第187話(第五章第21話) 「運営」だけが予想外の結果
~~~~ 運営サイド ~~~~
七月二十六日から二十七日にかけてのこと。
一人の人物がパソコンの画面にかじりついていた。
「そろそろイベントが終わるな。さてさて、どんな結果になることやら」
この人物は「ギフテッド・オンライン」の「運営」の人間である。
今、「ギフテッド・オンライン」ではギルドイベント「イベント村救出イベント」が開催されており、その期間が間もなく終わろうとしていた。
イベントの結果はAIが算出してくれるため、時間はかからない。
二十七日午前0時――日付が変わるとともにその人物のパソコンには今回のイベントの結果が表示された。
『「イベント村救出イベント」終了。
それに伴う処理を行っています。
……
処理が完了しました。
結果を報告します。
「イベント村救出イベント」結果
10位 Integral -1,235ポイント
構成:賢者の石
鉄壁の守り
付与救命団
ワンダーランド
9位 このゲームの主役は我々だ! -1,059ポイント
構成:ブラックドッグス
妖精のしっぽ
サキュビの
砂男の虜
8位 プディンを愛でよ帝国民よ -894ポイント
構成:プディン帝国
お菓子がなければプディンを食べればいいじゃない?
プディンを愛でる会
テイマーズ
7位 ナンバーセブン -639ポイント
構成:777
いろんな木の実
ベットアンドライズ
諸刃の剣
6位 プロバイダー -444ポイント
構成:真のギフテッドマスター
ギフテッドオンライン運営チーム
ギフテッドオンライン広報チーム
5位 選ばれし者の集い -369ポイント
構成:ベータテスターの集い
ホープ
韋駄天
イベント特攻隊
4位 キングダム -259ポイント
構成:MARK4
ROYAL
CODE:S
赤い月
3位 ギフテッドの旅団 -64ポイント
構成:ギフテッドの旅団
ギフテッドの師団
ギフテッドの騎士団
ギフテッドの兵団
2位 シニガミの巣 -50ポイント
構成:シニガミ
1位 ラッキーファインド 0ポイント
構成:ファーマー
花鳥風月』
「……は?」
映し出されたその内容に、この人物の目は釘付けになる。
僅かな間、思考が止まっていたが……、
――ピロン
――ピロン
――ピロン
――ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンッ!
突如としてそのパソコンに送られてきたメッセージの嵐によって、その人物の放心状態は解けた。
慌てて確認してみるとそれは、同じゲームの「運営」として働いている同僚からのもので、送られてきたメッセージの数はきっかり「運営」チームの人数分であった。
その中身は、
――「またファーマーが1位ですよ!? どうなってるんですか!?」
――「しかも0ポイントって……! 森の中に配置したNPC助けたってことでしょ、これ!?」
――「それだけじゃないですよ! そのNPC助けたら超ハードモードになるように設定してたじゃないですか! それなのに……!」
――「あの無敵の魔神を倒したのか!? 村に被害を出すことなく!?」
――「ど、どうしましょう、プロデューサー!?」
……というようなものばかり。
結果を見て固まっていた人物、「ギフテッド・オンライン運営チーム」のプロデューサーの口から力のない言葉が漏れる。
「なんということだ……っ」
森の中に村人NPCを配置したのも、そのNPCを助けたらイベント最終日に村に魔神が攻めてくるようにプログラムしたのも、全てこのプロデューサーが計画したことだった。
そうすることで、これまでに行われた二回のイベントで1位をかっさらっている「ファーマー」が所属するギルドを1位から陥落させようとしていたのである。
プロデューサーは、「ファーマー」なら村人を助けるであろう、と踏んでいたのだ。
全ては、ゲームの公式SNSに多く寄せられる、イベントの優勝者が変わらなくてつまらないからなんとかしてほしい、という要望に応えるためであったのだが、結果はご覧の通り。
プロデューサーをはじめとした「運営」チームは、「ファーマー」対策に頭を抱えるのだった。
~~~~ セツ視点 ~~~~
二十七日。
私は自分のステータスを見て不満を抱いていました。
========
名前:セツ レベル:385(レベルアップまで23,760Exp)
職業:製霊薬師(薬師上位)
HP:1,704/1,704
MP:4,101,277,868/2,628
攻撃:2,567,893(×0.9)(×2,622.44)
防御:3,747,360,361(×2,684,355.56)
素早さ:6,084,060(×2,622.44)
器用さ:8,669,394,716(×1.1)(×2,684,355.56)
状態:全デバフ無効(上書き不可)
全バステ無効
========
あれだけリスセフを倒したというのに、あんなにヤバそうなモンスターを倒したというのに、経験値は得られていなかったからです。
どういう仕様なのでしょうか?
納得できません……。
ですが、これについていつまでも考えていても仕方がありません。
どんなに思っていても得られないものは得られないので、切り替えが大事だと思います。
現実で午前七時が迫るころ、みんなが続々とログインしてきました。
ライザにサクラさんたち、マーチちゃん、遅れてクロ姉の順番で。
この日はイベントの結果発表の日ですから、みんなでこの時間にログインしよう、と話していました。
そして午前七時。
――ヴィン
私たちの元に「運営」からメッセージが……!
結果は1位!
同率はいなくて、単独首位です!
私たちは今回のイベントでも1位を取ることができたことを喜び合いました。
それから宿屋の受付に行って、イベントの優勝景品である『第三層全ダンジョンの宝の地図』を受け取りました。
それを手にした時にサクラさんたちが目を輝かせていたのがとても印象的でした。
ただ、「地図」をゲットしたことがある私、マーチちゃん、クロ姉は、この段階ではまだ喜べなかったのですけれど。
「リスセフ遺跡」でのことがありましたから……。
「地図」が示す第三層にあるお宝の在り処のヒントは以下の通りでした。
『タチシェス海浜公園 9階西側の孤島でモンスター除けのお香を使う』
『スクオスの住まうラグーン 10階北側に宝石サンゴを持っていく』
『リスセフの沈没船 11階東側にある鍵のかかった部屋』
『アホクビ海底谷 B9階南側・B12階にある魔法陣』
……出ました、「リスセフ遺跡」のパターン。
「アホクビ海底谷」の最下階に魔法陣があった憶えはありません。
これはまた捜索が難航しそうな予感がして、マーチちゃんが溜息をついて、クロ姉は肩をすくめて、私も苦笑いで……。
先行きに不安を覚えました。
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