第204話(第五章特別編1) 彼の一日
~~~~ ギフテッド・オンラインの世界 ~~~~
そのモノの朝はまあまあ早い。
幼い少女に起こされて出てくる。
そのあとは各部屋を回る。
アイテムなどが散乱していたら回収して倉庫へと持って行ったりする。
ただしこれは、部屋の主が許可しないとできないことである。
基本、彼を起こす少女が一番先にやってくる。
そのため、彼は部屋の扉が開けられるのを待っていることが多い。
部屋の扉が開くまでは自由に過ごす。
家から出て外の空気を感じに行ったり、エントランスでのんびりしたり。
この日は、彼を起こした少女がこの家の敷地内に植えた「種」が早く芽を出さないか、とずっと眺めていた。
時間が経って、扉が開けられる。
扉が開く順番は大体決まっている。
まず最初は縦巻きカールの少女。
彼女の部屋はきれいなので、片付けをする必要はない。
彼は縦巻きカールの少女に特殊効果の使い方についてのレクチャーを受ける。
次にやってくるのは黒い服に身を包んだ少女。
彼女の部屋にはやたらと服が置かれている。
特殊効果重視ではなく見た目重視の服だ。
彼は黒い服の少女に着せ替え人形にされる。
次にやってくるのは女の子みたいな男の子。
彼の部屋はきれいである。
彼は女の子みたいな彼のスキルの練習相手になる。
次にやってくるのが彼がこの家にやってくるきっかけとなった少女。
彼女の部屋は薬品が大量に置かれていることが多い。
なので片づける。
そのあと、彼はきっかけとなった少女とまったりする。
次にやってくるのはバッグを背負った少女。
彼女の部屋もアイテムで溢れていることが多い。
当然整理整頓をする。
そのあと、彼はバッグを背負った少女とお話をする。
次にやってくるのは侍っぽい見た目の女性。
彼女の部屋は可愛いもので溢れている。
ただ片付けが必要なほどではない。
彼は侍っぽい彼女にぺたぺたされたりぷにぷにされたりして遊ばれる。
次にやってくるのは眼鏡を掛けたロングヘアーの少女。
彼女の部屋にも黒い服の少女と同様、やたらと服が多い。
彼は第二回ファッションショーをする羽目になる。
最後にやってくるのはきっかけとなった少女と酷似している少女。
彼女の部屋は装備だらけで常に足の踏み場がない状態だ。
片付けても片付けてもキリがない。
扉が開かないことも間々ある。
なので彼は、似ている少女の部屋には入らない。
これが終わると次は探索に向かう。
探索は様々なことをする。
隠されている空間を探したり、強い敵と戦ったり。
この日は第五層ダンジョン4「スクオスの天空城」という場所に向かった。
そしてエリアボスという存在と戦った。
きっかけをくれた子やバッグを背負った子、縦巻きカールの子、けっかけの少女と似てる子は攻撃はせず、サポートに徹していた。
(幼い少女は攻撃手段を持たないのでサポート組に守られていた)
彼も勝利に貢献した。
ボスと取り巻きを隔離したり、戦っている四人が状態異常になるのを防ぐために壁になったりした。
そのおかげで、大きな怪我もなくエリアボスを倒すことができた。
最後に、これじゃあ経験値が入らねぇんですがよかったんですか? という縦巻きカールの子の言葉で、その子以外の全員が固まる、という事件は起きたが……。
探索が終わるとそれぞれの自由時間になる。
きっかけをくれた少女は薬品をつくったり、どこかに出かけたりする。
アイテムを増やしにくくなったから薬の素材を採取しに行っているのだという。
バッグを背負った少女はアイテムを増やせるだけ増やしたり、そのアイテムをきっかけの少女と似ている子のところへもっていったりする。
それでアイテムの品質を高めているのだという。
縦巻きカールの子は調べものをする。
効率的なレベルアップの方法やアイテムの使い方など、様々な情報を仕入れているのだという。
きっかけの少女に似た子は装備をつくったり、品質を高めたアイテムをバッグを背負った少女のところへもっていったりする。
それを増やしてもらってよりよい装備をつくっているのだという。
侍っぽい女性は眼鏡の少女、黒い衣装の少女、少女のような少年とともにレベルアップをしに行ったり、一人で自室のカスタマイズをしたりする。
カスタマイズは「ぱそこん」というものに「でざいん」なるものがあれば可能だという。
眼鏡の少女は三人と一緒にレベルアップをするか、一人で縦巻きカールの子に服の注文をしにいったりする。
着て「しゃしん」を撮って楽しむという。
黒い衣装の少女は三人と一緒にレベルアップをするか、一人で何やら空中に向かって指を動かしていたりする。
やらないと落ち着かないという。
少女みたいな少年は三人と一緒にレベルアップをするか、一人で筋トレをしていたりする(ただし、できていない)。
男らしくなりたいという。
幼い少女は庭につくった庭園の世話をする。
様々な薬草類をつくっているという。
この日、彼は幼い少女の仕事を手伝っていた。
そんな形で彼の一日は過ぎていく。
~~~~ 彼視点 ~~~~
自分は虹色プディンである。
名前はカラメル!
生まれた場所はフワフワなところ。
そこで仲間たちと暮らしていたことだけは記憶しているです。
自分はそこで、初めて「あの方」を見たです。
しかもあとで聞くとそれは、薬師という人間中で一番弱い種族であったそうです。
この薬師というのは、時々弱い
しかしその当時は、自分はプディンの最上位種で強いという自負があったから特段恐ろしいとも思わなかったのです。
ただ、彼女に担がれて地面から離された時、ひやひやとした感じがあったです。
衝撃に備えて攻撃を耐え、向かい合ってその顔を見たのがいわゆる人間というものの見始めだと思うです。
自分の身体を少し切り離して弾にして飛ばす技を覚えていたことで、しばらくは優勢であったですが、決着をつけるために自身にバフを掛けようとするとその薬師は非常な速力で動き始めたです。
何やら液体を掛けられて身体が重くなるのを感じたです。
力が抜けていったです。
自分に何が起きたのか理解できずにいると、薬師が迫ってくるのがわかったです。
それまでは記憶しているですが、あとはなんのことやらいくら考えだそうともわからないです。
ふと気が付いてみると、薬師と一緒に行動していたです。
群れの中では自分よりも強い存在はいなかったです。
その自分があっさりと敗北してしまった……。
その上、どうやら命乞いまでしてしまったみたいです。
これでは仲間に顔向けできないです……。
ですが、本能に突き動かされたこの行動が間違っているとはどうしても思えません。
自分は、「この方」といるべきであると強く思ったのです。
……あと、「この方」が最弱、というのは嘘だと思うです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます