第264話(第七章第19話) ギルドメンバーの決勝トーナメントの応援をしましょう1
「……ハッ! しょ、勝者『ファーマー』セツ!」
審判の方がドン引きしていました。
というのも、私の戦い方が、その……、あれだったからでしょう。
使ってしまったんです。
――カラメルに使った完全ステータスデバフポーション(ULT・Rank:MAX)と、『洗脳』の人に使ったオールバステポーション(ULT・Rank:Max)を掛け合わせたバステ&デバフ特盛ポーションを。
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バステ&デバフ特盛ポーション(ULT・Rank:Max)――
相手の攻撃、防御、素早さ、器用さを「1」にし、
相手に猛毒、麻痺、幻惑、悪心の状態を付与する。
相手が上記のデバフ・バステに耐性及び無効にできる状態であったとしても
それらを無視する。
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それも開始早々に。
いつもは相手に接近していましたが、相手が持っているスキルによってはそれは危険な行為なのでは? と考えて、これを使った方が安全だと判断したんです……。
そうしたら……。
私の素早さと器用さは上がりに上がっていますから……。
接近して投げて倒すよりも早く決着がついてしまって……。
相手のプレイヤーさんは、その、驚くことすらままならずに黒い粒子となって散っていきました……。
(ちなみに、私の対戦相手だった方はGPさんというそうです)
ま、まあ、勝ちは勝ちです……!
あまりにも一方的で、辺りは完全に静まり返っていましたが……。
闘技場からは確認できませんが、観客席の方もしんとしてしまっているように感じましたが……っ。
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名前:セツ レベル:1,234
職業:製霊薬師(薬師上位)
HP:9,999,999,999,999,999/5,439
MP:9,999,999,999,999,999/8,401
攻撃:----------------(×0.9)(×11,525,215,046,068,470.76)
防御:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)
素早さ:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)
器用さ:----------------(×1.1)(×11,525,215,046,068,470.76)
状態:デバフ無効(上書き不可)
バステ無効
スキル:『薬による能力補正・回復上限撤廃』
『ポーション超強化』
『有効期限撤廃(自作ポーション限定)+』
ジョブスキル:『霊薬製造』
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それからプロデューサーさんが、この試合は私たちの勝利で決まったはずなのにいつものようにやらなくてもいい勝負(今回の場合は4対4のチーム戦)を行うことを認める、なんて言ってきました。
ですが、「イベント特攻隊」の皆さんは全員首を勢いよく左右に振り、全力でその権利を放棄したことで、私たち「ファーマー」はやらなくてもいい勝負をやることなく準決勝に進むことが決まりました。
それで闘技場を出て観客席に向かっていたところで私は驚きの事実を知りました。
それまではあまり気にしていなかったのでわからなかったのですが、闘技場は二つ存在していたようなのです。
(私たちはずっと第一闘技場で戦っていました)
考えてみれば二つのブロックのトーナメントが同じ時間帯に進められていたのにBブロックの戦いが見られなかったので、闘技場がもう一つある、という可能性は考えられないことではありませんでした。
(ちなみに、B、D、F、Hブロックの戦いが第二闘技場で行われていたそうです)
私がこのことを知ったのは、準々決勝第二試合が第二闘技場で行われているとのことで、第一闘技場ではこれから準々決勝第三試合――サクラさんたちの戦い――が始まるというアナウンスが聞こえてきたからです。
まだ一試合あるから気持ちを落ち着かせられる、と考えていたのですが、その時間がなくなってしまったことで私はテンパってしまっていました。
その時にちょうど闘技場に向かってくるサクラさんたちとばったり会って。
これから試合に臨むサクラさんたちより緊張してしまっていた私を見て、サクラさんたちは少し気がまぎれたらしく、私を落ち着かせるように笑顔で、行ってくるね、と言ってくれました。
「相手は厄介なスキルを持ってますから気を付けてください」
「ボクは心配していないの! サクラたちならできるの!」
「……強要。私が装備を強化してやったんだから勝て。負けは許さない」
ライザが、マーチちゃんが、クロ姉が、それぞれの言葉でサクラさんたちを鼓舞します。
私は、
「精いっぱい応援するから……!」
それだけを伝えて。
サクラさんたちを送り出しました。
サクラさんたちの姿が見えなくなったあと、私たちは観客席へと移動しました。
観客席に着いたらちょうどサクラさんたちの戦いが始まろうというタイミングでした。
『これより準々決勝第三試合「花鳥風月」対「ファーマー2」の試合を始めます! 先鋒戦に出るキリさんとスミさんは以外は待機スペースへの移動をお願いします!』
審判の方の指示でキリさんと、スミさんという女性の方が舞台の残ります。
相手の方の衣装はクロ姉が着ているものと同じものでした。
……鍛冶師、なのでしょうか?
『先鋒戦「花鳥風月」キリvs「ファーマー2」スミ! いざ尋常に、勝負っ!』
そんな疑問を抱いていたら、審判の方の合図で試合が始まりました。
相手が「ウェットスーツ」と「シュノーケル」を装備していなかったから、『急激な気候変動』で地形を「海」に変えたキリさん。
しかし――
――スミさんはまったく苦しむことも水の抵抗を受けることもなく、得物のハンマーを構えてキリさんに接近してきました。
「ええっ!?」
『っ!』
予想外の展開です。
キリさんも想定していなかったのでしょう。
避けるのが間に合わなくて、相手の攻撃を受けてしまいます。
キリさんにダメージを与えたスミさんは得物の先端をキリさんに向けて言っていました。
『ハハッ! 効かねぇよ! あたしは装備に特殊効果を付けられる鍛冶師だぞ!? 対策してるに決まってんだろうが!』
『……うっわ、やりづらー……っ』
『急激な気候変動』に対抗できる方法がある……。
それはキリさんの主となる戦術が封じられた、ということになります。
私は焦り始めていました。
……ですが。
「大丈夫です。あの子は割と勤勉な子ですから、このゲームの実体を理解しているなら突破できます」
隣に座っていたライザにそう声を掛けられて。
私は精いっぱい声を出してキリさんのこと応援しました。
「キリさん、あなたならできるって信じてるからーっ!!」
その声はキリさんには届いていなかったと思います。
観客席と闘技場は隔絶されていますので。
……それでも。
キリさんの口元は。
私の声を受けて上がったように私には見受けられました。
直後。
彼女は地形を変化させます。
それは
――私たちがまだ見たことのなかった「電気」の地形でした。
『なっ!? なんだ、この地形――あばばばばっ!?』
見たことのなかった地形への対策はできていなかったようで、スミさんは感電して麻痺状態になり、HPが少しずつ削られていっていました。
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