第230話(第六章第24話) 因縁との決着(ススキ&キリ&パイン)2
~~~~ パイン視点 ~~~~
「ひひひっ! やっぱいいな、女の身体は!」
「き、キリ……!?」
天を見上げながら大笑いしているキリ……。
こ、これが『憑依』というものなの!?
キリは前にも『憑依』されたことがある、って話だったけど、ボクは『洗脳』されてて意識がなかったから、この状態のキリの姿は初めて見た……。
(えっと、キリの声なのに話し方がキリじゃないのは聞いた気がするけど、あの時はそれを気にしていられる精神状態じゃなかったから……)
愕然としちゃってた……っ。
そんなボクを話が聞ける状態まで戻したのは眼鏡を掛けた人……。
「なっ!? エカリトさん!? そのボディは私が狙っていたのに……! 勝手に進めないでください!」
声がしたので思わずその方を見て、ボクは瞬きをすることもできなくなった。
ボクは、『憑依』のスキルを持っているのは眼鏡の人、って教えてもらっていたから……。
『憑依』のスキルを使うと使用者の本当の身体は動かせなくなる、って聞いてたけど、動いてる……?
混乱してきたよぅ……!
視線を、眼鏡の人とキリの姿をした人の間で行き来させていると、キリの姿をしてる人が言った。
「ハンッ! ほしかったならさっさと『憑依』を使ってりゃあよかったんだよ! これはすぐに『とりかえっこ』を使った『新制サキュビの虜』期待の新メンバー・エカリト様の勝ちだ!」
「ぐ、ぐぬぬ……っ」
キリの姿をした人が勝ち誇って、眼鏡の人が悔しがってる。
ボクはキリの姿をした人が言っていたことが引っ掛かりました。
『とりかえっこ』……?
そのスキルって、どういう――そう考えていた時、弱々しいか細い声が聞こえてきて……。
「ぱ、パイン……っ」
今にも消え入りそうな男の人の声。
ボクの名前が聞こえてきた方に視線を向けると、そこには、
――今にも倒れそうな顔色をした、がたいのいい男の人に捕まっている悪そうな見た目の人がいて……。
「え――っ」
……ボクの思考はもう、理解できるキャパを超えちゃってた。
また思考が停止してたボク。
……わかりませんでした。
なんでこの人がボクの名前を知っているのか……。
なんでこの人は、ボクに助けを求めるような目を向けているのか……。
頭の中がぐちゃぐちゃで……っ。
ボクは動くことができなくなってたんです……。
固まってる場合じゃなかったのに……!
「『肉体改造』っ!」
「へ? ひゃっ!?」
気づいた時には、一人の男の人が近くまで来ていて、ボクに向けて手を伸ばしてきていて!
ボクは、この人どこから来たの!? って思っちゃって、それで避けられなかった……。
だ、だって、いきなり現れた男の人だったから……。
どこかアイドルみたいな女の人に似てる気がしたけど、それでも間違いなく男の人で、ボクの脳は別人だって認識していた……。
その男の人の手がボクの肩に触れて、ボクはとっさに振り払った……。
そしたら、すんなり距離を取られて……。
……? 何がしたかったの……?
そう疑問に思っていると、
「ぱ、パイン! か、身体!」
叫ぶように指摘されたんです。
何故か、悪い見た目の人物に……。
その人のことを見て、訝しむ気持ちはあったけど、言われた通りに下を見てみると――。
「……え? 何、これ……?」
何か、大きな塊があって、足元が全然見えなくなってました。
触ってみると、触られてる感覚があって……。
……これが自分の一部であることがわかります。
ボクは服の襟の部分を引っ張って中を覗いてみました。
「――っ!?!?!? ~~~~~~~~っ!?」
ボクは悲鳴を上げました……。
叫びたかったけど、言葉にならなくて……。
ボクはまた固まっちゃってた……。
ボクが見たのは、ボクには絶対にあるはずがないもの……。
それでハッとして、下の方にも手が伸びちゃった……。
やめておけばよかった、って後悔した……。
そこはあまりにもすっきりしちゃってて……っ。
「い、いやああああああああっ!」
どうしてなのかはわからないけど……、
――ボクは性別を変えられてしまっていたんです……っ。
……あまりの恥ずかしさに悲鳴が出ました。
大きくなってしまった、む、胸を、庇うようにしてしゃがみ込みます。
……なんかすごく女の子みたいな所作をしてるような気がするよぅ……。
うぅ、涙が出てくる……。
な、なんでこんなことにぃ……!
み、見られてる……。
恥ずかしすぎるよぅ……!
頭の中が羞恥心でいっぱいになって、何も考えられない……っ。
身悶えているボクに、またあの男の人が近づいてきた……。
「……このゲームって基本的に異性に触れるのは禁止されてるだろ? 前に触れようとした時、『許可がないため触れられません』なんてアナウンスをされたから、まさか、とは思ったんだが……。だから、男の姿で試してみたら触れられて驚きだよ。いやぁ、男の娘だったとはな」
その人はボクとの距離を詰めながら、姿を変えていた。
男の人の姿から女の人の姿に。
「あっ!」
似てる……、とは思ってたけど、そうじゃなかった……!
あの男の人はあのアイドルみたいな女の人と同一人物だったんです……!
ボクは、どうやって性別を変えるなんてことができていたのか、その仕組みについて考えて、すぐに思い至りました。
そ、そっか!
スキルで……!
それ以外には考えられないから……っ。
そうだとすると、ボクの姿を変えたのもこの人の可能性が高い……!
こんなことをした理由は……恥ずかしさでまともに戦えなくするため!?
な、なんて卑劣な戦い方なの……!
「も、元に戻して……っ」
こんな卑劣な人に負けたくない。
……けれど、ボクの精神力はこの状況には耐えられなくて。
もう既に屈しかけていた。
情けなく、そう懇願することしかできなくなっていたんです。
そんなお願いを敵対している人が聞いてくれるはずもなく……。
ボクは性別を変えられる人に押し倒されてしまいました。
「ちょ、ちょっと!? 何を……!?」
「何って? 安心していいよ? 痛いことはしないから。大体このゲーム、そういうことができない仕様だからさ。精々できてもハグ止まりだよ。だから、ハグする」
「え!? ええっ!?」
ボクに覆いかぶさるように抱きついてぎゅうううっと力を加えてくるその人。
事態が呑み込めなくて、ボクはテンパっていた。
「……男だったと聞いた時がげっそりしたもんだが、これは! おい、セイ! 俺も混ぜろ!」
「ふざけんな! 百合の間に挟まってくんな! ぶっ殺すぞ!」
性別を変えられる人がボクに抱きついてゾッとする笑顔をボクに向けているのを見て、悪そうな見た目の人を捕まえていた男の人が何かを言ってきた……。
その瞬間、性別を変えられる人がくわっと般若のような顔になって二人は言い争いを始めた。
その間も、しっかりとボクを捕まえていたから抜け出せなくて……。
困ったことになったんだけど、状況はさらに悪くなって……!
「何を騒いでいるんですか? ライザを探しに行ったのではなかったのですか? 何故まだこんなところに――」
騒ぎを聞きつけたススキちゃんがギルドハウスから出てきちゃったんだ……!
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