第148話(第四章第21話) 二回目のお宝探し3
「やっと終わったのぉ……!」
「リスセフ遺跡」5階東側。
最後のお宝『4Expドリンク』をゲットして、私たちはその場にへたり込みました(マーチちゃんはお宝を手にする前から座り込んでしまっていて、ライザは私とクロ姉が立っていられなくなったあとも崩れ落ちることなく立てていました)。
というのも……。
『リスセフ遺跡 5階東側・6階にある聖水の祠の裏から行く』――
ヒントにはそう書かれていたため、私たちは6階へと向かいました。
私、マーチちゃん、クロ姉の三人は首を傾げながら。
何故なら、
――「リスセフ遺跡」の6階で聖水の祠を見たことがなかったからです。
このダンジョンに聖水の祠は、ないことはないのです。
ですが、それがあるのは4階。
この時点で「リスセフ遺跡」のお宝探しは難航しそうな気配がしてきていました。
それでも、ヒントとして書かれていることが間違っているとは考えにくいので、私たちの探し方が悪かったのだろう、ということで納得しました。
このダンジョンは迷路のような造りになっているため、フロア全体を巡っているとは言いきれなかったので。
ということで、私たちは6階にあるという聖水の祠を探し回りました。
ちなみに、まだ答えを言わないで、とお願いされていたライザがすごくもどかしそうにして、目を瞑って上を向きながら耐えていたのが印象的でした。
迷路を攻略するのに適しているという右手法を試してみた私たち。
(壁に手をつきながら移動しているので、壁に見せかけている幻があった場合にも有効な手段のはずです)
今までに行ったことのないところにも足を運んだはずですが、聖水の祠は見つけられないまま下り階段と上り階段の間を行ったり来たりしてしまいます。
それなら、と考え方を変えました。
「スクオスの森」の2階やこのダンジョンの特殊な8階にある聖水、または神聖水の祠は同じ形をしていました(色は異なっていましたが)。
だから見れば聖水の祠だとわかる、と思っていたのですが、ここまで見つけられないとなると一目では聖水の祠だとわからないようにされているのではないか? 例えば、すごく小さくなっていたり、背景と同化していたり……、そんな可能性も考慮したのです。
私たちは絶対に見落とさないようにじっくりと見て回りました。
……ですが。
「何もないの……っ」
「……頭痛い」
「……」
結果は芳しくなく……。
こうなってくると、地図に書かれていたヒントが間違っているのではないか? と疑いたくなります。
そんなことはないだろう、とは思いつつも4階の聖水の祠の元へ。
裏側を調べましたが、変わった様子は一つとしてありませんでした。
やっぱり地図のヒントは正しいことが記されていると見るべき……? と、私たちは頭を抱えながら6階へと戻りました。
また右手法を試したのですが、結果が変わることはなく。
なんの進展もないまま一時間(ゲーム内)が経過してしまい、クロ姉が真顔で、壁壊す、なんて言い出す始末です。
全ての壁を取り去れば隠れていても見つけられる、という持論を展開してハンマーを振りかざしたクロ姉を止めるのは大変でした。
(クロ姉がそう言いたくなる気持ちもわかりますが、この場には他のプレイヤーさんたちもいるわけで、流石に全ての壁を撤去するというのはあまりよくないように感じたため、クロ姉を宥めました)
この一連の流れを見ていたライザが、答えを教えるべきだ、と判断たようで、先導して私たちをある場所へと連れて行きました。
移動中、ライザはこんなことを言っていました。
――「ここの宝箱を見つけるには隠し通路を見つける必要があるんですが、それが兎に角いやらしい場所にあるんです」
と。
そうしてやってきたのは東側、分かれ道が一切ないすごく長い通路のちょうど真ん中辺りでした。
立ち止まって上を向き、そのままじっと天井を見つめたライザ。
そのままの状態で静止したため彼女に倣って見上げてみると、視線の先には気にして見ないとわからないくらいに微妙に色が違う部分がそこにはあって。
ライザによると、あれが隠し通路の入口とのこと。
壁や床に見せかけている幻はあるかもしれない、と私たちは警戒していました。
だって、宝箱は5階(下)にある、ってヒントに書かれていたのですから。
ですが、幻となっている部分があったのはまさかの天井……。
私、マーチちゃん、クロ姉は唖然とさせられました。
……これ、いやらしいのレベルを超えていませんか?
不満はありましたが、高いステータスを使って天井まで跳び、幻をすり抜けました。
そこにはまっすぐに伸びた通路があり、進んでいくと少しだけ開けた空間に出て、そこに探していた聖水の祠が。
こんなの、このヒントだけで誰が見つけられるというのでしょう……。
誰の目にも触れられないような場所でひっそりとたたずむことを余儀なくされているこの聖水の祠が、とても悲しい存在のように私の目には映りました。
聖水の祠の後ろにあった魔法陣。
地図を持った人が近づくと反応する仕掛けのようです。
てっきり転移の魔法陣なのだと思ったのですが……。
地図を持った私が中央に立つと、その魔法陣は穴に変わりました。
私たちは落とされました。
幸い、すぐにトンネル型の滑り台のような構造に変わったため、高いところから落ちて怪我をする心配はなくなったのですが、
「いやぁああああああああっ!」
結構急斜面だったためにマーチちゃんが私にしがみつき、悲鳴を上げることに……。
滑り終わった先の小部屋に宝箱はありましたが、マーチちゃんに怖い思いをさせた「運営」には文句を言いたい気持ちになりました。
それで今に至ります。
ライザのおかげでお宝は集まりました。
『パワーアップの秘玉(ジョブ)』も使ってみたいですし、「帰還の笛」を使って帰ろう、とみんなに提案しようとした時です。
クロ姉とマーチちゃんが話している声が聞こえてきました。
「……壁、壊そう。なんか、ムカついた」
「……やっちゃっていいと思うの。今回のはあまりにもひどかったから」
二人も今回の「運営」の所業には見過ごせない部分があったようで、物騒な発想をするようになってしまっていました。
クロ姉が壊した壁は時間が経てば元に戻ることを知らなかった私は彼女たちを止めようとしましたが、その間もなく。
――バコォオオオオンッ!
クロ姉のハンマーによって壁が壊されました。
これ、壁を壊して進むヤバいパーティがいるって噂にならないよね? それをやってるのが私たちだってばれたら恥ずかしいんだけど!? そんなことを懸念していた私。
そしてそれは、現実になりそうな予感がする展開になって。
「きゃあっ!?」
壁が壊れる瞬間を誰かに目撃されてしまっていたようなのです。
(クロ姉が壊した先は正規のルートに繋がっていて、その方に誰かがいたみたいです)
私は慌てて悲鳴のする方へ駆けだしました。
それは、私たちが壁を壊してしまったことを黙っていてほしい、とお願いするためだったのですが、それは杞憂で終わるかもしれません。
そこにいたのは――
「す、すみません、壁を壊してしまって! でも、このことは――って、パインくん!?」
「せ、セツさん!? それに、ライザさんも……!?」
可愛らしく尻もちを搗いているパインくんだったからです。
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