第106話(第三章第22話) 条件1
~~~~ ライザ視点 ~~~~
セツが言いました。
――「クロさんを仲間に誘いたい」――と。
……あの、セツさん?
それ、マジで言っていやがるんですか?
あれですよ?
ロリは最高! とか言ってた奴ですよ?
……まあ、この世界での
現実ではちんちくりんなわーですが、こっちでは百六十五センチのナイスバディな乙女ですから。
(……あれ? なんか涙が……)
それに、クロのスキルが強ぇっていうのも知ってます。
これに関してはセツたちよりもわーの方が詳しいんじゃねぇですかね?
『名匠たる所以』
――条件さえ満たしていれば任意の特殊効果を武器や防具に付与することができるスキル。
武器・防具に付与されている特殊効果の性能を引き上げることもできる。
(条件は、武器・防具に空きスロットがあることや、その特殊効果を付与するのに必要となる素材のレア度を満たすこと)
『数だけ強くなる』――同一名のアイテムを四つ合成することでその系統の一段階上のアイテムに変えることができるスキル。
(合成した四つのアイテムは消え、品質が一段階上のアイテムを一つゲットできる)
『素材管理』――素材となるアイテムを収納した時、アイテム所持数が増えないスキル。
どれもこれも鍛冶師専用のジョブスキル『鍛錬』の使い勝手をよくする目的のスキルだと思われます。
『鍛錬』は、武器・防具を生成したり、強化できたりするスキルなので。
あっ、アプデがあったので耐久値も上げられるようになってやがりましたね。
ほんと、ちょっと優遇されてるんじゃねぇですかね、鍛冶師……。
商人とか鑑定士とか、あと普通の薬師とかひでぇもんですよ?
テコ入れしねぇんですか、運営?
兎に角です。
仲間になってくれるんなら心強いっつーのはわかってましたから、セツの意見に反対はしませんでした。
つーことで、第三層「ブクブクの街」、鍛冶屋へ。
「お引き取り」
――ダンッ!
店に入って、クロがわーたちのことを確認した直後。
さっきまでクロが手入れをしていたと思われるナイフがわーたちの横を飛んでいき、壁に突き刺さりました。
アブねぇ……!
入って早々、何してくれやがるんですか!
街はPK禁止エリアだから投擲は当たらねぇようになってるっつってもこれはねぇでしょう!
こんなことをされたのでマーチはガタガタになっちまっています。
これには流石のセツもビビらされていました。
「あ、あの、クロさん! お話が――」
「ない。帰れ」
セツが話を聞いてもらおうとするも、クロは聞く耳を持ちやがりません。
こいつ、なんでこんなにわーたちのことが嫌いなんですかね?
わーはちょっとカチンと来ていました。
「……ちょっとくらいいいじゃねぇですか。ID:123GO。名前クロ。レベル53。レベルアップまで583(158/742)。職業・鍛冶師。HP:536/536(×11.4)。MP:145,779/68。攻撃1,125(×11.24)。防御893(×11.24)。素早さ648(×11.24)。器用さ110。装備『耐久の
「っ! こいつ……っ!」
とりあえず、クロの情報を捲くし立ててみます。
すると、こちらを一度見ただけで(ナイフも投げてきましたが)すぐに視線を外して鍛冶の作業に戻っていたクロがその手を止め、わーを睨みつけてきました。
表情は歪められています。
ちょっと溜飲が下がりました。
……おっと。
セツがあわあわしてますね……。
仲間に勧誘しに来たのに、その相手に喧嘩を吹っかけちまったんでわけねぇですけど。
こんな状況にしておいてあれですけど、わーにはなんの策もなかったんで、どうすりゃいいですかね、このあと……って内心ヒヤヒヤしてたんですが、意外なことにクロの方が折れました。
「……言え、要件を」
おお。
聞く耳は持ってくれたみてぇです。
「あ、あの! 私たちとパーティを組んでくれませんか!?」
セツが、この機を逃しちゃいけない! って感じでクロに言いました。
クロは――
「……わかった」
「ほ、本当ですか!? やった――」
まさかの了承をしました。
喜ぶセツとマーチ。
しかし――
――「マーチちゃん、くれるなら、同盟くらいなら、結んでもやってもいい」
「――え」
……は?
とんでもないことを言い出してきやがりました。
何言ってきやがるんですか、こいつは?
言うに事欠いて、マーチをくれ――?
「え、えっと、それはできませ――」
「この二人を離すなんてそんなことできるわけねぇでしょう? 何言ってんですか、あんた」
気がつくと、わーはセツの言葉を遮ってクロに抗議をしていました。
気に入りやがらなかったんです。
二人の仲を引き裂くようなことを言いやがったこいつのことが。
「二人の楽しみを奪う気ですか?」
「……断言。クロといる方が絶対楽しい。彼女、薬師でしょ? 回復量のおかしなポーション、持ってても、所詮、薬師は薬師。『キャリー』してもらわないと先に進めない、最弱。そんなのといても、絶対つまらない」
「何も知らねぇくせにセツを舐めんじゃねぇですよ。ぶっ潰しますよ?」
……今、わかりました。
わーがこいつを嫌いな理由が。
こいつが少し前までのわーと重なって見えたからです。
「性格の悪さ」と「弱さ」っつー違いはありますが、何も知らねぇくせにセツのことを決めつけていたころの自分とこいつは同じなんです。
……ああ、くそ。
むしゃくしゃしやがりますね……!
わーがクロのことを睨んでいると、わーのことを睨み返してくるクロ。
バチバチです。
しばらくそうしていると、クロが言ってきました。
「……わかった。じゃあ、『タチシェスダイヤ』を取って来れたら、認めてあげる。仲間にもなってあげる」
挑戦状……いいえ、果たし状……ですかね。
それを聞いたわーは受けて立つことにしました。
別に、わーにとってはこいつが仲間になるかどうかなんてどうでもよかったんですが。
「……わかりました。それができたらセツのこと、認めるんですね? 持って来てやろうじゃねぇですか、『タチシェスダイヤ』……!」
……あっ。
わーに決定権なんてねぇのに独断で次の行動を決めちまいました……!
で、ですが、仕方ねぇじゃねぇですか!
気に食わなかったんですから!
あと、わーは聞き逃しちゃいませんからね!?
こいつがマーチのこと、モノみたいに言いやがったのを……!
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