第229話(第六章第23話) 因縁との決着(ススキ&キリ&パイン)1
~~~~ コエ視点 ~~~~
「ぎゃああああっ!」
それからカラメルはフェニーも呑み込んだ。
一瞬殺してしまったのではないか? とヒヤッとしたが、どうやらそうではないらしい。
「りゅりゅ!」
カラメルはレベルが上がったことで『運び屋』という特殊効果を得ていたのである。
この特殊効果は、プレイヤーを体内(異空間)に収めて移動する(運ぶ)ことができるというもの。
ただし、カラメルよりも弱い者はその空間からは自力では出られない、という。
カラメルは現時点では最強といっても過言ではないモンスターだ。
……あいつらはカラメルの中にい続けることになるだろう。
カラメルが許すまでは。
ペオールとフェニーの対処が終わったと思ったら……。
――ドオオオオンッ、ドカアアアアンッ!
ギルドハウスが大きな音とともに揺れた。
前にライザから聞いた話によると、このギルドハウスは絶対に壊れなくなったそうだが、これほどの轟音と振動を受けると不安にもなる。
何があったのか扉から覗いてみると、太った男とガリガリの男がギルドハウスを攻撃していた。
手に入らないなら壊してやる! と。
この煩さと揺れをずっと体感しているのも気分が悪いな……、と思っていると、カラメルが外へと飛び出していった。
カラメル対男たちの戦いは簡単に決着がついた。
ドーム型(内側は空洞)になった巨大化したカラメルがギルドハウスを囲ったことで音も振動も収まる。
攻撃されてもスキルを使われてもどこ吹く風のカラメル。
どうやっても勝てないと悟った男たちは逃げ出したのである。
その際、強くなって覚えた特殊効果をカラメルに使われていたとも知らずに。
兎に角、カラメルのおかげでギルドハウスを守ることができた。
ここはみんなの帰る場所だ。
それがなくなる、なんてことがなくて私は心底ホッとした。
~~~~ 第五層「アホクビの宝船」ダンジョン付近 ~~~~
「くそ、くそ……っ! 仕切り直しだ! タイミングを見計らって、今度は落とすぞ!」
「そ、そうだな! 俺たちと敵対したこと、絶対に後悔させてやるぜ!」
二人の男が走って、あるギルドハウスから離れていっていた。
復讐を果たすことを夢見ながら。
しかし、彼らは知らない。
新しい力を得たカラメルによって、
――彼らのスキルが著しく弱体化させられているということを。
――そして彼らの身体の中にカラメルがこっそりと自分の小さな分身体を忍ばせていたことも。
彼らはこれから、自ら死を選ぶことも、モンスターを倒してレベルを上げることも、彼らの体内に潜むカラメルの分身体によって邪魔されることになる。
一方で、カラメルの体内にいるペオールとフェニーはというと……。
「……やっぱ手ぇ出しちゃいけないとこだったな。……ログアウトすっか」
「……そだね。もうこのゲームやんない……」
諦めの境地に達していた。
二人は力のない笑みを向け合ったあと、スマホのような画面を操作してその場から姿を消した。
残ったのは一生外されることのないピンが二つだけだった。
~~~~ パイン視点 ~~~~
【マーチ&クロ、コエ&カラメルが因縁の相手と戦い始めたのと同時刻】
「……サクラ、目覚まさないね……」
「……そうですね。ですが、息はしています。セツさんたちがあの人を捕まえられればこの状態も解除することができると思うのですが……」
「……っ」
第二のギルドハウスで。
ボクは体育座りでサクラちゃんを見ていました。
あれからずっと眠ったまま……。
一向に起きる気配がなくて、すごく、すごく心配だよ……。
ボクの予想が正しければなんだけど、ライザさんはサクラちゃんにこんなひどいことはしていないと思う。
ライザさんのことは、初対面の時のアレがあったから、ちょっと、というかだいぶ苦手だって感じてたんだけど……でも。
それから今までのあの人を見てると、こんなひどいことができる人じゃないんじゃないか、ってそんな気がして……。
だってあの人、いつもどこか申し訳なさそうにしてたから。
償わなくちゃ償わなくちゃ……! って思いで押し潰されそうになってたように見えたから。
もしボクが感じてる通りだとするなら、マーチさんが言っていたことが今、起きているのかも……。
あの人はボクたちと会う前からボクにしたことと同じことを他の方たちにもやってたみたいで、その反感を買ってる……。
それで、ライザさんへの復讐にボクたちが巻き込まれないようにするためにボクたちから離れた……。
考えられる気がします。
ボクはもう一度サクラちゃんを見て。
じっとしてなんでいられなくなって。
ボクは動いていました。
「……ちょ、ちょっと、近くを見てくるよ……っ」
ここにいるよりは、って考えて、玄関に向かっていて。
その時、同じようにサクラちゃんを見ていたキリが立ち上がって……。
「じゃあうちもそうしよっかな。そっちの方がちょっとは効率的な気がするし」
彼女はボクの隣に。
双子だから、かな?
考えることは同じみたい。
性別が違うから一卵性じゃないんだけど。
「で? どこ行く?」
「と、とりあえずセツさんに連絡とってみようかな、って……」
「……うん。それがいいかもね」
それはギルドハウスの外、オアシスで作戦を立てていた時のこと……。
――ザッザッザッ
と砂を踏みしめる音が聞こえてきたんです。
その方見てみると、ローブとゴーグルを着けた四人のプレイヤーがこちらに向かってきていました。
ボクは最初、お客さんだと思ってしまって……、
「す、すみません! きょ、今日は、そ、そのっ、お、お休み、で……!」
とてもお店を開ける状態じゃなかったから臨時休業になっていることを伝えようとしちゃってて……!
でも、キリが覚えていたんですっ。
その人たちはローブのフードとゴーグルで顔の大半が見えなかったんですけど、キリは気づいてくれて!
「パイン! こいつら、変態! うちらを弄んだ!」
「えっ!?」
キリが言ったことに、ボクは一瞬頭の中が真っ白になったけど、すぐに元に……とまではいかなくても、物事を考えられるまでには戻ってくれた。
ボクたちを弄んだ変態って……っ!
――『洗脳』、『憑依』、『女体化』、『触手』の四人組!?
こ、怖い……。
気持ち悪すぎて身体が震える……っ。
そ、それでもボクは……。
怯える心に鞭を打ってキリの前に出た。
ボクの方がお兄ちゃんなんだから、隠そうとしているけどでも少し震えている妹を放っておくなんてできない……!
ボクの行動を見え、四人はフードを取って顔を晒しました。
鬼みたいに大きくて怖そうな男の人、アイドルみたいな女の人、冴えない感じの眼鏡を掛けた男の人……。
(もう一人は知らない人だ……)
(悪そうな見た目の人……)
ボクは警戒を怠っていたつもりはなかったんだけど……っ。
――キリに異変が起こって……!
「……ひひひっ! よっしゃあ! 女の子の身体ゲットお!」
「っ!?」
本当の彼女が絶対にしない下品な笑い方を、彼女はし始めたんです……っ。
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