第211話(第六章第5話) 多忙なサブハウス
「0」、「0」、「0」と続いてしまっていましたが、ようやく「1」に……!
感無量です……っ!
その日はそれで閉店時間になったためお客様は一人だけだったのですが、私は嬉しくてたまりませんでした。
やはり、誰も来ない、のと、一人来てくれる、のでは大違いですよね!
その翌日はマーチちゃんとコエちゃんが当番をしていましたが、お客さんは0でした……。
私は、お客さんが一人来てくれたことをマーチちゃんに話していました。
あまりにも嬉しかったので。
それでマーチちゃんは期待をすることに。
ですが蓋を開けてみれば結果は0で、マーチちゃんに糠喜びをさせてしまうことになってしまいました。
……申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
翌々日はサクラさんとパインくんが担当することになっていて、久しぶりにクロ姉がログインしてきましたので、私たち「ファーマー」はあの禍々しい鎌を持った人の所為でやり直しになっていた第七層進出を目指すことにしました。
前回の時よりも能力値は大幅に上昇していましたから、その、まあ、なんというか……、快勝しました。
第六層のエリアボス・ヴェノムリスセフは麻痺や猛毒にする魔法を振り撒いてきましたが、私には通用せず。
器用さと防御にデバフを掛けようとしてきましたが、これも通じず。
自身に素早さのバフを掛けようとしましたが、その時には既に私はボスの身体を掴んでいました。
投げて戦闘終了です。
なんか、みんなの私を見る目がジトーッとしたものになっていたような気がしますが、気のせいですよね……?
(クロ姉は除く)
第七層は魔法エリア。
街の名前は「キラキラの街」。
西洋を彷彿とさせる風景です。
宿代は10,200G。
武器屋さんの装備は一つ40,140,800G。
(攻撃、防御、素早さ、器用さのうち三つを16%、残りの一つを4%上げられる)
(HPとMPを上げられるものは片方を「12」、もう片方を「8」上昇)
ただし、このエリアを攻略するのに必要な装備はなし。
道具屋さんにはエピック品質の状態回復薬、素早さバフポーション、素早さデバフポーション、悪心薬と、レア品質の素早さデバフ耐性ポーション、悪心耐性ポーションが追加。
新しい薬があればレシピを覚えることができたのですが、そういったものはなく……。
時間があったため、エリア最難関ダンジョン「アホクビの魔法神殿」を覗いてみることに。
そこは白を基調とした教会のような、天井が高く広い建物のダンジョンでした。
ここからはライザ情報。
第七層のダンジョンは28階まであり、これまで通り4階ごとに安全地帯が設けられているとのこと。
ただ、第七層のダンジョンには階段が存在せず、魔法陣を使って上の階に進んでいく方式なのだそうです。
そして、ちょうど中間である14階はモンスターフロア。
ここに出てくるアホクビは悪心だけでなく麻痺も効かず、悪心の他に麻痺の状態異常も撒き、攻撃に加えて素早さも上げてくるようになっていました。
まあ、私とクロ姉には状態異常とデバフが効かないので、アホクビが進化している、という気はあまり感じられなかったのですが。
あと、ライザは避けられるのでまったく意に介していませんでした。
マーチちゃんだけは影響を受けていて、嘆いていましたけど……。
モンスターフロアに出てきた120体のアホクビはバステ、デバフをなんとかできる三人ですぐに消し飛ばしました。
(早くしないとマーチちゃんに被害が及ぶ可能性があったため)
道中で厄介だったのは下の階に飛ばされる一方通行の魔法陣でしょうか。
あまりにも下の階に戻す魔法陣が多くて(しかも乗るまで目に見えない仕様)何度も降ろされていたため、どこに下の階に行かされる魔法陣があるのか、はライザに教えてもらうことに……。
マーチちゃんはとても悔しそうでした。
ちなみに、27階にいたボスは8体の銅オートマで、最上階にいたエリアボスはアダマントアホクビという宝石のようなアホクビでした。
相手が行動する前に接近して投げているため、即戦闘終了しています(第三層のエリアボス以来の瞬殺)。
マーチちゃんとライザにはものすごく呆れた目を向けられてしまいました。
……私、強くなりすぎてしまったのかもしれません……。
ちなみに、アホクビ系統は強くなると以下の特殊能力が開花するそうです。
攻撃バフ
素早さデバフ
悪心無効
悪心付与
攻撃デバフ無効
素早さバフキャンセル
MP回復魔法
素早さバフ、器用さデバフ、麻痺無効、麻痺付与、素早さデバフ無効、器用さバフキャンセル、HP回復魔法
会心
鈍化
封印無効
封印付与
チャージ
デバフの上書き(素早さ)
オートマジックヒール
器用さバフ、猛毒無効、猛毒付与、器用さデバフ無効、復活魔法
回避、残像、暗闇無効、暗闇付与、分身、デバフの上書き(器用さ)、オートヒール
何はともあれ、私たち「ファーマー」は第八層に到達しました。
――第八層火山エリア「メラメラの街」
石造りの街で広場中央にある噴水は枯れていました。
宿代11,400G。
武器一つ160,563,200G。
(攻撃、防御、素早さ、器用さのうち一つが64%、二つが16%、残り一つが4%上昇)
(HP・MP上昇装備は両方「12」ずつ上がる)
このエリアを攻略するのに必要な装備「燃えない靴」、2,508,800G。
道具屋さんにエピック品質の復活薬、器用さバフポーション、器用さデバフポーション、幻惑薬と、レア品質の器用さデバフ耐性ポーション、幻惑耐性ポーションが入荷。
この日はもう時間がありませんでしたが、第八層も近いうちにクリアしておきたいものです。
ですが、エリアボスを倒して光のゲートをくぐろうとすると、またあの人に邪魔されるかもしれないんですよね……。
……禍々しい鎌を持ったあの人に。
その懸念があった私たちは、第八層をクリアするのは新しいエリアが実装されてからにしよう、ということで意見が纏まりました。
そんなわけで、私たちはギルドハウス(メイン)に戻ることにしました。
その時私は、ゲームを終了する前に一度サブハウスの様子を見ておこう、と考えました。
サブハウスもギルドハウスなので「踏破者の証」の転移先に指定することができます。
「私、ちょっとお店の方を見てくるね」
そう言って「踏破者の証」を使った私。
石造りの街からオアシスまでひとっとびです。
相変わらず閑散としてるんだろうなぁ、なんて思っていたら……。
「あー、早く買いて―」
「ここ、状態異常を防ぐ薬を売ってるんだってー!」
「わたし、『アンジェ』の口コミで来たー」
「私もー!」
「こ、ここの店員、マジで可愛いらしい……」
「ま、マジかよ……!」
「え……?」
私は目が点になってしまいました。
――私たちのお店の前に長い列がつくられていたからです。
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