第117話(第三章第33話) 偽装者が起こした事件1
~~~~ クロ視点 ~~~~
私の信条。
ロリは最高、小さくておっきい子は神。
だから、マナ、メグ、サチの三人が私を仲間に誘ってくれた時。
私は天にも昇る心地がした。
三人とも小さくて大きい。
ふふふ、幸せ……。
ただ、見た目だけでは仲間になれない。
スキルも重要。
だから、あの厄介なパーティ(マーチちゃんは除く)に出したのと同じ条件を彼女たちにも出した。
ちょっと意地悪だったかな? って思ったけど……。
その心配は無用だった。
マナたちは、私が求めた以上のものを持ってきた。
これはこの子たちの仲間になるしかない! そう思った。
私はあの厄介なパーティ(マーチちゃんは除く)に断りの連絡を入れた。
私がこのゲームであまり恵まれてない鍛冶師なんてやっているのにはわけがある。
カワイイ子にカワイイ服を着せたい!
それで強くできたなら一石二鳥!
ふふふ、これから楽しくなりそう……!
マナは凛としてる黒髪ロングのストレートの子だから巫女服が合いそう。
メグはキュートな元気ハツラツ系の子だからアイドル衣装かな?
サチはクールな感じのおさげの子だからゴスロリ……いや、あえての軍服も捨てがたい……。
提案してみたけど却下された。
ちょっと不満……。
マナたち、ファッションに無頓着……。
可愛い衣装よりも性能を重視した。
すごくもったいない……。
けど、嫌われたくなかったから無理強いはしなかった。
結局、三人には第三層の武器屋で買える装備の強化をした。
弓を使うマナは攻撃と素早さ重視。
盾を使うメグはHPと防御。
杖を使うサチはMPと器用さ。
それらを、対応するステータスを4,096%ずつ上げられるようにして、耐久値も「9,999」と簡単には壊れない数値まで鍛えると、マナから提案された。
――「私たちがすごい素材を取ってくるから、困ってるプレイヤーさんたちのためになる装備をつくって売ろうよ! そのお金で最高級のギルドハウスを建てたい!」――
って。
鍛冶師はバイトをしてるお店で自分がつくった装備を売ることができる。
お店を借りているからとか、技を教えた授業料とかで、そのものが売れたら少し差し引かれるけど。
それはとても魅力的だと思った。
最高級のギルドハウスはお店としても使える。
自分のお店が持てたら、生産職のスキルを如何なく発揮できるようになる。
差し引かれることもない。
この提案は私のことを思ってのこと。
私は嬉しくなって了承した。
256億Gとかいうおかしな金額が必要になるけど……。
幸い、売れる商品には心当たりがあった。
――『全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視』
あれを付与した装備をつくって売ろう。
そうすればすぐに溜まるはず。
ちなみに、ギルドハウスは街の外につくれる建物のこと。
最低ランクのもので4億G。
ギルドハウスを建てれたら、その建てた場所を安全地帯にできる。
低い方から二番目のランクのものは16億G。
建物の中にいる間は宿屋の部屋にいるのと同じようにHP・MPの回復が早くなる。
三番目のランクのものは64億G。
倉庫の機能が付く。
しかも、6,400個のアイテムを保管することが可能。
そして一番高いのが256億Gのギルドハウス。
生産職がものをつくれるスペースが設置されて、鍛冶屋とか鑑定の館とかが開ける。
そう攻略サイトに載ってた。
私は『全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視』を自前で買った装備に付与しまくった。
マナたちが取ってきてくれた品質の高い素材を使って。
大量につくって、売り始めたのは七日②の二十時ごろ。
300万以上の値段設定だったけど、飛ぶように売れた。
用意していた百個はものの十数分で完売。
売り上げは約2億7,900万G。
仕入れで大体1,600万くらいかかるけど、これなら思ったよりも早くギルドハウスを建てられそう。
用意する数をもっと増やそうかな?
私は、依頼という形でマナたちから品質の高い素材を買い取って、作業に励んだ。
……………………
次の日。
今日も頑張ろう、と意気込んでログインしたら
――お店が大変なことになっていた。
「ふざけんな!」
「金返せ!」
「なんなんだ、この装備は!」
わけがわからなかった。
数十人のプレイヤーが、私がバイトしているお店に押しかけてきていた。
みんな、怒ってる……。
私はバイトしてる人しか入れないスペースにいて隠れられてたから、詰め寄られてはいなかったけど……。
彼らの言っていることを聞いてみると、私はますます頭が混乱した。
――特殊効果『全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視』が機能していない――
……そんなはずはない。
私のスキルでつくったものだ。
ちゃんと付与できていることも確認した。
彼らはきっと勘違いをしている。
兎に角、今ここにマナたちが来るのはよくないって思った。
だから電話した。
今は来ない方がいいって伝えるために。
――♪
……あれ?
出ない……っ。
私は不安になった。
もしかしたらマナたちは、勘違いをしてしまっている彼らに私の関係者であることが知られて何かをされてしまったのではないか? って。
もう一回電話をしようとした時。
目の前に「call」の画面が出てきた。
私は慌ててそれに出た。
発信者も確認せずに。
「もしもし!? マナ!?」
――『……マナじゃなくて悪ぃですね。
「……なんだ、お前か……」
……この独特な自称の代名詞を使う奴は、あの厄介なパーティのメンバーの一人だ。
ちゃんと見ないで電話に出たことを後悔した。
「……何用? もうお前らの仲間にならない、そう、伝えた」
早く切り上げたかった。
こんなことしてないで、マナたちと連絡を取りたかった。
でもこいつは、とんでもないことを言ってきて……っ。
『いやー。
――何も効果のねぇ装備を300万で売るとか、ぼったくりもいいところじゃねぇですか』
「……は?」
ここに来て、さらにわけのわからない展開に。
これ以上、私の頭を悩ませないでほしい……っ。
そう思っているのに、こいつは続けた。
『なーがこんなことできるなんて思っちゃいません。わーはなーのスキルを知ってるんで。たぶん、これをやったのはあの三人でしょう。なーが仲間になったっつー、あのやたらと胸がデケェガキどもの仕業です』
「お前……! クロの仲間、悪く言った。許さない……!」
こともあろうか、マナたちの悪口をこいつは言った。
あの子たちについては私の方が詳しい。
私のために最高級のギルドハウスを建てようとしてくれている子たち。
何も知らないで見当違いなことを言っているこいつに腹が立つ。
でも。
言われた。
『じゃあ、
――なーがつくった装備を着けてこの街の外に出てください。
それではっきりしますから』
「あ――」
それで通話は切られた。
あいつが言ったことは、今お店に怒鳴り込んできている人たちの言葉と同じものだったと気づく。
同じ――追加効果のこと……。
けど、私はあの子たちのことを信じている。
だから私は、装備を着てお店の外に出た。
……裏口から。
そうして街の外へ。
門番に止められることなく、無事に外に出られた。
……なんだ、ちゃんと機能してるじゃんか。
人騒がせな、って思った。
しかし――
「もが!? おぼごがっ!?」
顔が水に浸かって0.1秒。
私は溺れかけた。
なんで、なんで機能してないの!?
……それよりももっと大変なことがある。
こんなものを私は、売ってしまっていたんだ……っ。
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