第218話(第六章第12話) 捜索
~~~~ ライザ視点 ~~~~
「……」
もう後戻りなんてできやがりません。
全てを終わらせてやるってんですよ。
「一人ずつぶっ潰してやります。覚悟しやがれってんですよ……!」
~~~~ セツ視点 ~~~~
朝にやることを終えて、ゲームの世界に戻ってきた私はマーチちゃんたちと一緒にライザを探すことにしました。
手分けして彼女が行きそうな場所を回ります。
しかし、なかなか見つかりません。
彼女が行きそうな場所に、私たちは心当たりがなかったのです。
ですから、私たちにできることは虱潰ししかありませんでした。
パインくんとカラメルが第二層を調べにいっていて、
ススキさんとキリさんが第五層を見に、
クロ姉が第三層、
コエちゃんは戻ってきた時のためにメインハウスに残っています。
私とマーチちゃんは、どうしようか、と考えてパッと思いついた第一層に行くことにしました。
(これらの場所にいなかったら、残りの層を探す予定です)
街からダンジョン1「リスセフ平原」、ダンジョン2「アホクビの住む洞」、ダンジョン3「タチシェスのいる自然公園」を巡ったのですが、彼女の姿を見つけることはできませんでした。
……そもそもの話なのですが、ライザはあの素早さを持っています。
移動しているならば捕まえるのは容易ではありません。
加えて、彼女が持っているスキル『アナライズ』……。
全てを知ることができるといっても過言ではないあのスキルを使われて接触することを避けられているのだとしたら、私たちにはなす術がないかもしれません。
今やっていることが無駄かもしれない、と思うと挫けそうになってしまいます……。
ダンジョン4「スクオスの森」を探してもライザの姿はなく……。
私とマーチちゃんは途方に暮れていました。
何か手はないか? と考えていると、ふと閃きました。
「そうだ! メニュー画面を見て居場所を特定すれば……!」
仲間であればメニュー画面を見た時にその現在地が表示されます!
それを使えばライザが今どこにいるのかわかるはず……!
そう思って提案したのですが、マーチちゃんには力なく首を左右に振られました。
「それはもう試したの。けど、あいつ、そのシステムをオフにしてる……。位置がわからないの」
「っ! そ、そんな……」
ライザは位置を知られないようにしている……。
確かめてみると、マーチちゃんが言った通りライザの居場所は表示されていませんでした。
そういえば、そんな機能がありましたね……。
私は、サクラさんがパインくんたちから離れようとしていた時のことを思い出しました。
その時にサクラさんがやっていたのが、今のライザと同じこと……。
……本当に、なんでこんな機能があるのでしょう?
不満を覚えます。
今までこういう時に頼ってきたのがライザでした。
そのライザがいなくなると、こんなにもうまくいかないなんて……っ。
彼女に頼りきっていたことを反省させられます。
俯いて悔やんでいると、マーチちゃんが私の手を取って歩き出しました。
「連絡してみたけど、みんな、見つけられなかったみたいなの。だから、残りの階層を調べに行ってみるの。ここまで来てるから一旦サブハウスを確認して……」
マーチちゃんに引っ張られて、私は気持ちを切り替えようとしました。
ここで諦めてはいけない、と。
まだ探していない場所にいるかもしれない、そう思って自分で歩こうとした時、周りの景色が鮮明に映ったような気がしました。
どうしてそのような感覚になったのかわからなくて辺りを見渡してみると、生い茂っている木々が目に入ってきます(今いるのは開けた場所ですが)。
森のダンジョン……。
森……――っ!
ハッとしました。
この場所の光景と夢で見た光景が重なって見えたのです。
「……お姉さん?」
私の身体は動き出していました。
この空間にもエリアボスの間にも彼女はいませんでした。
ですが、彼女は絶対にこの景色が見える場所にいる、そんな感じがします。
まだ調べていない場所といったら……。
私は南側へと向かって行きました。
壁になるように密生している木々の一つに手を伸ばすと、その手は木の中へと消えていきます。
マーチちゃんはそれを見てその存在を思い出したようで、私の元へと駆けつけてきました。
私たちはそのすり抜けられる木を通っていきました。
狭い通路を少し歩いていくと広い場所に繋がります。
このダンジョンの隠し部屋、そこに、
――膝を抱えて座った状態で眠っている少女の姿がありました。
ライザです!
「ライザさん!」
私は彼女を見つけられたことで思わず大きな声を上げてしまいました。
その声に反応してライザが瞼を上げます。
少しの間、焦点が定まっておらずボーッとしていた彼女ですが、状況を認識すると驚いて飛び起きました。
……私たちと距離を取るように。
「
とても焦っている様子です。
彼女は『笛』を取り出していました。
私は慌てて止めます。
「ま、待って! 本当のわけを話して! あんなことをしたのはちゃんとした理由があるんでしょ!? 今までのあなたを見てたら、意味もなくあんなことをするなんて思うわけないよ!」
この機会を逃してしまったら、私たちの間にある
ですから、私は彼女と話しをしようとしました。
彼女の本当の言葉を聞きたかったのです。
しかし……。
「……なーに、あんたに何がわかるってんですか? たかだか二、三カ月一緒にいたくらいで知ったようなことを言わねぇでください。
「ライザさん……!」
ライザはもう一度、同じことを言いました。
自分はお前たちを騙していたのだ、と。
ライザ……。
それならどうして、
――そんなつらそうな顔をしているんですか?
私だけにそう見えている、とはどうしても思えません。
「そんな無理してるって顔で言われても説得力なんてないよ! 話して、ライザさん! 何があったの!?」
指摘して追及する私に、彼女は――
「――あー、もうっ! しつけぇんですよ! 理由なんて、あんたらが気に食わなかったから、って何度も言ってんじゃねぇですか! それなのに、本当はちゃんとした理由がある、とか言って探し回って……! あんたら、どんだけ脳内お花畑なんだよ! ……わかりました。もう疑う余地がねぇほどに、
――ここでぶっ潰してやりますよ!」
そう言って、ポーチから巻物を取り出しました。
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