第259話(第七章第14話) 危ない場面はありません(セツ視点)
十八日になりました。
イベント二日目です。
昨日、キリさんが思い悩んでいて心配しましたが、無事に勝利して少しは表情が晴れていたように見えましたので、たぶんもう大丈夫でしょう。
パーティとしてもトーナメントを勝ち上がることができていましたし。
……まあ、新しく取ったらしいあのスキルを見た時は言葉を失ってしまいましたが。
あまりにも一方的だったので……。
あとススキさん、やらかしてましたね……。
……それはさておき。
今からは私たち「ファーマー」の三回戦目です。
相手は「ROYAL」。
ライザに教えてもらったのですが、彼らは第一回の魔石集めイベントの時に上位にいたパーティ、とのこと。
アクシデントがあったために記録は残せなかったそうですが……。
あと、前回のイベント村救出イベントでは4位を取ったギルドに所属している、とか。
それで予戦を免除されたシードのパーティ……。
難しい戦いになるかもしれません。
と、懸念していたのですが……。
「Aブロック三回戦第一試合、勝者『ファーマー』!」
問題なく勝てました。
試合の内容ですが、一回戦、二回戦と変化はなく……。
強いて言えば、ライザが変更するスキルが変わっただけ……。
相手はジャックさんという方で、『
スキルが不発して戸惑う相手を一気に攻めて勝利を手にしていました。
マーチちゃんとクロ姉は一回戦、二回戦の時とまるっきり同じ行動を取っています。
相手はクインオブハートさんとキングさんという方々でしたが、クロ姉はその二人が何かをする、というか何かを考える時間すら与えずにハンマーで弾き飛ばしていました。
クロ姉が速すぎるため相手は対応できず、クロ姉の攻撃力が高すぎるため相手は耐えることができませんでした。
マーチちゃんはまたしても不測の事態が起きた時のためにスリングショットに魔石をセットして構えていただけ、ということになってしまっていて不満を漏らしていました。
そして私たちが二本先取してるのに、特例とは何か? と聞きたくなるほどもはや当たり前に行われることになった大将戦。
まあ、私もクロ姉と同じでやることが変わるといったことはなかったのですが……。
開始の合図が出ると同時に急接近して相手の懐に入り込み、投げて倒して戦闘終了。
相手はジョーカーという名前の方だったそうですが、クロ姉同様、相手が何かしらの行動を起こすことを私は許しませんでした。
私たちの試合は三本併せても二分足らずで終了しました。
決着がついたあと、相手パーティは絶望していましたし、観客席の方に行ったら行ったで観戦していたプレイヤーさんたちがヤバイモノを見るような目で見てきて、近くのプレイヤーさんとひそひそと話し始めました。
……妙な疎外感を受けました。
サクラさんたちは普通に私たちを労ってくれましたので、周りのことはあまり気にしないようにしようと思います。
この日もあともう一試合控えています。
次の対戦相手ですが、私たちが観客席について巨大なモニターに目を向けた時にちょうど決まったようです。
「ギフテッドの旅団」。
その名前、どこかで聞いたことがあるような……。
聞き覚えはあったのですが、どこで聞いたのかを思い出せないでいる私にライザが説明してくれました。
「ギフテッドの旅団」は、魔石集めイベントにて第三位、イベントダンジョン踏破イベントにてメンバーの二人が三位と六位に入っていて、イベント村救出イベントでも第三位、とこれまでに開催された全てのイベントにおいて好成績を残しているパーティとのこと。
そのためもちろん、シード権も獲得していました。
決勝に行く前にそんな強いパーティと当たるなんて……。
Aブロックって死のブロックなのでは(私たちは一応一位のパーティですし……)?
ブロックによって強さにひどい偏りがあるように感じます。
私たちは次の戦いに向けて作戦を立てつつ、観戦もぬからないようにしました。
観戦、というより偵察ですね。
決勝戦で当たるかもしれないパーティが出てくるわけですから。
そうしていると一人、見覚えのある方が出てきました。
第一層でエリアボスなどの説明をしてくれたり、第三層で起きていた事件について情報を提供してくれた方です。
彼もイベントに参加していたんですね。
知りませんでした。
時間は経過して。
Aブロック準決勝第一試合の時間がやってきました。
整列を促されて舞台の上に並びます。
相手も審判の方の指示に従って、私の前には女の子がやってきました。
アイドルのような制服を着ている長い青い髪をツインテールにしている女の子。
他のメンバーは男性のようなので一際目立っていました。
この配列は対戦相手が前に並ぶので私の相手はこの子ということになります。
「よろしくねーっ!」
「よ、よろしくお願いします……」
私を見て、そう言って元気よく握手を求めてくる女の子。
その声量に私は気圧されてしまって、おどおどした感じで握手に応じました。
さて。
一本目、ライザの戦いが始まります。
相手はクロノスさんという、アナログの時計のようなものが先端についた杖を持った魔法使いっぽい見た目の人。
相手はイベントで常に上位に入っているプレイヤーさんです。
少し不安もあったのですが……。
「しょ、勝者『ファーマー』ライザ!」
私の心配は杞憂でした。
むしろ、前の三回の戦いより早く決着がついたまであります。
ライザが「スキル変更の巻物」を使ったところまでは確認できていたのですが、気づいたら相手は黒い粒子に変わっていてライザが勝利していました。
まさしく一瞬のこと。
私は動体視力が強化されているのですが、それでもわかりませんでした。
いったい何があったのでしょう?
と、とりあえず勝てはしました。
二本目、マーチちゃんとクロ姉の戦い。
相手はハーデスさんとウラノスさん。
この方たちも魔術師タイプのようです。
クロ姉がいつも通りに攻めに行きましたが、やつれた感じの黒装束の人(ハーデスさん)が骸骨のモンスターを大量に出現させてそれを防ぎます。
あれはスパルトン!?
なんか久しぶりに見た気がします。
イベント限定のモンスターを召喚することってできるんですね……。
まあ、クロ姉はすぐに状況を判断して、風の魔法を付与したハンマーによってモンスターは全て吹き飛ばされていましたが。
スパルトンを召喚した術者もすぐにクロ姉によって吹っ飛ばされました。
一方でもう一人の魔術師は空中に浮かび上がって何かをしようとしていましたが、
「……えいっ!」
その前にマーチちゃんが魔石の弾を射て命中させて魔術師を弾き飛ばしていました。
戦闘時間、僅か八秒。
二人の魔術師が黒い粒子となって消え、マーチちゃんとクロ姉の勝利が決まりました。
……うん。
強いですね、二人とも。
そして例の如く何故か行われた大将戦は……。
相手の女の子(ネプというらしい)がフライング気味に何かをしてきました。
「コキュートス!」
――ヒュオオオオッ!
それは辺り一帯を凍り付かせる魔法かスキルのようで、一面が氷の世界に。
よく見ると女の子は「スパイク」を履いていてニヤリと表情を歪めました。
……が、私は気にせず特攻。
クロ姉がつくってくれた装備で、地形による悪影響を受けないので。
いつも通り、投げ飛ばして戦闘を終了させました。
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