第182話(第五章第16話) イベント村を守り抜け4
コエちゃんを救ったその日は、もうやることがないので夏休みの宿題をして終わりました。
ログアウトする前にライザと少し話したのですが、名前がついているNPCは何か特別な役目を与えられている可能性が高い、とのことで、コエちゃんのことはできる限り気に掛けることにしよう、と思いました。
イベント二日目に攻めてくるリスセフは各方向4体ずつ。
数が少ないため、どこもすぐに戦闘が終了して、私も初めて「2nd stage clear」の文字を拝むことができました。
前日に私はコエちゃんのことを気に掛けようと決めていたのですが、コエちゃんの方が私のことをよく見ているようでした。
リスセフ退治に行った時もずっと視線を感じていて……。
見られていると感じる方に顔を向けると、コエちゃんが慌てた様子で走り去っていく、という光景を目の当たりにしました。
……これ、どういうことなのでしょう?
イベント三日目に攻めてくるリスセフは各方向16体ずつ。
この数にも私たちは問題なく対処することができました。
十秒ほどで「3rd stage clear」です。
(クロ姉が、土日はどうしても来ることができない、ということでイベントの三日目と四日目はカラメルがクロ姉と一緒に南側を守ることになっていたキリさんのお手伝いに行っています)
この日も私はコエちゃんに見られていました。
観察されていると言ってもいいほどに、じーっと、です。
それでいて振り向くと逃げて行ってしまうため、私は首を傾げることしかできませんでした。
村で会っても避けられてしまうため、お話しすることもできず……。
うーん……?
イベント四日目。
攻めてくるリスセフは各方向64体ずつ、と少し難易度が高くなります。
私は四体ほど投げたら終わったので十秒もかかっていなかったのですが、マーチちゃんとススキさんとパインくんの西側組と、南側のキリさんは少し苦戦したみたいでした。
キリさんのところはカラメルが大きくなって壁になってくれたようなので村に被害が及ぶことはなく、64体という数を倒すのに時間がかかっていただけみたいです。
しかし、マーチちゃんたちのところは、何体かに村への接近を許してしまって危うく外壁を攻撃されかけた、とのこと。
いきなり増えましたもんね……。
対応できなくなるのも仕方のないことだと思います。
これ、他のギルドの皆さんはどうやって対処しているのでしょうか?
……気になります。
五日目にはクロ姉が戻ってくるのでマーチちゃんたちのところにカラメルをサポートにつけようか? と提案しましたが、気持ちだけ受け取られました。
その時のマーチちゃんとススキさんの様子は、闘争心に火が点いたようで近寄りにくいオーラを醸し出していました。
ちなみにこの日、私は視線を感じませんでしたが、その代わりにライザが感じていたそうです。
コエちゃんの姿も確認しているとのことで……。
コエちゃんの目的は……?
イベント五日目。
攻めてくるリスセフの数は各方向256体ずつ。
……多いです。
私は攻撃、素早さ、器用さを上げているので対処することができていますが、みんなは大丈夫かな? とちょっと思ってしまいます。
……あっ、カラメルは戻ってきていて、定位置にいます。
ちょうど私の周りには敵がいなくなった時でした。
――チュドォオオオオオオオオンッ!
「ひゃわああああ!?」
ば、爆発……!?
ものすごい音がして慌てて辺りを確認してみると、西の方に大きな大きなきのこの形をした雲がモクモクと立ち込めていました。
西というとマーチちゃんたちがいる方向……!
私は気が気でなくなって急いでその雲が発生した場所に向かいました。
(北側から離れる前にリスセフが残っていないかをざっとですが一応確認しています)
西側に着くと、その先は一面焼け野原になっていて……。
血の気が引きそうになりましたが、三つの影が確認できて、それがマーチちゃんたちのものだとわかったため、私はホッとしました。
「だ、大丈夫!? すごい音がしたけど……!」
近くにいたマーチちゃんとパインくんの元に駆け寄りながら聞くと、パインくんが答えてくれます。
「あっ! す、すみません! 驚かせてしまって……! さっきの、ススキちゃんのスキルです……っ!」
「……あっ」
パインくんに言われてハッとしました。
――ススキさんにはスキル『大爆発』があったことを。
『大爆発』――使用者のHPが「0」になる代わりに、周りに強大なダメージを与えるスキル……。
それを使ったとなると、ススキさんは一からのやり直しになってしまう、ということになりますが……、
「……ふふふ。あははははっ! 見てください! 灰燼に帰してやりました! いい気味です!」
少し離れたところにいたススキさんはピンピンしているように見受けられました。
高笑いしてる……。
……恐らくですが、『大爆発』にも私がつくって渡していた復活薬が有効だったのでしょう。
それと、ススキさんがこんな感じになってしまっている理由ですが、
「……昨日、防衛ラインを突破したリスセフにドヤられたのを根に持ってるの」
と、マーチちゃんに教えてもらいました。
あー……。
だから昨日、「4th stage clear」をしたあと、近寄りがたい雰囲気になっていたんですね……。
……納得です。
ちなみに、ススキさんの『大爆発』に村やマーチちゃんたちが巻き込まれなかったのは、パインくんが『堅牢優美の障壁』で守ったからです。
……パインくん、お疲れさまです。
兎に角、「5th stage clear」です。
あと、この日はマーチちゃんたちの近くにコエちゃんの姿がありました。
爆発を見て、腰を抜かしてしまっていました。
(私が家までおんぶして帰りましたが、お話はできそうにない状態で……)
イベント六日目。
リスセフ1,024体が相手です。
……もう、これ、どうやって村への侵入を防ぐの? ってレベルです。
私はステータスを上げに上げているので数分で片づけられたのですが……。
ライザたちのところは、ライザが敵の弱点をついて後退させたり怯ませたりしたその間にサクラさんが仕留めるという戦法で対処していたそうです。
マーチちゃんたちのところは、今日も爆発音が響いていました。
(ススキさんのスキルであらかた倒し、パインくんのスキルで村を守り、マーチちゃんが残ったリスセフをスリングショットで射貫いていたとのこと)
クロ姉たちのところは、私と似たステータスを有しているクロ姉が二つのハンマーを使って敵を薙ぎ払っていて、キリさんはもしもの時のために待機していたのだとか。
ちなみに、この日はクロ姉たちのところにコエちゃんは現れたみたいです。
……うーん。
何がしたいのかな、コエちゃん……。
「6th stage clear」して、イベント最終日。
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