第141話(第四章第16話) 久しぶりの経験値稼ぎ3
どうやら私の勘は大体当たっていたようです。
もう一回10階に戻って金プディンたちを倒し(猛毒薬で)、階段を上ると、また復活している、とライザが知らせてきました。
しかも今度は一体のみ。
調べてくれたライザによるとそれは、
――黒金プディン――とのこと。
あの隠し部屋、もしかしてボス部屋と同じ仕組みなのでは!?
しかも、ログアウトアンドログインをしなくてもいい、という仕様の……!
このエリアのダンジョンはボス部屋が19階と遠く、それなのに例の虹色のモンスターが出てきたら逃げ帰って再度19階まで行かなければいけない可能性があったため、ここでも経験値が稼げるというのは願ってもないことでした。
まさに嬉しい誤算です!
私とマーチちゃんとライザが早速倒しに行こうと階段に向かっていると、クロ姉が徐に止めてきました。
「……待って。私、こんなの持ってる、けど、使える?」
そう言ってクロ姉はポーチからアイテムを取り出しました。
それは砂時計の形をしたもの。
どういったアイテムなのか私にはさっぱりでしたが、ライザがすぐに反応しました。
「クロ! まだ使わねぇでください! マーチ! 増やしてください! 大量に!」
「え? えっ?」
「クロが持ってるの、前回のイベントの上位景品です!」
「っ! わかったの!」
クロ姉に、そのアイテムを使うな、と牽制し、マーチちゃんに、クロ姉が出したアイテムを増やすよう指示を出したライザ。
初めはマーチちゃんも私と同様に、その砂時計がなんなのかわかっていなかったみたいですが、ライザからの説明を受けて理解できたようでした。
私はそれを聞いてもちんぷんかんぷんだったのですが……。
首を傾げていると、ライザが教えてくれました。
「これ、『経験値四倍の砂時計』っつー、使うと四分間だけ獲得できる経験値が四倍になる消費アイテムなんです。調べたところ、
「そ、それって……!」
「なーらは『経験値四倍』の装備を二つ着けてるんで、これを使えば獲得経験値が64倍になりやがります」
「っ!」
手に入る経験値が増えるアイテム……!
す、すごい!
そんなもの、どこで手に入れたんですか、クロ姉!?
……えっと、確かさっきライザが言ってましたね。
イベントの上位景品、とか……。
……。
――クロ姉、前回のイベントで上位に入ってたの!? 一人で!?
私はあまりにも驚いて呆然としてしまいました。
(ちなみに、クロ姉の武器二つも『経験値四倍』がついているものをつくってそれに替えています)
私がポカーンとしている間に、マーチちゃんがアイテムを増やし終わって、それをライザがクロ姉に渡して品質を高めるように言っていました。
それでできたのが「経験値16倍の砂時計」。
効果が発揮している間は私たちは私たちの装備の効果と相まって経験値が256倍手に入ることに……!
……これ、マーチちゃんが売れるアイテムの個数に制限を設けさせることになったように、対策を講じられ兼ねないことをしているのでは? と頭を過りましたが、そうなったらそうなったまでだということに思い至ります。
今からその可能性があることを憂えていても仕方がないため、私は深く考えることをやめました。
「経験値16倍の砂時計」を使って、黒金プディン戦。
問題なく勝ち星を上げます。
経験値が「34,125」入りました。
おおう……。
11階に行って、ライザが隠し部屋の様子を確かめると、今度は敵のアイコンが五つになっていて、いるのは金プディンとのこと。
これ、ほぼ確定と言っていいのではないでしょうか!?
第一層「スクオスの森」のボス部屋でログアウトアンドログインをした時のものと同じ流れだと思います!
(三体の金プディンと三回戦うと次に黒金プディンが出現し、黒金プディン戦を経るごとに金プディンの数が二体増える仕組みみたい)
最初から上位種が現れるようになっているのが一末の不安を覚えさせますが、私たちは「砂時計」の効果をできるだけ有効に使うために隠し部屋へと向かいました。
五体の金プディン戦、勝利です。
「17,025」の経験値をゲットです。
私が戦っていて、マーチちゃんたちはただついてきているだけになってしまっていたことに申し訳なさを感じました。
ですが三人は、モンスターフロアで戦っているからここは私に任せてくれるとのこと。
それに、私がスキルをパワーアップするために使用回数を増やしていることは話していませんでしたがバレバレだったようで、彼女たちは私に協力してくれていました。
なんか、目頭が熱くなっちゃいました。
金プディン五体を合計三回倒すと、二体の黒金プディン戦に。
即刻倒して「68,250」経験値を得ました。
次は金プディン七体との戦闘。
「23,835」経験値獲得。
それを三回終えると黒金プディン三体との戦い。
経験値は「102,375」。
続いて金プディン九体。
「30,645」。
三回行うと、黒金プディン四体が出現。
「136,500」。
金プディン11体、金プディン11体、金プディン11体、黒金プディン四体と戦って。
更なる上位種が出てこなかったことに戸惑いながら10階を離れると、
この隠し部屋の仕様では連戦になることはないようです。
漆黒金玉プディンと戦うのは初めてでしたが、猛毒薬が通用したため難なく倒すことができました。
獲得経験値は「341,325」でした。
ちょ、ちょっと多すぎではないですかね?
引いてしまいそうです……。
……………………
繰り返して、繰り返して……。
105回目。
隠し部屋にいたのは漆黒金玉プディン四体でした。
この数とはもう一回戦っているため、相手の出方はわかっていました。
後れを取ることはありません。
危なげなく敵を倒しきります。
そして、106回目。
そのころにはもう流れ作業のようになっていて、マーチちゃんたちは11階に上がったらすぐに10階に戻ろうとその身を翻します。
私はそんな彼女たちを反射的に止めていました。
「ま、待って! ライザさん、ちょっと確かめてもらってもいいかな!?」
私は予想ができてしまっていたのです。
このあとに、あの隠し部屋で何が待ち構えているのか、を。
私に言われて、ライザが『アナライズ』で情報を取得したのでしょう。
彼女はその顔を引きつらせていました。
「……ちょっとおざなりになっちまってました。マーチ、クロ。もう行かねぇ方がいいかもしれません。今、あの隠し部屋にいるのは、
―― 『状態異常無効』
『デバフ無効』
『全ステータスバフ上限撤廃』
『全ステータスバフ魔法使用可』
『全ステータスデバフ魔法使用可』
『ステータス変化上書き可』
『HP・MP継続回復』
『特殊効果無効化魔法使用可』
とかいうふざけた性能をした虹色のバケモノです……」
「「え……っ?」」
……予想的中です。
今、あの部屋にいるのは私が勝てないと判断した、虹色のプディンでしょう。
ライザが調べてくれて初めてわかりましたが、とんでもないスペックをしています。
道理で勝てなかったわけです……。
私たちは隠し部屋での経験値稼ぎを断念することにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます