第263話(第七章第18話) 決勝トーナメント、ルールが変わります

『PvPイベントも中盤に差し掛かってきました! 本日より行うのは決勝トーナメントになります! 決勝トーナメント進出が決まったベスト8のパーティの皆さんが全ての力を出し切れるよう、健闘を祈っています!』


 司会の方のアナウンスが鳴り響くイベント四日目、九月二十日。

 今日はベスト4をかけた準々決勝の日。

 私たち「ファーマー」の相手は「イベント特攻隊」というパーティの皆さんです。


 もう既にバトルフィールドの上で整列している私たちに向けて審判の方が言ってきました。

 それは私にとっては驚きの内容でした。


「試合開始の前にルールの変更があったことをお知らせします。


 決勝トーナメント準々決勝では全ての戦いがシングルバトルとなります。

 従って、先鋒戦、次鋒戦、副将戦、大将戦の四戦を行っていただき、四本全て勝てば準決勝に進むことができます。

 ただし、二勝二敗や三勝一敗になった場合、パーティ全員参加のチーム戦を執り行わさせていただきます。

 もちろん、三勝一敗でチーム戦を行う場合には、三勝しているパーティにアドバンテージがつき、一勝しかしていないパーティは不利な条件で戦っていただくことになります。

 その不利な条件とは、チーム戦にフルメンバーで参加することができず参加しないメンバーをお一人決めていただく、というものになります。

 チーム戦を行った場合には、チーム戦で勝利したパーティが準決勝進出を決めることになります。


 以上が決勝トーナメント準々決勝のルールとなります」


 ルールの変更……?

 このタイミングで?

 やっと慣れてきたっていうのに……。

 それを変えられるというのはどうしても不安を覚えさせられます。

 特にやったことのない4対4のチーム戦にはあまりにも不安過ぎて恐怖すら感じていました。

 ……ですが。


「大丈夫ですよ、セツ。マーチがちょっと戦い方を変える必要が出てきますが、セツは普段通りやれば問題ありません。よく考えてみてください。クロはほぼダブルスの形を取ってませんでしたし、一人称わーもやることは変わらねぇんです。それに、マーチも強くなってます。ですから、緊張しすぎないでいきましょう」


 ライザにそう優しく諭してもらって。

 私はなんとか不安を取り払うことができました。


「……ありがとう、ライザ」


 彼女のおかげで笑顔をつくれるだけのゆとりが生まれて、私は彼女に笑顔を向けて感謝の言葉を伝えました。



 準々決勝第一試合が始まります。


 先鋒戦に出るライザの相手はボンゴという方でした。

 牛の頭蓋骨のようなお面を着けている黒いローブを纏ったその方は、何かをしているようでしたが何をしているのか私にはわかりませんでした。

 ただ目を凝らしてよく見てみると、その方の近くに空間が歪んでいるように見える場所がいくつかあって……。

 ……何かがいる?

 実際、本当にその何かはいたようです。

 透明になっていて見えなかっただけで。

 ボンゴさんはクリア(透明)系のモンスターを使役する召喚士タイプのプレイヤーさんでした。

 ですが、全てお見通しのライザには通用せず。

 彼女はその高い素早さで透明なモンスターたちを無視して術者であるボンゴさんを捻じ伏せました。

(ライザが相手を何回も踏みつけるのって、なんかあんまりいい光景には見えないので見てるとハラハラします……速すぎるので視認できる人は限られてくると思いますが)

 今回は「巻物」を使用することなく勝利を掴み取っていました。

 ……ライザは本当に危なげがないですね。


「しょ、勝者『ファーマー』ライザ!」


========


名前:ライザ     レベル:1

職業:鑑定士(生産系)

HP:10/10

MP:2,076,248,889/11≪悪心薬L(Lv:4)≫

攻撃:9(×0.9)

防御:10

素早さ:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)

器用さ:13(×1.1)


スキル:『トリックスター』

    『画竜点睛』

    『アナライズ+』


ジョブ専用スキル:『鑑定』


========



 次はマーチちゃんが出る次鋒戦。

 相手はオカピというきらびやかな衣装をまとった女性の方でした。


「クロがいないから初めから飛ばすの……!」

「ふふ、わたくしも個人戦は初めてですのでお手柔らかにお願いします」


 開始の合図が出る前にマーチちゃんが呟いたことにオカピさんはそう返していて。

 審判によってゴングが鳴らされると、オカピさんはすぐにスキルを発動させました。


「『女王の威光』!」


 無事にスキルの効果が得られたのでしょう。

 オカピさんは優雅にマーチちゃんに近づいて行っていました。

 スキルの説明をしながら。


「このスキルは、わたくしがあなたに攻撃を与えない限り、あなたからわたくしに攻撃することができなくなるスキルです。ええ、ええ。あなたが攻撃できない間に一撃で仕留めさせていただきますわ!」


 そう言って赤いオーラを重ねていくオカピさん。

 あれは攻撃のバフ……!

 あれで攻撃を受けてしまったら少しまずいかもしれません。

 ですが、マーチちゃんもただじっとしていたわけではありませんでした。

 攻撃はできませんが動くことはできたようですから、相手がスキルを使っている間にマーチちゃんは装備の特殊効果を使っていたのです。

 そして、相手がマーチちゃんへの接近を開始したころには武器に弾をセットしていて。

 その弾は魔石ではないため、相手にアイテムを使う、という判定になります。

 攻撃とはカウントされません。

 よって。


「え――」


 マーチちゃんの射た七色の液体が入った弾がオカピさんに命中すると、彼女は痛がる間もなくその場から消失しました。

 ……我ながら恐ろしい性能です、バステポーションULT・Rank:Max……っ。


「しょ、勝者『ファーマー』マーチ!」


 と、兎に角、マーチちゃんも勝ててよかったです……!


========


名前:マーチ     レベル:1,234

職業:豪商(商人上位)

HP:8,401/8,401

MP:2,987,691,077/4,452

攻撃:6,672(×0.9)

防御:5,439

素早さ:3,465

器用さ:10,327(×1.1)


スキル:『収納上手×2』

    『総てはこの手の中にある』

    『ポケットの中のビスケット+』


ジョブスキル:『恵比寿様の加護持ち』


========



 それからクロ姉が出る副将戦が行われたわけですが……。

 クロ姉と相手のピグミーヒッポさんとの戦いは一瞬で終わりました。

(各ブロックトーナメントでやっていたのと同じやり方で)


「しょ、勝者『ファーマー』クロ……!」


========


名前:クロ      レベル:1,234

職業:名匠(鍛冶師上位)

HP:3,465/3,465

MP:3,650,056,551/5,439

攻撃:----------------(×0.9)(×11,525,215,046,068,470.76)

防御:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)

素早さ:----------------(×11,525,215,046,068,470.76)

器用さ:----------------(×1.1)(×11,525,215,046,068,470.76)


スキル:『名匠たる所以+』

    『数だけ強くなる+』

    『素材管理+』


ジョブスキル:『錬成』


========


 審判さんがすごく引いていましたが、このあともっと引くことになります。

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