第240話(第六章第34話) 因縁との決着(セツ&ライザ)7

「「ワワワっ!」」


 黒い粒子となってワワワが消えていきます。

 その仲間の二人が、消えていく人物のその名前を叫んでいました。


 それにしても、さっきのミックスの急な方向転換……。

 あれはいったいなんだったのでしょう?

 急な仲間割れ……というより、本人は意図していなかった動きのように感じられます。

 向きが、一瞬にして変わっていましたし……。


 何があって仲間を攻撃するに至ったのか、そのことを考えているとミックスが鬼の形相でこちらに向き直っていました。

 既に攻撃のモーションに入っていて。

 ……しまった!

 呑気に考察をしている場合ではありませんでした……!


 私は避けようとしました。

 ですがその直前、ミックスの身体は淡く輝きだして、



――私の前から姿を消しました。



 えっ!? 何!? どうなってるの!? と私はさっきまで目の前にいた人がどこから攻めてくるのかを警戒します。

 そうしていると、視界の外から声が聞こえてきて。


「っぶねぇ! 『未来予測』なかったら死んでたぞ!?」

「お、おい! 間に入ってくるなよ! 危ないだろうが!」


 前方の左方向からした声に、その方に目を向けてみると、腕を振り抜いているミックスと、尻もちを搗いた状態でミックスに抗議をしているトイドルの姿を見つけました。

 ミックスが移動している……ううん、させられている?

 これって……。


 私にはそんなことができる人物に心当たりは、一人しかいません。

 その彼女の方に視線を移してみると、彼女は倒れたままの状態で舌打ちを鳴らしそうな顔をしていました。

(彼女は私から見て前方右側にいて今は動けない状態でしたが、顔は私やあの二人を見ることができる位置で固定されていました)

(あと、実際に舌打ちはしていたそうです)

 ……間違いありません。

 これは彼女の仕業です。


 このことに思い至ったのは私だけ、というわけではなかったようで……。


「俺が割って入ったんじゃねぇ! お前が転移させられてるんだ! あそこで寝てる奴に! 気づけよ! さっきワワワをやった時にだって違和感あっただろ!?」

「そ、そういえば……!」


 トイドルが、ミックスの身に起きていたいつの間にか仲間を攻撃しているという現象の原因を突き止めていてそれをミックスに知らせていました。

 真実を知ったミックスが彼女に狙いを定めてしまいます。


「そうか、テメェだったのか! 許さねぇ! よくもワワワをやってくれたな!」

「っ! ライザ……っ!」


 私は慌てました。

 ものすごい勢いでライザに接近していくミックスの姿を見て。

 ……けれど。



――彼女の口角は上がっていて。



 彼女の元に向かおうとしていた足が止まります。

 大丈夫、そう確信したから。



「死ねええええっ!」


 倒れているライザを蹴り上げようとしたミックスを淡い白い光が包みます。

 そしてまた、攻撃をする前にミックスはトイドルの正面に転移しました。

 トイドルは地面に転がるようにして紙一重でミックスの攻撃を躱します。


「ああ! また!?」


 ミックスの間の抜けた声が響きました。

 それを聞いて、でしょうか?

 トイドルの顔が険しくなったのは。


 このあと、私は目を疑う光景を見ることになります。


 立ち上がったトイドルは、ライザに向き直って彼女を倒すのに力を貸してほしいと言うミックスに近づいて行って、


「厄介なスキルを……っ! おい、トイドル! 一緒にあいつ叩く――」

「もういい」

「……は? 何言って――がふっ!?」



――そのお腹に膝蹴りをしたのです。



 いきなりのことに私は理解が追いつきませんでした。

 呆然とする私を余所に、トイドルはミックスに言い捨てました。


「何回同じ手に引っ掛かりゃあ気が済むんだ? 一回やられりゃあこうなることくらい想像つくだろ、単細胞。役立たずならムカつくがまだ許容できるだろう。だが、足を引っ張られるってなると話は別だ。お前はいらない。大人しく俺の養分になってろ」

「と、トイドル、てめぇ……ッ!」


 まさか仲間を自分の意思で攻撃するなんて……っ。

 私が思ったことをミックスも思っていたようで一瞬驚きの表情に染まりましたが、ミックスはすぐに憎悪が籠った目をトイドルに向けて睨み続けたまま消滅していきました。


「仲間を……っ」


 ライザも理解不能という感じで……。

 私たちがまだ状況を呑み込めないでいると、そいつは高々に言ってきました。


「ふっ、理解できねぇだろ? まあ、理解できるとも思ってねぇさ。だが、これで俺はお前らを倒すことができるんだ! なんてったって今の俺にはこれだけのスキルがあるんだからなぁ!」


 それで見せびらかしてきたそいつのスキル一覧が――



========


『コピーキャット』『コーディネーション』『スキル所持制限撤廃』

『シンクロナイズ』『いいとこどり(スキル)』『達人の領域』

『海賊版』『レンタル』『レンタル契約解消』

『虎の威借り』『レベルブースト』『リスキリング』


『ディープフェイク』『嘘の上塗り』『MPリンク』

『透明化』『孤高の存在』『スキルインフルエンサー』

『シェイプシフト』『生態模写』『変身時間制限撤廃』

『形質変化』『魔法の身体』『弱点補完』


『ブレインウォッシャー』『洗脳人数制限撤廃』『洗脳時間制限撤廃』

『憑依』『もぬけの殻』『不思議なお守り』

『肉体改造』『職業選択の自由』『レベルリセット無効』

『とりかえっこ』『未来予測』『スキルリンク(取り換え時)』


『不法占拠』『安全地帯浸食』『スクラップ』

『マジックアーム』『所有権の譲受』『六文銭』

『イニシアティブ』『パーティ上限撤廃』『独り占め(経験値)』

『一心同体』『穀潰し』『コントラクト』


『蛇睨み』『モイスチャーアイ』『オキュロフィリア』

『遅延攻撃』『遅延攻撃永続化』『遅延攻撃オート化』

『背面取り』『クリティカル補正』『追い打ち』

『顕現術:影(自分)』『影隠れ』『ジャミング』

『デザイン変更:ビキニアーマー』『原寸大造形師』『裸の王様』

『重力操作』『引力操作』『斥力操作』

『素早さ倍化』『猪突猛進』『向こう見ず』

『ドM根性』『チャネリング』『放置プレイ』

『爆弾化』『起爆タイマーセット』『爆破ダメージ無効』

『何も聞こえない』『無味無臭』『闇討ち』

『土オートマ生成』『オートマ加工』『自動防衛付与(オートマ)』

『遠距離攻撃収納』『アイテム発射台』『遠距離攻撃威力アップ』

『墓荒らし』『死体喰らい』『PKペナルティ無効』


『能ある鷹は爪を隠す』『初期装備:侍』『勝利を我らに』


『薬による能力補正・回復上限撤廃』『ポーション昇華』『有効期限撤廃(自作ポーション限定)』

『収納上手×1』『石像化』『ポケットの中のビスケット』

『トリックスター』『総てはこの手の中にある』『アナライズ』


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