第250話(第七章第5話) 始まりました、PvPイベント!

『始まりました! PvPイベント! 司会はギフテッドライブでもおなじみ、ギフテッド・オンライン広報部のギオクレーが担当する! そして――』

『同じくギフテッド・オンライン広報部、オトギリが解説をさせてもらうわ』


 このイベントのために準備を進めて、十七日。

 PvPパーティバーサスパーティイベントがその幕を開けました。


『まずは簡単にルールのおさらいをさせてもらう。知らなかったでは済まされないからな? ルール違反は敗北と心得てくれ。


 今回はトーナメント戦となっている。

 試合形式は、二本先取で勝利となる三本勝負。

 戦場はここ、特設闘技場。

 一本目がシングルスで二本目がダブルス、三本目がシングルスだ。

 装備の持ち込みは可で、アイテムも四つまで持ち込むことができる。

 事前に申請したもの以外のアイテムを持ち込んだ場合、失格となる。

 一つの試合で、先鋒戦、中堅戦、大将戦が行われるが、全て違うプレイヤーが出ること。

 事前にエントリー票を送ってもらっているので、予定していたプレイヤーとは違う者が出てきた場合、やむにやまれぬ事情がない限りその戦いは予定していないプレイヤーを出した側の不戦敗となる。

 五回勝ち上れば決勝トーナメントに出場する権利を得られ、抽選をし、決勝トーナメントの表がつくられる。

 決勝トーナメントで三勝したパーティが優勝となる。


 こんなものだな』


 司会の方が重要事項の確認をしています。

 私はそれを聞きながら、頭の中でイベント告知があってから今日までの一週間のことを振り返っていました。


 レベルアップや装備の調整を行いました。

 アイテムを吟味して、持っていく四つのアイテムを選びました。

 先鋒戦、中堅戦、大将戦という、出る順番も話し合って。

 自分が大将になってしまったことには不安しかありませんが……。

 私が弱い、とはもう思っていません。

 ですが、大将ということは一勝一敗で回ってくるということです。

 私に全てがかかっている……。

 責任重大です……。

 もし負けてしまったら……、とどうしても考えてしまって気が休まりませんでした。


 それと、気になっていたトーナメント表の二重の四角い枠で囲われたパーティ名についてライザに聞いたところ、「八月に行われた予戦を免除されたパーティ」という答えが返ってきていました。

 予戦を免除されるのは、過去のイベントで好成績を収めているチームということになります。

 即ち、強いパーティということ……。

 嫌な予感が的中してしまいました。

 初戦からそんなパーティと戦うことになってしまったサクラさんたちは大丈夫でしょうか……。

 ……って、こっちの方が勝ちあがる難易度は高いのですが。

 Aブロックには、私たちを除いても、二重の枠に囲われたパーティが四つもあるわけですから。

 このことも私の不安を掻き立てる一因になっていたと思います。


 私たちの初戦の相手は「シニガミファンクラブ・ミタマちゃんの集い」。

 ライザに教えてもらったことで、第六層のエリアボスを倒してあと、次のエリアに向かおうとしてそれを阻んできた人物、あの人がシニガミだったそうです。

 そういえばあの人と対峙した時、ライザがその名前を出していましたね……。

 ……すっかり忘れていました。

 ここからは、私は初めて知ったことなのですが、あの人、動画配信をしているみたいでそれによってファンがついているとのことです。

 シニガミさんのファン……。

 私は警戒していました。

 ちょっとクセが強そう……。

 『即死』のスキルを持った人を追っている方たちなのです。

 その方たちが持つスキルもかなり特徴があるものなのではないか? とそのように感じました。

 彼らのパーティ名は聞いたことがありません。

 イベント上位の常連さんというわけではないようです。

 ですがこのゲームは、スキルが全てといっても過言ではないゲーム……。

 相手が何をしてくるのかわかりませんから、油断はしないようにするべきでしょう。

 ライザは高い素早さとなんでも「視れる」ため後出しで有利に立ち回ることが可能ですし、マーチちゃんにはアイテムを増やせるという利点、クロ姉には相手のステータスを低下させたりスキルの役割を完全に破壊できる武器があって、みんな、強いと思いますが、それでも。


 ちなみに、ブロック分けの規則性みたいなものも判明しました(ライザによって)。


 A・Bブロックが②の午前、

 C・Dブロックが②の午後、

 E・Fブロックが③の午前、

 G・Hブロックが③の午後


 というそれらのタイミングでログインできるパーティが纏められているそうです。

(イベント期間となる十七日から二十三日はシルバーウィークで、五月にあるゴールデンウィークと同じように休みになるため、多くの方が日中でもプレイすることが可能のようです)

【※この作品上の設定です】



 私たちが今いるのは石でできた階段の前。

 これを上ると地面から二メートルほど高くなっている直径二十メートルほどの大きさの円形の舞台に上がれます。

 高さがある舞台が壁になっていて視界は遮られてしまっていますが、正面、反対側には「ファンクラブ」の皆さんが控えているものと思われます。

 そちらにも舞台に上がる階段が設けられているみたいです。


『では早速始めるとしよう。



――Aブロック一回戦第一試合!

  「ファーマー」vs「シニガミファンクラブ・ミタマちゃんの集い」!



 バトルフィールドへ!』


 司会の方がスピーカーを通して号令を出します。


「それじゃ、行きますか」


 ライザが鼓舞するように、または私たちの緊張をほぐすように微笑んで言ってきます。

 私たちは階段を上って行きました。


 そうすると、反対側からも四人のプレイヤーが舞台の上にやってきているのが捉えられます。

 全員が黒いローブを着ていて、フードを目深に被って顔が見えないようにしていました。

 こう言ってはなんですが、なんだか怪しいです……。

 すごく殺気立っているようで、周りの空気が淀んでいるように見えました。

 あと、ぶつぶつと何かを言っていました。


「コロスコロスコロスコロス……」

「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……」

「シニガミサマハワタシタチノモノ……」

「シニガミサマノモノニナッテイイノハワタシタチダケ……」


 ……。

 それは呪詛でした。

 やばいです……!

 関わり合いたくないんですけど!?


「……憑りつかれてる? それとも洗脳? 気が狂ってるとしか思えないの」


 ちょっと、マーチちゃん!?

 そのボリュームは不味いのでは!?

 ちょっと怖そうな方たちですし、聞かれていたらどうなるか……。


 ……私の悪い予感はやっぱり当たるようです。

 マーチちゃんの発言があったあと、「ファンクラブ」の皆さんは瞬時に一斉にマーチちゃんの方を見ました。

 そして統率の取れた動きで全員同時に右腕を上げ、マーチちゃんを指差して言うのです。



「「「「――有罪ギルティッ!!!!」」」」



 と。


 ……大変です。

 やばい人たちに目を付けられてしまいました(特にマーチちゃんが)……っ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る