第176話(第五章第10話) リベンジ1
あれから二日が経って、ギルドイベントが始まる前日。
私は「スクオスの天空城」、その10階に来ていました。
というのも……。
みんなでギルドイベント対策会議をしたあと、私はポーションづくりに勤しんでいました。
マーチちゃんはススキさんとパインくんの二人と戦術の話をしていて、ライザはサクラさんとキリさんに戦い方のアドバイスをしていました。
夕方(現実)になってアルバイトを終えたクロ姉がやってきて、私からクロ姉に、みんなで会議をして決まったことを伝えました。
クロ姉はそれからすぐに装備の調整に取りかかっていました。
その翌日の火曜日は、みんなは守る場所が同じメンバーで集まって訓練場に向かっています。
息を合わせるために。
私はというと、今度のイベントでは単独であるため、どう動くか、を決めておく必要がなく、それにもしもの時にみんなを守るためのポーションをつくる役目を請け負っていましたから、ギルドハウスに一人残ってポーションの改良を行っていました。
最近はいつも誰かが傍にいたため、一人は静かで、ちょっと寂しかったです。
(ちなみに、みんな学生や生徒、児童で夏休みの期間中だったため、宿題をする時間が設けられていました)
(その時はみんな一緒で楽しかったのですが、楽しかったからこそ余計にそう感じたのかもしれません)
火曜日の午後(現実)にはポーションづくりは終わっていて、訓練場にいるみんなの様子を見に行きました。
ただ、私は見ているだけでアドバイスができるわけではなく……。
何かみんなのためにできることはないかな? と考えた時にふと思いつきました。
そうだ、レベルを上げよう! と。
レベルを上げればステータスが上がるので、より良いパフォーマンスが出せるようになるはずです。
このゲームは、パーティを組んでいれば味方がどこにいたとしても獲得した経験値は自動的に分散されるので、一人の私がレベル上げをして、連携の確認をする必要がある彼女たちは訓練場で練習をする――それが効率的なのではないでしょうか?
妙案だと思いました。
それを思いついたのがもうそろそろゲームをやめなければいけない時間だったため、翌日から取りかかろう! と決意して……。
今に至ります。
先ほど、前回同様にビリヤードのようにしてスクオス40体を倒しました。
前よりも強く投げたら巻き添えの連鎖が続いて、一体投げただけで全てのスクオスにぶつかったらしく、一斉に消滅しました。
……器用さって高くなると半端ないです。
と、兎に角、ここからが今日の本命!
隠し部屋に湧くプディンたちとの戦いです!
今日はマーチちゃんがいないので「砂時計」は持ってくることができていませんが、それでもある程度は経験値を稼げるはず……!
私は意気込んで下り階段の裏側の壁をすり抜けていきました。
……………………
「やああああっ!」
――パァアアアアアアアアンッ!
二回目の四体の
今のレベルは385になっています。
やはり「砂時計」がないとレベルが上がりにくくなっていると感じますね……。
そもそもレベルが高くなるほどレベルアップまでに必要となる経験値が増えるので成長速度が緩やかになるということもあると思いますが……。
……さて。
これからどうしましょうか?
私は隠し部屋で105回の戦闘をこなしました。
106回目、次はいよいよ「あれ」が出てくるはずです。
虹色プディン――
私が二度も逃げ帰った相手……。
彼との戦闘は避けて19階に行き、オートマと戦ってレベル上げを続けるというのも手です。
ですが……。
「……今の私なら……」
思ったのです。
倒せないまでも、善戦することはできるのではないか? と。
一矢報いたい。
その思いが私の中で強くなっていきました。
11階に上がって、ステータス、アイテム、装備の確認をして。
私は再び隠し部屋へと赴きました。
そこにいました。
七色に輝く虹色のプディンが。
前にライザに教えてもらっていました。
========
名前:虹色プディン レベル:64
HP:16,394/16,394
MP:49,162/49,162
攻撃:8,122
防御:40,970
素早さ:8,122
器用さ:40,970
========
これがステータスとのこと。
ただし、彼は『全ステータスバフ上限撤廃』と『全ステータスバフ魔法使用可』の特殊効果を持っているため、実際にはもっと高い数値であると考えるべきです。
『HP・MP継続回復』も持っているため、体力も数値以上……。
MPを使った攻撃や補助は使用回数の上限がないものと見た方がいいかもしれません。
『状態異常無効』と『デバフ無効』でこちらからは状態異常にすることもデバフを掛けることもできず、反対に相手は『全ステータスデバフ魔法使用可』と『ステータス変化上書き可』でこちらの弱体化を狙ってくる……。
……こちらを状態異常にする攻撃をしてこないことだけが救いでしょうか。
私はその姿を捉えるなり、瞬時に距離を詰めました。
そして、掴んで思いっきり投げ飛ばします。
彼はバフを自分に掛けてステータスを上げられるので、その暇を与えてはいけないと判断したため。
しかし、私が選択した攻撃手段がよくなかったのかもしれません。
相手のHPを十分の一も削れていませんでした。
彼の七色の光が強さを増しているのが私の目に捉えられます。
――投げられてダメージを受ける前にバフを掛けさせてしまっていた……!
攻撃をしてからダメージを受けるまでにタイムラグがあって、その間に相手の行動を許してしまっていたのです。
投げ技ではなく、打撃で攻めていれば……!
後悔している間に僅かに削ったHPも『HP・MP継続回復』で回復されて……!
それを見て、私はとっさに判断しました。
連続で攻撃しなければいけない! 回復が追いつかないくらいに! と。
そうして攻めようとした矢先のこと。
予想もしていなかった事態に私の足は止まりました。
――彼が、身体の一部を切り離して、私に向けてそれを射出してきたのです。
何、それ!?
そんなことができたなんて……!
「かは……っ!?」
反応が遅れた私はその攻撃をもろに受け、後方に吹き飛ばされてしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます