第151話(第四章第24話) 花鳥風月3
私はサクラさんを引き止めるとこに失敗して、これからどうすればいいのかを判断することが瞬時にはできなくなっていました。
この空間にはまだ多くのリスセフたちが残っていましたが、彼らは何故か攻めてこなかったので私は完全に棒立ちの状態です。
その状態を解除してくれたのは私がこの部屋に入ってきた方から響いてきた轟音でした。
――バコォオオオオンッ!
音がした方を見ると、ハンマーを振り下ろした体勢のクロ姉の姿が目に映ります。
私が入ったことでモンスターハウスに通じる
兎も角。
クロ姉の後ろにいたパインくんを視界に捉えた時、私はするべきことを思いつきました。
「ご、ごめん! サクラさん、引き止められなかった……! 『帰還の羽根』を使われちゃって……! すぐに追った方がいいよね!? このままなのはよくない気がするし……! パインくんって街まで帰るアイテム、持って――」
サクラさんを追い駆ける――。
そうしなければいけない、と私は思ったのですが、
「待ってください、セツ! あいつ、
「え……っ」
ライザにそれが最善手ではないことを教えられます。
彼女のスキルは優れているなんていうレベルではないほどに高すぎるスペックを持っていますから、サクラさんがログインしているかログアウトしているのかもわかるのでしょう。
ライザがそう言うのだから、今から街まで帰還してもサクラさんと話をすることは叶わない、と考えるべきです。
私はまた呆然としてしまいそうになりました。
私たちとはゲームの世界で会わない、という選択をしたサクラさん。
今回のように私たちを見かけた途端にログアウトをされてしまうとしたら、打つ手がないような気がしてならなくなって……。
……けれど。
「何しょげてんですか、セツ? 今街に戻ったところであいつを捕らえることはできません。それは確かですが、あいつが何をしたいかはわかりきってるじゃねぇですか。わーたちはそこにいればいいんですよ。というわけで、セツ。早くこっちに来てください」
ライザには名案が浮かんでいるようで。
……こういう時、本当に頼りになりますね、この人は。
パインくんたちとサクラさんの関係をぎくしゃくさせてしまった要因もこの人にあるのですが……。
私は急いで彼女たちの元に戻りました。
ライザがパインくんに、ススキさんやキリさんと連絡を取るように頼んで、二人と繋がって、ライザの声が二人に聞こえるようにパインくんが設定したのを確認すると、言いました。
「サクラと会いました。ですが、話は聞いてもらえませんでした。なので、わーたちはこれから
――8階エリアボス前の間で待機します!」
と。
~~~~ クロ視点 ~~~~
ライザの案で私たちはエリアボス前の間に移動した。
それから、最低でも誰か一人がこの場所にいる、ということになった。
ずっとは無理だから時間ごとに交代、って形で。
ただ、みんな子どもだった。
だから、私が一人で夜を担当することになった。
(ちなみに、セツちゃんとパインって子とキリって子が中学生、マーチちゃんが小学生、ライザとススキって子が高校生みたい)
……………………
④の8時から16時まではセツちゃんとライザがいてくれて、二人から引き継ぐ。
セツちゃんたちがそこにいてくれている間に、私は現実でご飯とかお風呂を済ませた。
あと、ゲーム内でちょっと仮眠した。
セツちゃんたちが帰って行って。
これから翌日の①の20時までが私の担当。
(余談だけど、パイン、キリ、ススキって子たちが④の0時から8時を担当)
(小学生に無理はさせられないってことでマーチちゃんは除外されてた)
まさかの28時間拘束。
他の人たちより20時間も多い……。
これ、何ハラ?
……でも、仕方ない。
私は大人だし……。
それに、明日の①20時になったらセツちゃんが来てくれるという。
……頑張ろう。
それにしても暇。
この長い時間、どうやって潰そうか考えて、私は大学のレポートを書く時間に充てた。
レポートを作成していると、何度も見られている感じを受けた。
……それもそうか。
こんなところで課題をやっていれば嫌でも目立つ。
現実では夜中だから、あまり人は来なかったけど……。
私はあまり気にしないようにしながら、レポートを仕上げた。
完了。
終わった課題を大学で使ってるタブレットに送る。
他のことをやっていたけど、一応、周りは気にしていた。
見逃したら、セツちゃんの頑張りを無駄にしちゃう。
それはよくないから。
……。
手持無沙汰。
何もすることがなくなると、どうしても思う。
ライザの予想、当たるの? って。
夜はプレイする人間が相対的に減る。
この行為って無意味なんじゃ? そんな気がしてきた時だった。
一人のプレイヤーが上ってきた。
袴姿で、折り返して括っているポニーテールのような髪型。
割と高めの身長(百七十センチくらい)。
それは、
――モンスターハウスで見た女性だった。
顔はわからないけど、あの装備は売られているものじゃない。
だから、高確率でその人。
私は、私を一瞥してから扉の方へと向かって行っていた人に近づいて行った。
「……サクラ、で合ってる?」
「ん? そうだが……。何故、私のことを知っている……?」
確認する。
すると、そうだ、って返ってきた。
……嘘。
当たった……っ。
ライザの予想。
――「サクラはわーたちがいねぇ時間を狙って第二層のエリアボスに挑みに来るはずです」
なんでわかったの、ライザ? 予知能力者?
……って、考えてる場合じゃなかった。
サクラ、これ、たぶん、私のこと訝しんでる。
私は答えた。
「モンスターハウスでも見てたはずだけど……。見えてなかった? 私はクロ。セツちゃんのパーティの一員」
「セツ? 誰だ? ……ん? モンスターハウス――っ!? まさか貴様、あいつの……っ! どうしてこんな時間に……! まさか、自分の妨害が目的か!?」
私がどの立場にいるのかがわかるとサクラの口調が荒々しくなる。
……なんでそんなに嫌悪感を剥き出しにするの?
何があったのか、私はちょっと知りたくなった。
「……なんでそんなに嫌ってるの? 私は知らない。何があったの?」
そう聞くと、サクラは思い出したように言った。
「……そう言えば、あの時貴様はいなかったな。なら、聞かせてやろう。そして、あのパーティにいてもいいのかを真剣に考えるんだな」
サクラは語り始めた。
私は、ライザの過ちを教えられることになる。
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