第247話(第七章第2話) クエストを受けてみる
~~~~ 第十層エリアボスの間にて ~~~~
サーッと黒い霧のようになって消滅していくゲートガーディアンを見て、その人物は満足げに頷いた。
「うんうん! このスキルはまだまだ有効みたいだね!」
倒したボスの魔石を拾い、気分良くその空間をあとにする。
次のエリアへと続くゲートがある空間にやってくると、その人物は独り言にしては大きな声で言い始めた。
「ということで! 第十層『リスセフ大金山』ダンジョンクリアだね! ここのエリアボスも『即死』が聞いたからめっちゃ呆気なかったけど! ギミックの方が厄介だったかな? 壁を壊して進むとか! 壁だけじゃなくて床や天井も壊せるとこがあって、それを壊していかないと次の階には進めない、っていうのはかなり面倒だったよ。まあ、クリアできたからいいんだけどさ」
その人物はスマホのような画面に向かって話していた。
ゲーム内で配信をしているのである。
そう。
この人物はシニガミである。
「えーっと、今の時間は……っ! やばっ、もう22時になっちゃうじゃん! というわけで、あのゲートをくぐったら今日はもうお仕舞! ってことで! 新エリアが実装されてから16時間弱で来れてるんだから、いつも通り一番かな!」
そう言いながら軽やかな足取りでゲートをくぐったシニガミに次のようなアナウンスが聞こえてくる。
『第十層踏破おめでとうございます。第十一層への到達はシニガミ様が
――二人目となります』
「……ふぇ?」
『まだ次のエリアは実装されていません。今しばらくお待ちくだ――』
「ええええええええっ!?」
“エーーーーーーーーッ!”
“ハアアアアアアアアッ!?”
“あ、あり得ない……っ!”
“し、シニガミ様が一番じゃないなんてええええええええ!”
一番だと思い込んでいたシニガミの絶叫が白い空間にこだました。
画面内も大騒ぎになるのであった。
~~~~ セツ視点 ~~~~
翌日、十日の朝。
第十層・鉱山エリアの『ザクザクの街』の道具屋さんでお買い物をしていた私の元にライザから連絡が入りました。
『ちょっと特殊な素材を集めてぇんで付き合ってもらってもいいですか?』
と。
……特殊な素材?
素材ということは、私かクロ姉に必要なもの、ということでしょうか?
素材を扱えるのは基本的に薬師か鍛冶師に限られますから。
ライザの言うことなので当然意味があるはずです。
私は返しました。
『すぐに行くよ』
と。
ライザに指定された集合場所は第九層沼地エリアの「ズブズブの街」。
そこにはマーチちゃんとクロ姉も先に着いていて私を待っていてくれていました。
ライザがこの場所を集合場所に選んだのは、このエリアの最高難易度ダンジョンである「スクオスの毒の大湿原」の最上階に目的のものがあるため、でした。
……最上階?
エリアボスのいる空間にアイテムなんてありましたっけ?
……なんだか嫌な予感がします。
マーチちゃんたちがまだ第九層をクリアできていないため、第十層から向かうという省略はできませんでした。
ということで、ライザの素早さを私と同じになるまで上げ、クロ姉は装備を強化して私たちについて来れるようにし、私がマーチちゃんを背負って移動することに。
その際、マーチちゃんがぼそっと言っていました。
スピロストマムの縮むスピード……、と。
……あとで調べて泣きました。
兎に角、弾丸タクシー(ライザ命名)で目的地へ。
ライザがいるとやはり道中が楽です。
迷うことが一切ないので。
それと、やっぱり普通に最上階まで上るわけではありませんでした。
35階でボス部屋がある方とは違う場所へ向かい、下の階に戻される沼のトラップにわざと引っ掛かって、少し移動してまた同じトラップに引っ掛かって、というのを合計三回繰り返すとモンスターハウスに送り込まれました。
40体のスクオスを倒すと角の方に階段が出現し、上って行くとまたモンスターハウス……!
80体を倒すとまた出現する階段……。
上るとまたしてもモンスターハウスで160体のスクオス戦に。
結局そこは4連続のモンスターハウス戦を強いられる空間になっていました。
最後に出現したスクオスは320体。
私たちは高いステータスにものを言わせて押し通りましたが、これ……他のプレイヤーさんたちならどう切り抜けるのでしょうか?
……気になります。
どうにかこうにか目的地に到着!
その場所には綺麗な湖が広がっていて、その水を容器に汲んでみると目的のアイテムを入手することができました。
素材『神の水』です。
(ちなみに飲めないそうです)
これで終わり、というわけではなく、もう一つほしい素材がある、とのこと。
そう言ったライザを先頭に、私たちは次の場所へと向かって行きました。
「帰還の笛」で「ズブズブの街」まで戻り、「踏破者の証」で第三層「ブクブクの街」へ。
ライザについていって到着した場所は、鍛冶屋さんの隣の狭い路地の裏でした。
ここにいったい何が? 私だけでなくライザ以外の全員がそう疑問に思っていましたが、そこには以前来た時にはいなかったご老人が座っていました。
頭上にはNPCのテロップ。
ライザが言います。
「クエスト、受けに来ました」
ライザの言葉を聞いたご老人は彼女の方を見て震える声で告げてきます。
「……わたしの依頼を受けてくれるのか? ああ、ありがたい。どうか、わたしの元に『四元素の魔核』を持って来てくだされ。それらがあれば、わたしの夢は叶うでしょう。報酬はお渡しいたします。ですからどうか、どうか何卒……!」
ご老人がそう言い終えると、私たちの目の前に画面が表示されました。
========
クエスト:魔道具師の願い
達成条件:地、水、火、風、四種の四元素の魔核を魔道具師に渡す
→受ける ・受けない
========
ライザが代表して「受ける」をタップし、受注が完了します。
それからすぐにこの場をあとにしようとするライザに私は説明を求めました。
「ちょっ、ライザ!? どういうこと!? この『四元素の魔核』って……!?」
ライザは振り返って私の質問に答えます。
「素材を得るのに必要なクエストなんです。依頼品がどこにあるのかはわかってますし、今の
彼女はニッと笑いました。
というわけで依頼品採取……の前に、宿屋さんへ行ってライザはあるものを引き出して、それからクエスト達成に向けて動き出しました。
向かったのは第八層ダンジョン3「アホクビのマグマロード」。
その31階南側のマグマが溜まっている場所に冷えて固まってできた溶岩の島があり、そこでライザが「呼び出しベル」を使うとマグマノアホクビというモンスターが出現しました。
なんか前にもこんなことがあったような……。
(あの時は「お香」を焚いていて出てきたのはミズノタチシェスでしたが)
この敵には水属性の攻撃を与えることでどんな攻撃も通るようになるそう。
倒し方はさほど変わらないようで安心しました。
ライザが戦利品を回収しているのを見て、私は考えていたことを口に出しました。
「……ライザ。もしかして、魔核ってそれのこと? そんなの、前落としてたっけ? 私たち、スナノアホクビやミズノタチシェスともう一回戦わないと行けなかったり……?」
私は焦りました。
「スナ」と「ミズ」の魔核を拾った記憶がなくて。
ですが……。
「ああ、それなら大丈夫です。わーが回収してますから。倒すのはあと一体だけです」
……ライザ。
抜かりないです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます