第131話(第四章第6話) 第二回イベントに向けて

「きょ、協力ってどうやって?」


 思いもよらないライザの言葉に、私はその言葉の詳細を求めていました。

 彼女は微笑んで言います。


「今日も入れればあと四日もあるんです。その間に協力し合って強化して、一人称わーたちで上位独占してやりゃあいいんですよ」


 と。

 私は固まりました。

 個人戦だと知って、協力はできないものだと思い込んでいたから。

 頭固すぎですね、私……。


 そっか……。

 それをやってもいいんだ……!


「……どうしたの?」

「っ! マーチちゃん!?」

「ああ、マーチ。これ、見てください」


 私が呆然としている間にマーチちゃんがログインしてきて、尋ねてきます。

 ライザが「運営」からのメッセージをマーチちゃんに見せると、マーチちゃんは言いました。


「個人戦……! お姉さん、ライザ! 早速、作戦を立てるの! みんなで上位に入るの!」


 なんの疑いもなく、協力しよう、と提案してきてくれたマーチちゃん。

 私は、個人戦って書かれていたから対立することになってしまう可能性もあるのではないか? と危惧していたのですが、それはいらぬ心配で。

 二人が、当然のようにみんなで挑もう、と考えてくれていたことに、私は胸が温かくなるのを感じて。

 私自身が二人を信じていなかったようで、少し後ろめたさはあったけれど。


「……うんっ!」


 私は返しました。

 絶対にみんなで上位に入るんだ! という意思を持って。



 それからクロ姉もログインしてきて、彼女にもイベントのことを話して。

 私たちの怒涛の四日間が始まりました。


 私たちはステータスやスキル、装備や持ち物の強化に取り組みました。


 マーチちゃんが増やした素材アイテムで、私はアイテムを、クロ姉は装備をつくりました。

 私は、HP回復ポーションやMP回復ポーション、状態回復薬、攻撃デバフポーション、防御デバフポーション、素早さデバフポーション、猛毒薬、麻痺薬、悪心薬を『製薬』しています。

(「究極」の素材を使っているので、どれもエピック品質でつくることができています)

(私のジョブランクがもっと高ければレジェンド品質にできたのですが……)

 クロ姉は、薬師のスクラブキャップ、商人の麦わら帽子、鍛冶師のキャスケットという私やマーチちゃん、クロ姉の初期装備になかった頭防具などを生成してくれました。

(それらにも盗難や損壊への対策が施されています)


 私はバフ系のポーションもつくっておいた方がいいのではないか? と提案したのですが、マーチちゃんが受け容れてくれませんでした。

 それを受けてクロ姉も、鍛冶師の力でやってみたい、と、私のポーションによるステータスの強化を遠慮したため、この案はボツに……。

 ステータスを強化しないならせめてこれだけはお守りとして持っていって! ともしもの時のために相手を状態異常にする薬を携帯してもらうことを了承してもらった形です。

(最初はこれらの薬品も、つくらなくていい、とマーチちゃんから言われていました)


 それと、この期間中に鍛冶師が戦う術を持っている理由を詳しく教えてもらいました。

 生産職は基本的に武器を持つことができないのですが、鍛冶師は「槌」だけは持つことが可能だったのです。

(「槌」が鍛冶師に合った武器だと判定されるそうで、攻撃力の低下を抑えられるとのこと)

(ですが、鍛冶師の総合ステータスは他の生産職のものと同等であり、戦闘職の約二分の一の強さしかないらしく、強い敵の討伐は一般的な鍛冶師には難しいみたいです)

 そういう話を聞いた私は、クロ姉が使えるものを持っていたことを思い出してそれを彼女に渡しました。



 「魔法の槌」――「タチシェスのいる自然公園」の宝箱からゲットした武器を。



 これは最初からスロットが四つ解放されている状態で、しかも「任意属性付与」という特殊効果が既についていた強そうな武器です。

 イベントの景品でもらった宝の地図が示していた場所にあったものなのですが、私やマーチちゃん、ライザにはそもそも扱うことができなかったので、クロ姉に使ってもらった方がいい、と判断しました。

 クロ姉は受け取ってくれて、早速『鍛錬』で追加効果を付属させていました。


 ライザはというと、イベントの情報を集めることに邁進していました。

 しかし、まだ解放されていないイベントダンジョンへは行けなかったため「視る」ことは叶わず、名前も判明していなかったことで「検索」することもできなかったようで、思うように情報を得られない! と嘆いていました。

 自分だけ役に立てていない、と焦りと不安を抱えているような暗い表情にライザはなっていて……。

 その気持ちは私も、アイテム整理の際に何もできていなくて感じていたため、よくわかりました。


 クロ姉は大学生ですので、講義やバイトなどで私たちと一緒にゲームができないこともありましたが、私たち四人はそれぞれにできることをしていきました。



 そうして。

 イベント開始の前日、水曜日。

 アイテムと装備に関しては準備ができたと言ってもいいと思います。

 結局、情報は入手できなかったようで、ライザが申し訳なさそうにしていましたが。


 装備はこのようになっています。


========


(セツ)

・薬師の白衣――薬師の初期装備・耐久値∞

        全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視

        薬師専用防具

        経験値四倍

        ドロップアイテム+4

・薬師のスクラブキャップ

        耐久値∞

        薬師専用防具

        経験値四倍

        ドロップアイテム+4

・無菌の手袋

        耐久値∞

        薬師専用防具

        全敵接触可

        ドロップアイテム+4

・最初の靴―――初期装備・耐久値∞

        いいとこどり(全地形)

        薬師専用防具

        空中行動+1

        ドロップアイテム+4


(マーチ)

・耐久の繋

        全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視

        耐久値∞

        商人専用防具

        器用貧乏(防御)

・商人の麦わら帽子

        耐久値∞

        商人専用防具

        経験値四倍

        器用貧乏(攻撃)

・商人のスリングショット

        商人専用武器

        耐久値∞

        フレンドリーファイヤー設定

        器用貧乏(器用さ)

・最初の靴―――初期装備・耐久値∞

        いいとこどり(全地形)

        商人専用防具

        経験値四倍

        器用貧乏(素早さ)


(ライザ)

・鑑定士のインバネスコート

     ―――鑑定士の初期装備・耐久値∞

        全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視

        鑑定士専用防具

        直感強化

        攻撃回数+4

・鑑定士のディアストーカー

     ―――鑑定士の初期装備・耐久値∞

        鑑定士専用防具

        攻撃回数+4

        直感強化

        ダメージ無効無視

・鑑定士のモノクル

        耐久値∞

        鑑定士専用防具

        弱点看破

        攻撃回数+4

・最初の靴―――初期装備・耐久値∞

        いいとこどり(全地形)

        鑑定士専用防具

        全敵接触可

        攻撃回数+4


(クロ)

・破壊者の鉄槌

        耐久値∞

        鍛冶師専用武器

        傾国傾城

        ブレイクスルー


・鍛冶師の繋――鍛冶師の初期装備・耐久値∞

        全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視

        鍛冶師専用防具

        攻撃アップ

        防御アップ

・鍛冶師のキャスケット

        耐久値∞

        鍛冶師専用防具

        バッドステータス無効

        デバフ無効

・魔法の槌

        任意属性付与(魔法攻撃化)

        耐久値∞

        鍛冶師専用武器

        アクセサリー化(スケール自在)

・最初の靴―――初期装備・耐久値∞

        いいとこどり(全地形)

        鍛冶師専用防具

        MP回復歩行

        素早さアップ


========


 これで第二回イベントに挑みます!

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