第132話(第四章第7話) イベントダンジョンを踏破せよ1(ライザの場合)
~~~~ ライザ視点 ~~~~
木曜日になってイベント期間内に入りました。
準備はできています。
……その準備を、
その分はイベントで結果を出すことで取り返しましょう。
②の二十一時前に揃うことができたんで、四人で一斉に宿屋の受付に。
わーたちのEダンジョン攻略が始まります。
……………………
Eダンジョンに転移させられた、わー。
一人です。
そこは「リスセフ遺跡」を彷彿とさせる石造りの迷宮って感じでした。
わーが立っている付近だけ赤い石で組まれていましたが。
……あんま、あのダンジョンのことを思い出したくねぇんですけどね。
イタすぎる過去の自分がちらつくんで……。
右の壁には何やら文字が書いてありますね。
なになに?
『これを読まなければ赤い石で組まれた空間から出ることはできない。
赤い石の空間にいる間はタイマーは作動しない。
赤い石の空間から少しでも出たらタイマーが動き出す。』
ふむふむ。
『「逆四角錐の100階ダンジョン(遺跡)」へようこそ』
……これがわーたちが挑むEダンジョンの名前ですか。
わかるわけねー……。
「検索」の仕様がねぇですよ、こんなの。
えーっと、次は……。
『ここは特殊なダンジョンである。
同名のダンジョンが挑戦者の人数分あるが、どのダンジョンも中のつくりが異なっている。
このダンジョンには「アイテム持ち込み不可」と「レベル1スタート」という特殊な措置が施されている。
レベルは強制的に1に下げられる。
このダンジョンに経験値は持ち込めず、持って帰ることもできない。
ダンジョンを出ると元のレベルに戻る。
持っていたアイテムは倉庫に預けられる。
なお、その際に倉庫内に保管できるアイテムの数が超過してしまったとしても、倉庫を借りている期限内であれば引き出せるものとする。
ただし、装備まで取り上げてしまうと詰む可能性が出てきてしまうことを考慮し、装備は持ち込めるようにしている。
また、フレンド機能を用いて他者と連絡を取ることも不可能だ。
それでは健闘を祈る。』
うっわ……。
これはひでぇ……。
わーは『アナライズ』でもう既に100階までの地図をゲットしています。
ですが、中のつくりが違ぇっつーのと、連絡が取れねぇっつー制限の所為で、わーが他の三人をナビゲートするっつー作戦を封じてきやがりました。
くそったれでいやがりますね、マジで。
それに「レベル1スタート」の制約って……。
……これ、確定です。
生産職を目の敵にしてやがります、「運営」。
生産職がレベル2になるのを激ムズに設定してんのはあいつらなのに、そのレベルを1に戻すとか、生産職に上位を取らせる気ねぇでしょ。
頭沸いてんじゃねぇですか?
クロは装備のおかげでステータスを上げられてますが、セツとかマーチとか泣いてるかもしれねぇですね……。
セツに至っては、ダブルパンチです。
アイテムが持ち込めねぇことも事前に知らされてなかったんで、回復系とかデバフ系とかバステ付与系の薬を頑張ってつくりまくってたっつーのに、こんな仕打ちをされたんですから……。
心、折れてねぇといいんですが……。
わーは自分のステータスを確認してみました。
========
名前:ライザ レベル:1(レベルアップまで--)
職業:鑑定士(生産系)
HP:10/10
MP:-1,517,443,840/11
攻撃:9(×0.9)
防御:10
素早さ:7,851,749(×671,089.68)
器用さ:13(×1.1)
(状態異常:悪心)
========
素早さのバフと悪心のバステが掛けられたまま……。
……ああ、これ、セツのスキルがこのダンジョンに入っても機能してて、使った薬がわーの中に存在し続けてるってことなんですね。
状態異常が治ってて、MPが回復してたら『トリックスター』を使うことになってたかもしれませんが、できればアレを使いたくはねぇんで治ってなくてよかったと思います。
こうなってくると、ボス戦で使おうと思ってた猛毒薬を取り上げられたのはちと痛ぇ、いいえ、だいぶ痛くなってきやがるんですが……わーのことは置いておくとして。
わーがこれならセツは問題ねぇのかもしれません。
……ただ、やっぱり。
マーチは苦しい展開にさせられたわけですし、セツも努力を無駄にさせられたわけですから、この「運営」のことは気に入りやがらなくて。
わーは決めました。
――このイベントで圧倒的に優勝して「運営」に一泡吹かせてやろう、って。
モチベーションが上がったところで、このEダンジョン限定モンスターが角からその姿を現しました。
ご丁寧にタイマーが作動しない空間を設けてくれてたんで、そこから攻略を開始する前に情報を拾わさせてもらいましょう。
≪――――――――
『スパルトン』レベル1
HP:11/11
MP:11/11
攻撃:11
防御:11
素早さ:11
器用さ:11
特殊効果:なし
――――――――≫
全てのステータスが同じ数値、ですか。
レベル1じゃ特殊効果を持っていませんが、調べてみると器用さバフ、器用さデバフ、悪心無効、幻惑魔法、器用さデバフ無効、器用さバフキャンセル、MP継続回復、防御バフ、攻撃デバフ、幻惑無効、防御デバフ無効、攻撃バフキャンセル、状態異常回復、自動追尾、暗闇魔法、封印無効を習得していくみてぇです。
……とりあえず無視ですね。
レベルを上げられねぇわーは倒さなくていいモンを倒す旨みがねぇんで。
このダンジョンに来る前にさすらいの商人とやらが交換してくれるっつーアイテムを確認しましたが、セツがいるうちらにとっては需要がねぇモンでしたし。
つーわけで。
わーはイベントのスタートを切りました。
セツが上げてくれていた素早さを使ってスパルトンを飛び越え、位置がわかってる階段を目指して最短距離で駆けていきました。
1から9階はその繰り返し(9階にスパルトンはいませんでしたが)。
8階に宝箱が置いてありましたが、『アナライズの「地図」』のその位置をタップすると、中身は白い魔石だったんでスルーしました。
そして中ボスがいる10階へ。
相手はビッグスパルトン(レベル10)。
≪――――――――
HP:78/78
MP:78/78
攻撃:78
防御:78
素早さ:78
器用さ:78
特殊効果:器用さバフ
器用さデバフ
悪心無効
――――――――≫
わーのクソザコ攻撃力じゃあ、当たっても「1」しか与えられません。
ですがこのゲーム、ある特殊効果やスキルを持っていない相手への攻撃はどんなに攻撃力が引くかろうが必ず「1」のダメージは入るんです。
要するに、
――数をこなせばどうにでもなる、ってこと。
そして今のわーにはクロがつくってくれた「攻撃回数+4」の特殊効果がついた装備が四つもあります。
ですから、一回の攻撃で17回攻撃したとカウントされるわけで、削れるHPも「17」。
さらに、わーの素早さはえげつねぇことになってますから、高速で攻撃することが可能です。
わーはジャンプして相手の頭の上に着地しました。
そこで足踏みを開始します。
攻撃する意思を持ってやれば、これでも立派な攻撃です。
五回も踏めばボスのHPは尽きて黒い粒子になって消えるのですが……。
えぐいことになってる素早さの所為で五回じゃ止められなくて、16回くらい踏んじまって完全にオーバーキルしちまいました。
……さて、次行きましょうか。
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