第135話(第四章第10話) イベントダンジョンを踏破せよ4(セツの場合)

「こんなのってないよぉおおおお!」


 ないよーーーー

 ないよーーーー

 ないよーーーー

 ないよーーーー……


 壁に書かれていた説明を読んで衝撃を受けた私の叫び声が遺跡内にこだましました。

 これまで必死に上げてきたレベルが1に戻され、みんなが無事に完走できるようにとつくった私特製の薬品は徴収されてしまうなんて……。

 ひどい……。

 あんまりだよ……。

 私はその場に力なく座り込んで動けなくなっていました。


 どれくらいそうしていたでしょうか。

 気づいたら骨のモンスターが近くまで迫ってきていました。


「モンスター!? ど、どうすれば……っ」


 私を攻撃しようとしているのか、その細く白い腕を振りかざしています。

 やられる前になんとかしなければ! とは思ったのですが、今の私は弱くさせられているのです。

 レベル1でアイテムはなし。

 攻撃力が下げられていて、猛毒薬もつくれないとしたら私はこのモンスターを倒せないのでは? そんなことが頭を過ると私の動きは止められました。

 その間にもモンスターは私を仕留めようと着実に腕を振り下ろし始めて。

 その動きがやたらスローモーションに映ります。

 何もできずにやられる……! そう臆して目を閉じてしまった私。

 ですが幸いなことに、このモンスターは私のいる赤い空間には入って来れませんでした。

 見えない壁に阻まれているみたいで、その腕が私に届くことはなかったのです。


 いきなり死ぬようなことはなくてホッとしましたが、これは不幸中の幸いに過ぎません。

 この空間から出たらやられてしまうかもしれない……。

 根本的な問題は何も解決していないわけですから。


「うーん……。何かないかな……?」


 私はこの状況を打破できる方法を模索し始めました。

 とりあえず、大幅に下げられているであろうステータスの確認をしてみると……。


========


名前:セツ      レベル:1(レベルアップまで4Exp)

職業:薬師(生産系)

HP:11/11

MP:903,402/11

攻撃:25,254(×0.9)(×2,622.44)

防御:29,259,475(×2,684,355.56)

素早さ:30,158(×2,622.44)

器用さ:13(×1.1)


========


 ……ん?

 あれ?

 そんなに下がってない……?

 確かにレベルが1になっててHPと器用さは心許なくなっちゃってるけど、MP・攻撃・防御・素早さは高いまま……。

 ……なんで?


 なんでかはわかりませんが、バフポーションの効果が消されてはいませんでした。

 てっきり、の薬師のレベル1の状態にさせられたものだと思っていたのですけど。

 バフポーションは許された、ってこと……?

 基準がわかりません。

 ……何はともあれ。

 これなら攻略ができそうです!


 そのあと、もしかしたらアイテムも持ってくることができているのでは!? と思って所持アイテム一覧を確認してみたのですが、そっちは見事に空になっていました。

 ……残念です。



 赤い空間から出て、骨のモンスターを投げ飛ばします。

 骨のモンスターは一瞬にして黒い粒子に。

 問題なく倒すことができて、「経験値四倍」の特殊効果のおかげでレベルが2つ上がりました。

 HPが弱いので、モンスターをできるだけ倒してレベルを上げていった方がいいですね。

 それと。


「白い魔石が17個!」


 装備に「ドロップアイテム+4」が四つ付いているので落ちる白い魔石の数が16個増えます!

 ライザ曰く、さすらいの商人と交換できるアイテムの中に使えるものはあまりない、とのことでしたが、私は確認していませんので一応集めておきましょう。

 もしかしたら私がほしいものがあるかもしれませんし。



 それから11階までは止まることなく猛スピードで上がっていきました。

 フロアの全体があまり広くなかったので、バフがかかっているこの素早さを駆使すれば全てを回ったとしてもそんなに時間はかかりません。

 10階の中ボスも出会い頭で仕留められましたし……。


 ただ、11階からのギミックにちょっと苦戦しました。

 「スイッチ」が見つけられなくて、それから18階まで全てのフロアを二周してしまっていました。

 これ、あとに響かないといいのですが……。

(20階の中ボスは10階の時と同様に倒しています)


 21階からのギミックは優しくてよかったです。

 レベルアップのためにモンスターは全て倒すことにしていましたから、その過程でクリアすることができるのは本当に助かりました。

(30階の中ボスも難なく倒せています)


 そして31階からのギミック「暗証番号」……。

 これ、めちゃくちゃ苦労しました。

 31階のものは4桁だったので一発でクリアできたのですが……。

 32階は8桁、33階は12桁と増えていき……。

 38階のものなんて32桁もあって、暗証番号が書いてある場所と入力する場所を六回も往復することになったのです……。

(33階までは一回見て憶えられたのですが、34階でミスをしてしまい、それからは4~6桁ずつ覚えて入力しに行く方法に切り替えました)

(40階の中ボス戦の方が簡単だった気がします、一瞬で決着がついたので)


 41階からのギミック「落とし穴」ですが……。

 嵌りました。

 それはもう。

 私は素早さが高いため罠が作動する前に通過できたりするのですが、壁に「この壁を見続けると階段の位置が記される」なんて書いてあったんです。

 初めの二、三カ所が本当に記されたので、これを有効活用しない手はない! って考えていたら四カ所目くらいのものでズボッて……。

 そのあとは何回か警戒するのですが、忘れたころにまたやってきて落とされるんですよね……。

(特に宝箱の前にあった落とし穴が厄介でした)

(一回落ちた穴ですが戻ってきた時には塞がれていて、その穴にもう一回落ちたことも何回かあります……)


 50階は70体くらいのモンスターとの戦闘でした。

(一体を掴んで振り回すやり方で一瞬で終わりました)

(「落とし穴」の方がつらかったです)


 51階からのギミックは「切り替えのスイッチ」。

 11~18階にあった「スイッチ」は一つのフロアに一個しかありませんでしたが、ここの「切り替えのスイッチ」は一つのフロアに複数個存在しました。

 「切り替えのスイッチ」のレバーが赤の方に寄ると赤いドアが開いて青いドアが閉まり、「切り替えのスイッチ」のレバーが青の方に寄ると青いドアが開いて赤いドアが閉まる仕組みでした。

 走り回っていたら自分でもわからないうちに階段に辿り着けていました。

 時間はちょっとかかってしまっていましたが。


 60階の中ボス(私には40階にいた中ボスとの区別がつかなかったのですが)にも快勝できました。

 一撃です。


 61階からのギミックは「四種の鍵」を集めることでした。

 21~28階にあった「鍵」は20体ほどいるモンスターの中の一体が持っていて一つゲットすればよかったのですが、ここでは60体ほどいるモンスターのうちの4体が一種類ずつ持っていました。

 しかも、鍵は正解の四種類だけでなく、ダミーの鍵を持っているモンスターも60体の中に紛れ込んでいたのです。

 そのダミーの鍵を鍵穴に差し込んでしまうと鍵穴が塞がれてしまって、一旦下の階に降りてリセットしないといけない、という仕様になっていて……。

 ダミーの鍵、色合いが本物とすごく似ていて見極めにくかったです……。


 ……あっ。

 移動した後に沼を形成する70階の骨のモンスターには圧勝しました。

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