第158話(第四章第31話) 変態どもの夢のあと1
~~~~ サクラ視点 ~~~~
え……っ。
何? これ……?
わけがわからなかった。
女の子が七人くらいいて、その中に
――パインちゃんたちがいたんだから(パインちゃんは男の子だけど……)。
パインちゃんたちも男の人に抱きついてる……。
な、何してるの……!?
……ダメ。
あたしの頭じゃ、理解が追いつかない……。
あたしは固まってしまっていた。
あたしが呆然と立ち尽くしていると、女の子たち(パインちゃん含む)に囲まれている男が込み上げてくる笑いを抑えきれないといった感じで言葉を漏らし始めた。
「……くくくっ。いやー、最高だぜ! これだけの女に囲まれるなんて体験、リアルじゃなかなかできねぇからな! ギフテッド・オンライン最高! スキル万歳!」
何について言っているのかは要領を得なかったけど……。
あの人の持ってるスキルがこの状況に関係してるってことだけはわかった。
(あたしは
(あの男の人が向いてる方向も違ってたし……)
ただ、どのように関係してるのかはさっぱりだった。
あの人のスキルがすごくいい性能なのかしら……?
だから、パインちゃんたちも頼ろうとしてる、とか……?
……うーん。
パインちゃんたちはライザさんたちを頼ってたから、あの人に頼らなくてもいいような……?
それに、本当に頼りになるスキルを持ってるなら、男の人も頼ってきそうなものだけど、そこには女の子(パインちゃんは男の子だけど)しかいない……。
本当に謎……。
どうしたらこの状況の説明ができるのか、を必死に考えたけれど、答えは出なかった。
やっぱりあたしは、立ち尽くすことしかできなかった。
しばらくして、男の人のものではない声が聞こえてくる。
「……っ! おい! オレたちにまでそのスキル使うなって! 男に抱きつくなんて、おええええ! 気持ちワリィ!」
突如、男の周りにいた一人の女性が目を見開いて、急いで男の人から距離を取った。
……その女性はなんというか、男性ウケがよさそうな感じ。
大きい目とか、小さめの鼻とか、ふっくらした唇とか、長めのツインテールとか……。
あと、お腹は引き締まってるのに、胸やお尻は大きい……。
女性は自分の身体を擦りながら男の人を睨みつけた。
彼女の言葉遣いには違和感を覚えたけど……。
「わりぃ、わりぃ。でも、いい気分だったぜ? ハーレム王って感じでよ。
――お前も男だったんだからわかるだろ?」
……え。
……はぁ!?
衝撃の言葉だった。
男!?
あの可愛らしい人が!?
パインちゃんも可愛らしい男の子だけど、そういうレベルの話じゃない……!
おかしいでしょ!?
男だっていうなら、あの胸は!?
誰か説明して! って思ってたら、その思いが通じたのか、男と言われた女性が説明してくれた。
「そう言うんならお前もわかれよ。お前、男に抱きつきたいと思うか?」
「……いんや、死んでもご免だな」
「だろ? そういうことだ。男とイチャイチャするために『肉体改造』のスキルを取ったんじゃねぇんだよ。オレは女になって、女の子とイチャイチャするためにこのスキルを取ったんだ。百合こそが至高で高潔! それ以外は最低で不純だ、バカ野郎!」
「……俺、百合の良さがわかんねぇから、お前が何言ってんのかさっぱりだわ」
……そっか、スキル!
それで女性に……。
性別を変える、なんていうスキルもつくれたのね……。
っていうか、ほんと、なんでもアリね、このゲーム……。
あと、『肉体改造』してる人の発想には引いていた。
動機が不純なのだから、それはもう……。
男の人たちの会話は続いた。
「俺はやっぱり男の状態で女とやりてぇわ。なのに、なんでこのゲーム、やることはおろか、脱がすこともできないんだよ!」
「……よかった、これ、18禁じゃなくて。18禁だったらオレ、今ごろどうなってたことか。想像もしたくない……」
「折角『洗脳』のスキル取ったのに――」
――ッ!?
ちょ、ちょっと待って!
今、『洗脳』って言った!?
それって――!
「これじゃ……意味……! 女の方から抱きつかせることはできても、こっちからはアウト……!」
「……心を許してる相手なら問題ない、って……。……『
「……チクショウ!」
何か話してたけど、そんなの気に留めてる場合じゃなかった。
いてもたってもいられなくなって。
「ススキちゃ――」
あたしはススキちゃん、キリちゃん、パインちゃんの元に向かおうとした。
――あの子たちが操られている、そんなことを聞かされて黙っていられるわけないじゃない……!
どうすればいいのかなんてちっともわからなかったけど、彼女たちを元に戻したくて、必死だった。
けれど、あたしの声と足は、止められることになる。
キリちゃんが動き出したことによって。
最初は、正気を取り戻してくれたの!? って思って、ホッとしたかけた。
けど、この展開は決していい方向へ転がってなんていなかったんだ……。
「私はいいスキルだと思いますけどね。実際、私はやりやすくなってますから」
彼女の口から出てきた言葉が、彼女のものとは思えないものだったから。
~~~~ セツ視点 ~~~~
「さあさあ! 始めようか、死闘を! 生産職のパーティとはいえここまで来れてるんだ! ちょっとは楽しませてくれよ!?」
禍々しい鎌を構える彼女(?)は歪なまでに表情を歪ませました。
喜んでいる……のでしょうが、笑顔が不気味です……。
私がその顔に怯んでいると、マーチちゃんが私たちに立案します。
「お姉さんが左、クロが右から攻めて、ライザがボクを背負って行けば――」
しかし、それは最後まで話させてはもらえませんでした。
止められたからです。
――ライザに。
「いいえ、マーチ。ダメです。帰りますよ? セツとクロもいいですね? というか、異論は認めません。何がなんでも連れて帰ります」
「ら、ライザさん……!?」
有無を言わさず自分の意見を押し通そうとするライザ。
仲間になってから、どこか私たちの表情を窺うことが多かった彼女にしては珍しい行動です。
提案することは多かったけれど、ここまで勝手に決めてしまうなんて……。
……でも。
この行動にもきっと意味があるはずです。
だから私は、ライザの意見を聞きました。
「マーチちゃん、帰ろう。私もそうした方がいい気がする」
「お姉さん……」
マーチちゃんを説得して、私たちの次の行動が決まったところで、あの人が話しかけてきました。
「作戦は決まったかい? 何をするのか、楽しみだねぇ!」
ライザが対応します。
その間に私たちは「帰還の笛」を取り出しました。
「この戦闘狂が……っ。ええ、決まりましたよ? 指定しただけで対象を消滅させられる『シニガミ』さん」
「なっ!? なんで僕の名前を――」
「今です!」
ライザの指示で私たちはアイテムを使用。
「ツルツルの街」に逃げ帰りました。
~~~~ シニガミ視点 ~~~~
「嘘!? 帰還!?」
忽然と姿を消した四人。
僕は愕然とした。
あれは絶対『ファーマー』だ!
どうして生産職だけでここまで来れたのか、知りたかったのに……!
「絶対に戦わなくちゃいけない状況をつくり出したらその一端が見えると思ったんだけど、やり方を間違えたかなぁ……」
あーあ!
『ファーマー』の強さ、知りたかったなぁ!
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