第145話(第四章特別編2) ギフテッドライブの時間2/2

(オトギリ)

「せこいヤツ一人目! その名はクロ――って、はぁ!? また生産職!?」


(ギオクレー)

「……今度は鍛冶師だな。得物を二つも持っているぞ? それでスパルトンをなぎ倒している……。あっ、壁を壊したぞ?」


(オトギリ)

「スキル、でしょうね……。みんな、仕掛けをまともに解こうとしないなんて、まったく……」


(ギオクレー)

「……いや、おかしいぞ! 壁を壊すスキルは他の者が使っていたはずだ! どうして二人も使えているんだ!?」


(オトギリ)

「え……。あっ、そういえば! 確か、7位のロードって人が使ってた……! どうして同じスキルが存在してるの!? このゲームは同じスキルをつくれない仕様のはずでしょ!? なんでよ!?」


(ギオクレー)

「自分に聞かれても……」


(オトギリ)

「このプレイヤー、明らかにおかしい……! 攻撃力は高いし、素早さはあるし、魔法攻撃も使ってるし、状態異常やデバフがかかってる様子も見られない! 何よりもハンマーを二つも持ててて、壁も壊せてる……! できることが多すぎない!? これはせこでしょ!? インチキよね!?」


(ギオクレー)

「どうしてそんなことができているんだ……? そういうスキルを持っているのか……ん? おい、オトギリ。ここを見ろ」


(オトギリ)

「え……、あっ」


(ギオクレー)

「彼女も『ファーマー』だ」


(オトギリ)

「……商人らしからぬ力を持っていた商人と、スキルの数がどう計算しても合わない鍛冶師……。恵まれていないはずの生産職にここまでの芸当ができているということが何よりも不可解だわ……」


(ギオクレー)

「確か、『ファーマー』はもう一人ランクインしていたな……。どんな奴が入っているんだ……?」


    ・

    ・

    ・


(オトギリ)

「3位はクロノスさんね」


(ギオクレー)

「なんだ? キャラをつくるのやめたのか?」


(オトギリ)

「……疲れたのよ」


(ギオクレー)

「……そうか」


(オトギリ)

「クロノスさんは時間を止めるスキルを使えるみたいね。それでタイムを止めて進んでいたみたい」


(ギオクレー)

「ん? 敵に攻撃する瞬間だけはスキルを解除するようだな?」


(オトギリ)

「仕掛けを動かしたり、敵を倒したりする時はスキルを解かないといけないみたいね。けど、敵にダメージが入ると同時にまた止めてるから実質『全部俺のターン』って感じになってるわね」


(ギオクレー)

「……こんなに勝手がよさそうなスキルなのに制限とかないのか?」


(オトギリ)

「たぶん、他のスキルで補ってるんじゃないかしら?」


(ギオクレー)

「……なるほどな」


    ・

    ・

    ・


(オトギリ)

「2位の説明、いる?」


(ギオクレー)

「一応しておこう。P、こいつは『運営』の人間だ」


(オトギリ)

「僕にも一プレイヤーとして他のプレイヤーたちに混ざって楽しむ権利があるはずだ、とか言ってイベントに参加していたのよね。ほんと、何を考えているのかしら?」


(ギオクレー)

「イベントに関してよく知ることができる立場にいたから『運営』側のみんなが止めたのに聞かなかったという話だ」


(オトギリ)

「そんなPのスキルは『フロアウォーカー』と『オートカウンター』、それに『アイテム創造』。

『フロアウォーカー』は、階段や安全地帯といったそのフロア内の指定した場所に転移できるスキル。

『オートカウンター』は、自分が受けたダメージをそっくりそのまま攻撃したきた相手にも与えるスキル。

『アイテム創造』は、何もないところからMPを消費して既存のアイテムをつくり出すスキル」


(ギオクレー)

「『フロアウォーカー』で階段に直行して仕掛けをすっ飛ばし、『オートカウンター』で敵に多大なダメージを与える。本来ならそれで死んでいるが、『アイテム創造』で復活薬をつくり出してそれを防いでいた。だから、これだけのタイムでEダンジョンを踏破できていたわけだ」


(オトギリ)

「ほんと、一プレイヤーって主張するのやめてもらえないかしら? このプロデューサー……」


(ギオクレー)

「プロデューサー言っちゃったよ……」


    ・

    ・

    ・


(ギオクレー)

「さて、いよいよ1位だが……って、速っ!?」


(オトギリ)

「何、この素早さ……。画面に映ったと思ったらすぐ消えていくのだけれど……」


(ギオクレー)

「情報によると、名前はライザ。『ファーマー』の一員だそうだ」


(オトギリ)

「……え? 一度も敵を倒さずに迷うことなく階段へ一直線に進んでいくわ……。区切りの中ボスもどうやってるのかわからないけれど瞬殺してる……。11階からは階段に向かうと思いきやスイッチの場所まで一直線……。なんで? なんで、こんなことができるの……?」


(ギオクレー)

「……まるで全てを知っているかのような動きだな」


(オトギリ)

「21階からは鍵を持ってる敵に一直線……。31階からはどこかの壁に書かれている番号を控えることもせず直で暗証番号を入力しに行って解いてる……。41階から登場した落とし穴には一回も落ちてない……っ」


(ギオクレー)

「いったいどんなスキルを取ればこんなことが……!?」


(オトギリ)

「51階からの切り替えスイッチは一番少ない手数で突破してる……。61階からの四種類の鍵なんて、本物の鍵よりダミーの鍵の方が多く用意されてるのにダミーを一回も引いてない……。71階からのヒントがちりばめられた暗証番号は31階からのものと同様にヒントなんて見ずに解いてる……。81階から登場した転移の魔法陣は最短ルートを通ってる……っ!」


(ギオクレー)

「自分はRTAでも見ているのか……?」


(オトギリ)

「モンスターフロアゾーンも早すぎる動きでスパルトンたちを翻弄して……。100階のダンジョンボスもその素早さに手も足も出ずやられたわ……」


(ギオクレー)

「……おい、オトギリ。信じられないものを見てしまったんだが……」


(オトギリ)

「何? この人が『ファーマー』の一員っていうのはさっき話したと思うけれど?」


(ギオクレー)

「いや、そこじゃない。この人、ネタジョブ、鑑定士だ……」


(オトギリ)

「え……」


(ギオクレー)

「……」


    ・

    ・

    ・


(ギオクレー)

「すまない! 放送事故を起こしてしまった!」


(オトギリ)

「衝撃が、衝撃がすさまじかったわ……」


(ギオクレー)

「今回のイベントも『ファーマー』の活躍が著しかったな。トップ10に三人もランクインさせてくるとは……。これでオトギリも順位に納得してくれたか?」


(オトギリ)

「うぅ……。でも、やっぱりシニガミ様が1位……っ」


(ギオクレー)

「まだ言うか。……それはそうと、『ファーマー』は何人パーティなのだろうな? 三人なのか、四人なのか……」


(オトギリ)

「ここまで生産職で纏めているのだもの。薬師も入っているんじゃないかしら?」


(ギオクレー)

「薬師は……どこにもランクインしていなかったな」

【(注)ギオクレーは見落としています】


(オトギリ)

「流石に薬師までとんでもないことになってはいないみたいね」


(ギオクレー)

「そのようだな。……っと、そろそろ時間だ。今日のギフテッドライブはここまで! この動画はゲーム内のメニュー画面の配信動画の事項で見れるから見直したい方はいつでも見直してくれ! 次の配信も見てくれると嬉しい! それでは!」


(オトギリ)

「ご視聴、ありがとうございました」


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