第177話(第五章第11話) リベンジ2
壁に衝突して私の身体は止まりました。
「い、痛……っ!」
ふらついてしまいます。
もしかしてかなりやばい状態なのでは!? と思って慌ててHPを確認してみると、
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HP:1,703/1,704
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……おおう。
思ったよりも平気でした。
凄まじい衝撃だったので思わず、痛い! って言っちゃいましたけど、受けたダメージは「1」……。
この結果は、威力がそれほどではない攻撃だった、というわけではなく、防御力を上げていた賜物だったのは疑いようがありません。
防御バフポーション様様です。
(今の私の防御力は37億以上ありましたから)
ステータスを表示するモニターから虹色プディンへと視線を戻すと、彼はまた身体の一部を切り離して打ち出そうとしていました。
その数、六個。
まるで回転式拳銃のシリンダーに弾を装填するように。
けれど拳銃とは違い、彼はその全ての弾を同時に私目がけて射てきました。
私に向かってくる六つの弾。
……ほんと、遠距離攻撃ができるのって羨ましいです。
私は武器が持てなければ投げることしかできないので。
私が遠くから攻撃してくる相手を対処するには次のようにするしかないので、本当に羨ましいです。
私は迫ってくる敵の射撃を直前で躱しました。
それから彼に急接近。
そのまま彼を掴んで壁があるところまで移動します。
彼は私の動きに反応することができていませんでした。
素早さは600万ある私の方が今の段階では上のようです。
壁の近くまで行った私はそこでぐるぐると回り始めました。
虹色プディンが一番外側(私が回転した時にできる円の弧)の部分にくるようにしているので、回るたびに彼だけが壁に何度もぶつかります。
高速で回転しているためHP継続回復が間に合わず、どんどん黒くなっていく相手のHPゲージ。
虹色プディンは最初、驚いて戸惑うばかりだったので、私はこのまま削りきろうとしていたのですが、このままではよくないと悟ったのでしょう。
自分の欠片を弾にして私に発射してきたのです。
「うぐっ!?」
その衝撃に耐えられなくて、私は掴んでいた手を放し、虹色プディンをぶつけていたものとは反対側の壁まで吹っ飛ばされてしまいました。
ダメージこそ「1」だったものの……。
私と距離を取った虹色プディンが七色の光をさらに強くしようとしているのが目に見えました。
――バフの重ね掛け
積まれると手に負えなくなる!
そう直感した私は動いていました。
たぶん、いつもよりも速いスピードが出ていたと思います。
私はその場で虹色プディンに向けてあるものを使いました。
投擲の飛距離に影響する攻撃力と、命中に影響する器用さが高かったため、それは虹色プディンに掛かります。
私が使ったもの、それは……
――完全ステータスデバフポーション
これは
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完全ステータスデバフポーション(ULT・Rank:MAX)
……対象の攻撃、防御、素早さ、器用さを「1」にする。
デバフ耐性及びデバフ無効を無視する。
使用された対象はバフ・デバフがかからなくなる(上書きができなくなる)。
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……明らかに「ヤバイモノ」です。
このゲームを始めたころはゴリポ……こほん、攻撃パフポーションをヤバイモノと呼んでいましたが、その比ではありません。
ステータスの強制低下、特殊効果『状態異常無効』の無視、バフによるステータス復元不可……。
……こんな劇物、よくつくれたものだと思います。
(つくる工程もおかしく、「134,217,728」とかいうMPを必要とされましたが)
(MP回復ポーションの品質を高めてそれを飲めばつくれてしまった、という……)
あまり頼りたくはなかったのですが、あのままバフを積まれていたら私は間違いなく死んでいました。
逃げることも許されず……。
そんな気がします。
死ぬのは論外であるため、そうなるくらいなら使うべきでしょう。
ヤバイモノを掛けられた虹色プディンは、私に攻撃されたと思ったのか、反撃を試みてきました。
また欠片の弾を飛ばしてきます。
……しかし、
――ふよふよ……ぽとっ
数十メートル(端と端にいたので大分離れていて、たぶん二、三十メートルくらい)離れた私に届くことなく、むしろだいぶ手前の方でそれはぽとりと落ちました。
「……」
「……」
これには、いったい何をされてこうなったのかわからないといった様子の虹色プディンだけでなく、ヤバイモノを使った本人である私も唖然としていました。
戦闘中だったのですが、少しの間、異様な静けさに包まれていました。
先に我に返ったのは虹色プディンの方でした。
やばい、と判断したのでしょう。
自身に虹色のオーラを纏わせようとします。
ですが、一瞬で消える虹色のオーラ。
「バフによるステータス復元不可」の効果がしっかりと発揮されていました。
それでも何度も、何度も焦ったように自分にバフを掛けようとする虹色プディン。
そんな彼の姿に、ちょっとだけ心が痛みました。
自分にバフを掛けるのは無理だと悟ったのか、今度は私を狙うことにしたようです。
ただ……。
『全ステータスデバフをレジストしました』
私の状態は「全デバフ無効(上書き不可)」であるため、効きません。
私にデバフを掛けるのは無理だと理解した虹色プディンはいよいよ最終手段に打って出ました。
――『特殊効果無効化魔法使用可』
それは特殊効果が発動しなくなる、という魔法でした。
私のステータスが高いことや、デバフが効かないことが装備の特殊効果によるものと考えたのでしょうか?
それとも、彼はスキルの方を無効にする術は持っていないみたいですので、私が強くなっているのは装備の特殊効果によるもの、という一縷の望みに賭けたのでしょうか?
ですが、
『レジストしました』
その魔法はクロ姉が装備の調整をしてくれた時に付与してくれた『スキルや装備の特殊効果の発動妨害無効及びスキルや装備の特殊効果自体の消滅無効』の特殊効果のおかげで効きません。
それ以前に、私のステータスが強くなっていたりデバフに掛からないのは装備の特殊効果のおかげではないため、「特殊効果無効化魔法」を受けていたとしても意味はありませんでしたが。
万策尽きた様子の虹色プディン。
地面に手をついて項垂れているように私には見えました。
(彼に手はありませんが)
なのでせめて、楽に逝かせてあげよう、と思って、猛毒薬(ULT・猛毒無効無視)を取り出して近づいて行ったところ……。
「りゅ~、りゅ~……っ!」
虹色プディンが何かを訴えるような目で私を見てきました。
(彼に目はないのでそういうふうに私には見えた、というだけですが)
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