第167話(第五章第1話) 最高級のギルドハウス
七月十五日、土曜日。
期末テストを無事に終えた私は、約三週間ぶりに「ギフテッド・オンライン」をプレイできます。
しかも明日からは夏休み!
いっぱい遊べそうです!
(ちなみに、私の順位は7位でした)
夏休み前最後の学校を終えて、帰宅して、お母さんと少しお話をしてから「ギフテッド・オンライン」の世界へ。
……………………
ログインすると、私たちが建てたギルドハウスが出迎えてくれました。
私がテスト前にできた最後の一日(六月二十五日・日曜日)で、第五層の最南端の島に完成させた最高級のギルドハウス。
建てるだけなら二十四日に建てられていたのですが、そこからいろいろとアップグレードをしていたため完成したのは二十五日でした。
ギルドハウスはお金をかければかけるほど進化する建物だったのです。
ギルドハウスに備わっているものは、安全地帯、自動回復力の促進、倉庫機能、生産・販売スペースの四つ。
安全地帯は、追加で4億Gを払うごとに一段階、そのエリアが拡大されました。
最大で三段階上げることができ、私たちはそこまで上げています。
すると、ギルドハウスから半径四キロメートルを安全地帯にすることができました。
(範囲内に「アホクビの宝船」ダンジョンが含まれていますが、ダンジョンは別空間のようでその中だけは安全地帯にすることはできませんでしたが)
自動回復力の促進は、追加で16億Gを払うごとに一段階、回復量が上昇するようです。
こちらも最大で三段階上げることが可能で、最大まで上げています。
HPは五分ごとに、MPは三十分ごとに「256」ずつ回復できるようになっているそうです。
(誰もHPとMPが減っていなかったので確認することはできていませんが……)
倉庫機能は、追加で64億Gを払うごとに一段階、収納量が増やせました。
上述の二つのものと同様、三段階上げられ、もちろん上げました。
25,600個のアイテムを収納できるようになっています。
そして、私たち生産職の作業スペース!
追加で256億Gを払うごとに一段階アップグレードして、生産で得をするようにできるとのこと。
アップグレードをしていなかったら、ただお店を開けるだけのようですが(バイト先に手数料を引かれることはなくなりますが)、
一段階アップで、商人がプレイヤーから買い取ったことがあるものは
「運営」から
「謎の」アイテムから戻したアイテムが
品質の高いものになりやすくなる。
二段階アップで、性能のいい武器・防具がつくれる確率が上昇する。
装備を強化する時、一回で二回分強化できることがある。
スキルスロットの多い装備をつくれたり、
追加効果を付与する際にその追加効果の性能が上がる。
また、使用した素材アイテムが消費されないことがある。
三段階アップで、薬品アイテムをつくった時に品質が一つ上がる。
有効時間と使用期限が延びる。
また、使用した素材アイテムが消費されないことがある。
という恩恵を受けられるのだとか。
ギルドハウスの中でつくらないとこれらの効果は得られないそうですが、その効果は決して小さくないと思います。
1,276億Gというよくわからない金額になってしまいましたが。
あと、マーチちゃんがそのお金をポンッと出したことにサクラさんたちが引いていました。
(実は270億ほど足らなかったのですが、『ポケットの中のビスケット』で高品質の魔石を増やしてすぐに稼いでいました)
そんな私たちの新しいお家に入ってみると、まずあるのは広いエントランス。
……豪華すぎて落ち着けるか心配です。
私は見渡してみました。
ですが、そこには誰もいないみたいです。
「……あれ? みんなは?」
首を傾げる私。
……あっ、そういえば、メニュー画面でパーティメンバーだけでなく、ギルドをつくったことでギルドメンバーのおおよその位置もわかるようになったんですよね。
それを試してみようとした時、奥の部屋からマーチちゃんが出てきました。
(ギルドハウスにはメンバーに加えることができる16人分の部屋が用意されています)
「あっ、マーチちゃん! ただいま! 戻ってきたよ――」
「あっ! お姉さん! 久しぶりなの! テスト、おつかれさまなの!」
私を見つけるとぱあっと表情を輝かせて、駆け寄ってきて抱きついてくるマーチちゃん。
……可愛いです。
「うん。お久しぶり、マーチちゃん。なんとか無事に終わったよ」
「よかったの! ……あっ! お姉さんが帰ってきたこと、みんなに知らせるの!」
私はマーチちゃんを抱きとめて、再会を喜び合いました。
しばらくしてマーチちゃんが、私がこっちに来ていることをみんなに伝えようと、送るメッセージの文章をつくり始めました。
それを見て、私はマーチちゃんに尋ねました。
「そういえば、ライザさんたちは? まだログインしてないとか?」
「もうみんな来てるの。クロは部屋で装備を強化してる。ライザは……
――サクラたちを連れてブートキャンプに行ってるの……」
「……え?」
ブートキャンプって新兵訓練施設のことですよね?
そんな施設、このゲームにあるんですか?
私がそんな疑問を抱いていると、表情に出ていたのでしょう。
マーチちゃんが説明してくれました。
「施設はないの。……ライザがサクラたちをしごいてる、ってだけで」
「……え? 何してるの、ライザさん……」
「サクラたちのレベルがボクたちのレベルとかけ離れてるのが気になるみたいなの。ギルドイベントでは連携が大事になるから、強さはできるだけ
「な、なるほど……」
要するに、次のイベントを見据えてサクラさんたちを鍛えている、ということらしいです。
前回もそうだったと思いますが、ライザのイベントにかける熱量がすごい気がします……。
私、イベントではあまり活躍できていませんから、ちょっとだけ苦手意識があったりします。
今度のイベントは大丈夫でしょうか……。
次のイベントはギルドイベントということで、サクラさんたちと一緒に挑むことになりますからミスをすると彼女たちにも迷惑をかけてしまうことになりますよね……。
そんなことになってしまったら申し訳なさすぎるのですが……。
私がそんなことを考えている間に、マーチちゃんはライザにメッセージを送っていて。
ライザからの返信があったようです。
「あっ、もう帰ってくるって」
「そうなの――」
「あっ、セツ! ようやく帰ってきたんですね!? もう、待ちくたびれましたよ!」
「――って、早っ!?」
マーチちゃんからその報告があって、ライザたちが帰ってきたのはすぐでした。
なんでも、「踏破者の証」は自分が所属しているギルドのギルドハウスがある地点に転移することが可能だったみたいで……。
それを知らなかった私は大変驚かされました。
その感情が引く前に、ライザは言ってきます。
「早速、次のイベントの準備を始めますよ?」
と。
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