第146話(第四章第19話) 二回目のお宝探し1

 ULTウルト品質のポーションがつくれるようになってからの三日間、私はULTポーションの制作にしていました。

 マーチちゃんやクロ姉がそうしたように、自分の力だけでULTポーションをつくってみたいと思った私は、その旨をみんなに伝えて素材集めから一人でしていたのです。

 といっても、ライザが教えてくれた場所を巡って神聖水や上質な素材、プディンの粘質水を取りに行っただけなのですが。

(忘れていた場所もあったので時間がかかってしまいました)


 そうして、いざULTポーションをつくろうとして愕然としました。

 ULT品質にするのに必要となるMPが



――「16,777,216」



 だったからです。

 おかしくないですか!?

 目が飛び出るほどに驚きました。


 あとでライザに調べてもらってわかったことなのですが、これ、上質な素材を使って最初からレア品質でつくっていたから「16,777,216」で済んでいたのだとか。

 コモン品質だったなら「33,554,432」必要になっていたとのこと。

 『薬による能力補正・回復上限撤廃』のスキルがなかったら詰んでいたじゃないですか……。


 というわけで、MP回復ポーションRをつくって「昇華」で性能を上げていきます。

 MP回復ポーションをレジェンドレベル10まで上げ、それを飲んでMPを「1,274,542,288」に。

 それから『ポーション超強化』を行いました。


 つくったのはこちら。


========


HP・MP復活薬ULT(素:R×R)

……HPが0になった時、自動で発動してHPを最大値の16%、MPを最大値の16%回復する。


========


 ULT品質同士なら掛け合わすことができるそうなので、復活薬とMP回復ポーションをULT品質にして掛け合わせました。

(復活薬の素材は聖水2目盛分、復活草4つ、プディンの粘質水2つ、緑・赤・青・黄色の魔石2つずつ)

 そうしたら、やられた時にMPも回復してくれる代物に。

 これはとても重宝しそうです!

(私たちはそうそうやられないくらいには鍛えていますので、お守りとしての意味合いが強いかもしれませんが)


 ふと、これは「昇華」できるのだろうか? と疑問に思ったのでやってみると、消費MP1で「Rank2」という文字がアイテム名の後ろにつき、HPとMPを64%ずつ回復する、という表記に変わりました。

 掛け合わせたULT品質のポーションも「昇華」することができてホッとしました。


 ちなみに、このポーションはマーチちゃん、ライザ、クロ姉の分も用意したため、合わせて四つ生成しています。


 あと、調子に乗ってこんなものまでつくってしまいましたが、マーチちゃんに何か言われるのは目に見えているため、黙っておこうと思います。


========


全ステータスデバフポーション(素:R×R×R×R)

……対象の攻撃を16%、防御を16%、素早さ16%、器用さ16%下げる。

  耐性がついていても16%の確率でその耐性を無視する。


全バステポーション(素:R×R×R×R)

……対象を猛毒、麻痺、幻惑、悪心状態にする。

  耐性がついていても16%の確率でその耐性を無視する。


========



……………………



 そんなこんなで、気づいたら六月二十二日。

 イベントが終了していました。


「セツ様。イベント景品が届いています」

「え?」


 宿屋の受付の女性(NPC)に話し掛けた時、そう言われてイベントが終わっていたことを知りました。

 受付の女性からアイテムを渡されます。

 それは……。


「『スキル変更の巻物』かぁ……」


 私の順位は13位でトップテンには惜しくも届かず。

 景品としてもらったのは、一つのスキルを違うものに変えられる(もちろん誰も取っていないものに限る)というアイテム……。

 正直、私は今保持しているスキルには文句がないため、使いどころはないだろうな……、なんて感じて少し呆然としてしまっていました。


 私がそうしていると、後ろから声を掛けられます。


「いらねぇならこれと交換しねぇですか、セツ?」


 振り返るとそこにはライザの姿が。

 彼女の手には四枚の紙のようなもの。

 それと同じようなものを私は見たことがありました。


「ライザさん、それってもしかしてお宝の……!? だ、ダメだよ、それはライザさんが手に入れたものなんだから!」


 私は焦らされました。

 彼女の手にあったのはイベントの優勝景品、『第二層全ダンジョンの宝の地図』だったのです。

 そんな貴重なものを譲ってもらうなんて恐れ多い気がします……!

 だって、『パワーアップの秘玉(スキル)』とか、『武器・防具スロット解放の鍵』、『魔法の槌』を手に入れられたアイテムなんですよ、それ!

 今回もそれらと同じくらいすごいものが入っているに違いありません!

 ライザが私みたいに、何がいいアイテムなのかわからない、ということはないと思うのですが……。

 私だって「宝の地図」が価値のあるアイテムであることくらい流石にわかっていますし……。


 私が、ライザって実はドジっ子属性みたいなものがあるのでは!? と心配になってしまっていると、ライザが言ってきました。


「……なんで憐れむような目で見られてんですかね、一人称わーは? 別にトチ狂ったとかそういうわけじゃねぇですよ? 調べたら、わーにはちょっと扱えそうにないアイテムだった、ってだけの話です。二人称なーらの方が上手く扱えると思っての提案です。……つーか、なーに渡すものがなくったってあげてましたけどね。



――わーたちは、その、パーティですから」



「ライザさん……」


 少し恥ずかしそうにそう口にしたライザ。

 言われて気が付きました。

 それまで気が付かなかった私自身に、思わず吹き出してしまいます。


「ぷっ」

「なっ!? 笑うことねぇじゃねぇですか!」


 私たちはパーティだ、という発言は彼女からしてみれば勇気を必要とするものだったようで、それを笑われたと勘違いしたのでしょう。

 ライザは顔を真っ赤にして抗議をしてきました。

 私は訂正します。


「ごめん、ごめん。でも、ライザさんの言葉を笑ったんじゃなくて、私がバカだったな、って思っただけ。ライザさんが頑張って手に入れたものなんだから、ライザさん以外が使っちゃいけない、ってその考えを何がなんでも守ろうとしてたんだ、私。ライザさんがいいって言うなら何も問題ないのにね。それじゃ交換、しよっか!」

「そ、そうですか? なら、いいですが……」


 ライザは一応落ち着きを取り戻してくれて。

 そして私たちは景品の交換をしました。



 景品を交換している最中にマーチちゃんがログインしてきて。


「あっ! お姉さんにライザ。もう来てたの? ……って、お姉さんが持ってるの、それ、今回のイベント景品の『宝の地図』!? クロが来たら探しに行くの!」


 すぐにクロ姉も入ってきたため、私たちは二回目のお宝探しをすることになりました。

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