
「なんで? って、殺してほしい、って言ってたからそうしてあげたんじゃん☆」
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