第281話(第七章特別編1) 熱戦! 三位決定戦!1
~~~~ キリ視点 ~~~~
「勝者『天使と悪魔の輪舞 with シニガミ』! これで五本獲得!」
審判の人の宣言が響き渡る。
現在は九月二十二日(金曜日)。
現実で言えば夕方の時間帯。
特設闘技場ではうちら「花鳥風月」と「天使と悪魔の輪舞 with シニガミ」の三位決定戦が行われていた。
っていうか、相手のパーティがヤバいんですけど……。
三位決定戦のルールは総当たり戦みたいな感じになってて、本来なら一人が四試合ずつする必要があるんだよね。
(試合数は合計で「16」だけど、大将戦に勝った方は2ポイント入るから先に九本取ったパーティの勝ちみたい)
でも、「天使と悪魔の輪舞 with シニガミ」って三人のパーティだから、うち、パイン、スーちゃん、サクラはそれぞれ一勝することが確定してて、試合数も「3」に減ってる。
相手の三人は、うち、パイン、スーちゃん、サクラとそれぞれ戦わないといけないっていう、試合数がうちらより「1」多いから、うちらの方が俄然有利な状況だったはず、なんだけど……。
蓋を開けてみたらそうでもなかった。
一本目、サクラ対シニガミっていういきなりの大将同士の対決。
このシニガミって人が本当にチート……。
いつものように開始の合図があって一瞬にして居合の間合いに詰めようとしたサクラだったんだけど、その前にシニガミのスキル『黒粒子化』を発動された。
サクラは復活薬を持ってたから一回は耐えれたんだけど、HPが0になって倒れちゃってたから立ち上がらないといけなくて……。
シニガミも準決勝でセツちゃんにやられてたからか、油断してなかった。
起き上がらなくちゃいけなくなったっていう、生じたこのわずかな時間にシニガミはもう一度『黒粒子化』を発動した。
それでサクラは黒い粒子に……。
うちら「花鳥風月」は、「天使と悪魔の輪舞 with シニガミ」に一本(というか2ポイントだから二本?)取られた。
続く三本目(試合としては二戦目だけど、大将同士の戦いがあって二本取られてるから)。
パインがベリアって人と戦うことになった。
ベリアって人は蝙蝠のような羽とスペードのような尻尾を生やして、血のような赤黒い剣を生成した。
それでパインに斬りかかってくる。
けれど、パインには『堅牢優美の障壁』がある。
それで正面から攻めてくる斬撃は防いでいたんだけど……。
ベリアは仕込んでた。
パインの足元から突然無数の剣が飛び出してきた……!
不意を突かれたパインはその二、三十本に刺されてて、復活薬が自動で使用される。
パインは聖女の回復魔法で回復しないと『痛いの痛いの飛んで行けっ!』が使えないから、復活薬じゃ攻勢に出れなくて……。
ベリアが操る血のような剣を多くして攻め立ててきた。
パインは攻撃を一回受けるたびに回復してダメージを返していた(ベリアは一回攻撃が通ると何故か攻めるのを一旦やめるから)けど、ベリアはなかなか倒れなくて。
その攻防はかなり長い間繰り広げられていた。
けれど戦況は一気に傾いた。
――パインのMPが切れたから。
……おかしい!
最上位職であるパインの方が先にMPが切れるなんて……!
っ! ……スキルか!
どうもベリアはMPを回復する術を持ってるっぽい。
あとHPを回復する術も……!
パインのMP切れを見逃さなかったベリアに総攻撃を仕掛けられて、パインは沈められた……。
四本目(試合としては三戦目)、スーちゃんとベリアの戦い。
開始するや否や、ベリアは一目散に上空へと飛んで行った。
あの子って飛べたんだ……。
……っていうか、この闘技場!
横には壁が設けられてるのに上には上限がないの!?
(うちはこの丸い舞台の直径と同じくらいの高さに天井があるものだと思ってたんだけど、明らかにそれよりも高いところまで行ってる……!)
ガバガバじゃん……!
そんな緩さの所為で、スーちゃんの『大爆発』の射程距離の外に逃げられてしまった。
けど、相手が操る血の剣の射程距離はスーちゃんの『大爆発』よりも長くて……!
残りのHPが「1」になってるスーちゃんの身体を貫かれてしまった……。
復活薬で復活したけど、攻撃範囲外にいるベリアを打ち落とすことができなくて。
反対にスーちゃんは相手の射程距離圏内にいるからめった刺しにされて……。
スーちゃんは負けてしまった……。
五本目(試合としては四戦目)……。
スーちゃんがシニガミと戦った。
結果は……。
サクラが戦った時と同じだった。
二の舞だ……。
『大爆発』を使う前に『黒粒子化』を使われて。
スーちゃんはHPが0になって地面に倒れたけど、復活してその状態のまま起き上がる手間を省いて『大爆発』を使おうとした。
しかし、油断してなかったシニガミは『黒粒子化』を連発していた。
だから『大爆発』より先に『黒粒子化』の効果が出てしまって、スーちゃんは黒い粒子に変わってしまった……。
……まずい。
うちらは不戦勝で四本先取していたのに、たったの四戦で優勢を覆されてしまった。
4対5で、残り八試合……。
三位になるにはそのうち五回勝たなければならない……。
半分以上勝たなきゃいけないんだ。
……できるの、そんなこと?
これまで自力で一勝もしてなくて四戦連続で負けてるっていうのに……っ。
嫌なムードがうちらの周りに立ち込めていた。
次の戦いはサクラとベリアに決まった。
自分が次の試合に出ることを理解した瞬間、サクラはその両頬をパチンッと叩いた。
「大丈夫、まだやれる……! あたしが必ず白星をあげるから!」
サクラのその言葉に、うちは奮起した。
そうだ、こんな気持ちじゃ勝てるものも勝てなくなる! って。
まだ終わってない!
そのことに気づかせてくれたのはよかったけど、サクラは気負いすぎてるように見えた。
ちょっと固い。
だから、緊張をほぐすことにする。
「そーだね。まだ終わってないってことには同感かな? でもお姉ちゃん、ガチガチじゃん! 深呼吸しとこ! ほら、ひっひっふー、ひっひっふー!」
「それ深呼吸じゃないわよ!?」
「あー、弄ってますね、キリ……。前にサクラがテンパってそうやっていましたから……」
「ほら、パインも一緒に! ひっひっふー、ひっひっふー!」
「ふぇええ!? ひ、ひっひっふー……?」
パインを巻き込むことでサクラが噴き出した。
パインからは抗議の目を向けられちゃったけど、サクラは笑いながら目尻に溜まった涙を指で払っていて。
上手くリラックスさせられたかな?
その六本目(試合としては五戦目)。
サクラは健闘した。
開始してすぐ飛び去ろうとしたベリアを追って、高い素早さを駆使して空中へ。
接近して一閃。
だけど、相手の操っている数十本の血の剣で逸らされる。
体勢を崩されたサクラに下方から手痛い反撃が……!
血の剣の一本がサクラの左肩を刺した。
それで空中にいたサクラは落下し始める。
地上にはベリアが用意した無数の剣がサクラを待ち構えていた。
けれど、サクラは無理やりにでも向きを変えて。
地面に向けて一閃。
複数の血の剣を破壊して自分が無事に着地できる場所を確保した。
それからサクラは透明な壁までの道をつくり、壁を走るようにして上りだした。
そうやってベリアがいる高度より上に行ったサクラは、
――上から落下の速度も乗せた一撃をベリアに放った。
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