第262話(第七章第17話) 決勝トーナメント表が完成しました

 午後になってサクラさんたち「花鳥風月」の戦いが始まりました。

 Gブロック決勝戦。

 相手は「ガッツイーター」というPvPイベント予戦を三位で上がってきたパーティなのだそうです。

 ……本当にブロックによって強さが偏っていますね。

 Aブロックも大概でしたが、Gブロックも勝ち上がるには難易度が高いように思えます。


 「ガッツイーター」の皆さんですが、決勝戦が始まる前、彼らはイキっていました。

 曰く、ここまで大将が試合に出ることは一度もなかったからこのまま優勝トーナメントに出られるんじゃね!? と。

 曰く、相手パーティはなんかへんてこなスキルを持ってるみてぇだが先鋒が一回負けてるしこの差はデカい! と。

 あとは、これまで通り大将を試合に出すことなく決勝トーナメント進出を決めてやる! とか、このままいけば俺たちがこのPvPイベントの覇者になれるんじゃね!? とか。

 ……彼らはもう勝った気でいました。

 ですが、彼らって二重の枠で囲われてたパーティとは戦っていませんでしたよね?

 サクラさんたちは倒してきています。

 しかも、Gブロックに組み込まれたそれら三つのパーティ全てを。

 この事実があるはずですが、それなのに相手のパーティが余裕でいられるのが甚だ疑問でした。

 理由はやはりいいスキルを持っているからでしょうか?


 そんなこんなで始まった先鋒戦。

 相手のプレイヤーさんは「寒熱対策のローブ」と「燃えない靴」を着けていました。

 それでキリさんに対して嘲るように発言します。


「これであんたの妙なスキルは封殺した! 『火山』の地形にしたところで俺は痛くもかゆくもないんだからな! クハハハハ――」

「『急激な気候変動』」

「おごぽぁっ!?」


 ……。

 キリさんの『急激な気候変動』を封じた、と高を括っていた相手プレイヤーさんでしたが、穴だらけでした。

 キリさんが『急激な気候変動』を発動して、その場を「海」の地形に。

 相手プレイヤーさんは息をすることができなくなり、力なくぷかぷかと浮かび始めました。

 ……キリさんはこれまでのほぼ全ての試合で「海」の地形に変えているのに、前回展開した「火山」地形から身を守る装備を装着しただけでキリさんのスキルへの対策ができたと思い込んでいたのは何故なのでしょうか?

 兎にも角にも、相手が黒い粒子に変わっていったのでキリさんの勝利です。


 中堅戦。


「爆発、フェイント、爆発ってきてるから、フェイントがくるぞ! 気にせず突っ込め!」

「おう!」



――チュドオオオオオオオオンッ!



「あばぁっ!?」

「ふぇ、フェイントじゃな――ぐはぁ!? なん、で……!?」


 ……。

 ススキさんが『パラダイムシフト』+『大爆発』の方を使うと決めつけていた相手チームの二人。

 そんな大きな声で予測を言っていたら、そうではない方に行動を変えるのは当たり前だと思うのですが……。

 そして私が思った通り、フェイントを使わなかったススキさん。

 相手チームの二人が爆風に吹き飛ばされて戦闘不能になります。

 「ガッツイーター」の皆さん、対策が雑な気がします……。


 「ガッツイーター」の大将さんが頼み込んだ(というより、だだをこねたと言った方が正しいかもしれません)ことで泣きの一回(大将戦)が行われましたが。



――一閃。



 サクラさんへの対抗策は(「も」というべきかもしれません)考えられていなかったようで開始してすぐにサクラさんの勝利が確定しました。


「Gブロックから決勝トーナメントに進出するパーティは、『花鳥風月』に決まりました!」


 審判の方の宣言があり、サクラさんたちも無事に決勝トーナメント進出を果たしたのでした。



 全てのブロックの戦いが終了して、決勝トーナメントに出場するベスト8のパーティが出揃いました。

 Aブロックからは私たち「ファーマー」。

 Bブロックからは「お菓子がなければプディンを食べればいいじゃない?」。

 Cブロックからは「イベント特攻隊」。

 Dブロックからは「天使と悪魔の輪舞 with シニガミ」。

 Eブロックからは「ファーマー2」。

 Fブロックからは「ギフテッドの騎士団」。

 Gブロックからはサクラさんたち「花鳥風月」。

 Hブロックからは「MARK4」。

 それで決勝トーナメント進出が決定した段階でくじ引きをして対戦カードを決めたのですが、それがこちら。


 準々決勝――

 第一試合「ファーマー」vs「イベント特攻隊」

 第二試合「天使と悪魔の輪舞 with シニガミ」vs「ギフテッドの騎士団」

 第三試合「花鳥風月」vs「ファーマー2」

 第四試合「MARK4」vs「お菓子がなければプディンを食べればいいじゃない?」


 第一試合の勝利パーティと第二試合の勝利パーティが、第三試合の勝利パーティと第四試合の勝利パーティが、それぞれ準決勝で当たることになるそうです。

 そのことを知ったススキさんが私たちに言ってきました。


「セツさんたちと戦うには決勝まで行かなければいけないようですね」

「あっ、山が完全に分かれてるから、そうなるみたいですね」

「自分たちがどれだけやれるようになったのか確かめたかったけど、最後の最後まで行かないといけないのかー……。なんかお預け食らった気分なんですけど」

「まずは次の戦いに集中してください。それぞれのブロックを勝ち上がってきたパーティなんでこれまで通りにはいかねぇかもしれません。……特に二人称なーらの次の相手は」


 ススキさんと私が決勝トーナメント表を見て話していると、そこへ私たちと戦って自分たちの実力を計りたかったらしいキリさんが残念そうに加わってきました。

 そんなキリさんに忠告をしにライザも入ってきます。


 ライザによると「花鳥風月」の準々決勝の相手は、予戦九位で本戦出場を果たしたパーティでその名前は「ファーマー2」。

 彼らが私たち「ファーマー」を意識しているのは間違いありません。

 リスペクトしているのか、私たちの立場を乗っ取ろうとするディスリスペクトなのかは定かではありませんが……。


「向こうのパーティのスキルをばらすのは面白みに欠けると思うんでしませんが、決勝のことなんかを考えてると痛い目を見ますよ?」

「……うん。そだね……」


 ライザの指摘によってキリさんは浮かれていた気持ちを引き締めました。


 ちなみに、私たち「ファーマー」の準々決勝の相手「イベント特攻隊」は「ファーマー2」ほど厄介なスキルは持っていない、とのこと(ライザ談)。

 それでも油断していてはまさかの事態に陥りかねません。

 私たちは各々の対戦相手のことだけを考えることにして、万全を期すために準備に取り掛かりました。

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