第241話(第六章第35話) 因縁との決着(セツ&ライザ)8
私は驚きのあまり声が出なくなっていました。
ライザも、そうだったのだと思います。
私たちは二人して目を見開いて固まっていました。
そんな私たちにニヤリとした笑みを浮かべながら言ってくるトイドル。
「俺は他人のスキルを使うことができるんだよ! まあ、性能はかなり悪くなっちまうんだが。だがしかし! 一度コピーしたスキルはいつでも使えるようになってる! んで、コピーしたスキルの持ち主が死んだ場合、
――コピーしたスキルをフルの性能で使うことができるようになるんだ!
だから今の俺は、レベルは上位職の385だし、ステータスは総じてバケモノ級! 装備の特殊効果も充実してる! さらにスキルは盛沢山だ! アーハッハッハッハーッ! さあ! どうやって対処する!?」
「……っ!」
他人のスキルをコピーして自分が使うことができるスキル……!
それに、一度コピーしたスキルはいつでも使える、って……っ。
……最悪です。
何が最悪って、『スキル所持制限撤廃』の存在……。
あんなものがつくれてしまうなんて聞いていません。
それは、このゲームの根幹を根底から覆すスキルです。
そんなことが許されているということに、私はどうしても納得ができませんでした。
さらに最悪な点がもう一つ。
それはこの人が私たちのスキルも使える状態にある、という点です。
いったいいつコピーされたのでしょうか?
気づかないうちにコピーされていたということは、コピーすること自体はそれほど難易度の高い条件が設けられているというわけではないのかも……。
何にしてもこいつに私のスキルが使われると思うと気分が悪いです。
状況はもう詰んでいるといっても過言ではない状況でした。
相手はシーヴァの『虎の威借り』とミックスの『シンクロナイズ』で、ステータスは私と同等か下手をしたらそれ以上……。
ワワワの『海賊版』で、ライザの装備の性能を自分の装備に反映させているはず……。
加えてあのスキル群……。
打つ手なんて思いつきません……っ。
私は愕然として声を出すことができなくなっていましたが、ライザは私とは違ってなんとか声を発しました、
「……なんで
悪態をつくように、恨めしそうに睨んでいたライザ。
その様子に気をよくしたらしいトイドルは得意気に語り始めました。
「ああ、俺のスキル『コピーキャット』は、スキルをコピーしたい奴のある程度の距離に一定時間いればコピーすることができるんだよ! だからお前らのスキルは、お前らの店に行った時にコピーしてたってわけだ! お前らがイベントで一位を取れるパーティだってことは知ってたからな! それはコピらなきゃ損だろ!? これも全てはこのゲームで最強になるため! このやり方をやってたら、なんか『わがまま』と間違えられたが、そんな間違いはもう二度とさせねぇよ! 俺は『ブラックドッグス』! ギルド『このゲームの主役は我々だ!』の『ブラックドッグス』だ! 俺たちが、いや、俺が! 最強なんだよ!」
などと演説をするように主張しました。
続けて、ライザが発した言葉の後半の部分に触れます。
「……で、あー、っと、サクラのスキルって言ったか? サクラ、サクラ……ああ! あのサムライ女か! あいつは、どうすればお前のスキル『アナライズ』をフルで使えるようになるか、を考えて、お前に恨みを抱いてる奴らを焚きつけようとしたんだけど、その場面を目撃されちまってさぁ。スキルコピってから処分しようかとも思ったんだけど、有効に利用する方法を思いついたんだよ。あいつに『憑依』して油断してるところを狙えば『アナライズ』を手に入れられる、ってな! ……まあ、すぐに気づかれちまったから、仲間が大事なら一人ずつ潰していってやろうか、って脅すくらいのことしかできなかったんだけどな」
「っ!」
こいつは白状しました。
あの時、ライザとサクラさんが取っ組み合いをしていた時、サクラさんはこいつに身体を操られていた、と……!
そして、
――ライザが悲しい嘘をついたのも、全部こいつの所為でした……っ。
それから、サクラさんの身体がライザに突き飛ばされたあと、『憑依』を解いて、『ジャミング』というスキルで察知及び探知系のスキルに気づかれないようにしていて尚且つ『透明化』で姿を消していた本体に意識を戻し、サクラさんを『ブレインウォッシャー』という洗脳能力で起きられないようにしたのもこいつだと知って……。
(抜け殻になった本体にスキルの効果が持続していたのも『不思議なお守り』というスキルによるものだ、ということもあいつが暴露していました)
……。
は?
許せません。
ライザとサクラさんにそんなことをして。
ススキさんやキリさん、パインくんに悲しい思いをさせて。
マーチちゃんやクロ姉、コエちゃんにいたずらに心配させて。
みんなに、嫌な思いをさせて。
私は今。
これまでにないほどの怒りを感じていました。
私の大切な仲間にこんなことをされて、
――笑わせてはおけません。
……反省するかもわからない。
それを促そうとするだけ無駄だと思います。
それなら……。
私が万全を期して防御と素早さを「----------------」にしていると、あいつが動き出しました。
「気分が良かったもんだからつい話し込んじまった。ちっとばかしおしゃべりが過ぎたな。さて。それじゃあ、そろそろお仕舞にしようか。くくく。何か言い残したことはないか? 最期の言葉くらい聞いてやるよ」
「ありません、そんなもの。私は死なないので」
「……ハッ! ほざいてろよ! お前を殺したあとすぐにあの女も後を追わせてやる!」
トイドルが私に注目します。
意識が彼女から完全に外れました。
その瞬間に、私は彼女の状態異常を解きました。
私を仕留めようとするトイドルの攻撃を私はいなします。
『マジックアーム』とか『蛇睨み』とか『遅延攻撃』とか『背面取り』とか。
厄介なスキルを多用されて。
『とりかえっこ』はやられた瞬間にやり返しました。
(私は『憑依』だと誤認していましたが)
(あとで知ったことなのですが、『憑依』のスキルは対象の目を見る必要があるそうで、私がカンストした素早さで動き回っていたため効果を発動させるのが不可能だったのかもしれません)
大抵のスキルはカンストさせたステータスで凌ぐことができていました。
ですが、相手を仕留めるのは簡単ではなく……。
相手もカンストした素早さを持っている、という扱いになるため、私の器用さがいくら高くても撒いた薬を躱されてしまいます。
それだけならまだよくて、最悪『遠距離攻撃収納』で回収されてしまうという……。
……本当に薬師の手数の少なさには悩まされました。
ですが、私は何も一人で戦っているわけではありません。
――私にはとても頼りになる仲間がいるのですから。
「セツ!」
時間を稼いでいると、彼女の声がしてきました。
声のした方を確認して彼女の姿を捉えます。
淡い白い光に包まれている彼女の姿を。
その傍らには――
「よう、トイドル! さっきはよくもやってくれたなぁっ!」
まさかの人物の姿が。
――ミックス。
彼女は第一層へ行き、その人を連れて戻ってきていました。
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