第103話(第三章第19話) お出かけ前(現実)
日曜日のお昼過ぎ(現実)。
私は家の前である人を待っていました。
今日はその人とお出かけの約束をしていたので、ゲームは午前中にやっていました。
……………………
あれから戦闘本能に火が点いてしまったマーチちゃんとログアウト・アンド・ログインを繰り返し、ボス連戦に突入していました。
十二体の青プディンと合計六回戦ったあと、一体の銀プディンというモンスターが登場しました。
そのモンスターは、マーチちゃんの攻撃で少ししかHPゲージが減らず……。
……一段階上の上位種ってちゃんと強化されているモンスターだったんですね。
私、猛毒薬や高すぎる攻撃バフポーションを使って戦っていましたから、あまり強くなっている印象がありませんでしたが、マーチちゃんが戦っているのを見て初めてそれを実感できました。
銀プディンを倒すには緑の魔石を八個必要としました。
銀プディン戦を経ると、青プディンの数が十七体に。
この現象を目の当たりにしたマーチちゃんは、増えた! ととても驚いていました。
私はもう何度も経験しているのでもはや当たり前という感覚だったのですが、マーチちゃんはこれを始めて見たんでしたね。
(言葉では伝えていましたが、やはり聞くのと実際に見るのとでは違うようです)
私も初めて見た時はそんな反応だったなぁ、なんてちょっとしみじみとしちゃいました。
私がサポートをしながら、マーチちゃんが戦って十七体の青プディン戦を勝利しました。
それを合計六回繰り返すと、銀プディン二体との戦闘に。
相手の素早さがそれほど早くはなかったため、マーチちゃん一人でも対応することができていました。
前に銀プディンを倒すのに緑の魔石では八個も必要になっていましたから、弾を紺碧錫玉魔石にしてみる、と言ったマーチちゃん。
すると、二発で倒せていました。
魔石の種類によって威力が違うみたいです。
もう一体いるので、その個体には深紅銅玉魔石を使ってみたマーチちゃん。
ですが、深紅銅玉魔石は銀プディンを倒すのに五個必要でした。
同じランクのレアリティであるはずなのに差がありました。
その次は二十二体の青プディン戦。
どうやら青プディンの巣は七回ごとに銀プディンが登場して、銀プディン戦を経るごとに青プディンの数が五体ずつ増えるようです。
一回の攻撃で一体しか狙えない武器では流石にこの数は厳しい、とのことで私が数を減らすことを買って出ました。
そうして。
三体の銀プディン戦、二十七体の青プディン戦、四体の銀プディン戦、三十二体の青プディン戦を経て……。
二回目の四体の銀プディン戦に。
ただ、流石マーチちゃんです。
戦闘が終わって部屋から出ようとするともう一段階上の上位種との戦闘になるであろうパターンだったので、私は銀プディン戦が終わった時にマーチちゃんを止めて注意を促そうとしたのですが、マーチちゃんは私に言われるまでもなく違和感に気づいていたのです。
私に、これまで私が一人でボス連戦をしていた時にどんな現象があったのか、を聞いてきてくれました。
ですから、私が更なる上位種が出てきてそのまま戦闘になる可能性があることを伝えるとマーチちゃんから、自分が倒せそうになかったら守って、とお願いされて。
ちゃんと状況を分析していました。
どこかの誰かとは大違いですね。
ゲートが開くというフェイントに引っ掛かって、再び塞がったゲートに呆けさせられて、肌にひしひしと伝わる殺気で振り向いた時に初めて状況を理解して、必死に猛毒薬を振り撒いていた人とは。
……私です。
マーチちゃんが警戒しながらゲートに近づくと樹の幹の割れ目が素早く塞がって、やはり出させてはもらえませんでした。
現れた二段階上の上位種である白く輝くプディンはマーチちゃんよりも速かったため私が対処することに。
掴んで投げてパーンです。
マーチちゃんが持っていた特大フラスコ(空)にドロップアイテムを回収してみると、それは白銀プディンという名前であることが判明しました。
白銀プディン戦が終わるとマーチちゃんから、今度は連携を考えたい! という提案をされたので、次からは私が主体で戦うことになりました。
マーチちゃんはサポートに徹する、と言ってくれたのですが、私の攻撃力と素早さはあれですので……。
正直に言うと、援護の必要性がまったくない戦いをしていました。
そのため、連携はまったくと言っていいほど取れなくて……。
――「
マーチちゃんにそう評されてしまいました。
GGZ――ゴリラゴ○ブリゾンビ(ゴリラ並みの力を持ったゴ○ブリのようなゾンビ)……。
……悲しかったです。
結局連携は取れず仕舞いで、気づいたら三段階上の上位種・
そこで、マーチちゃんがどうやったら連携が取れるのかを考えたいから、と一旦ログアウトすることに。
私が、今日は午後から予定がある、ということを告げると、今日の冒険はこれでお仕舞にしよう、ということになりました。
ちなみにライザですが、彼女が危険にさらしてしまった女の子たちのパーティ(一人は男の子でしたが)から呼び出しを受けたため、途中で彼女たちがいる第二層の街へと向かっています。
私とマーチちゃんが三体の白銀プディンと対峙している間にメッセージが送られてきていました。
(読んだのは戦闘後ですが)
……………………
そんなこんなで、お昼を済ませてお出かけ用の服に着替えて待っているわけですが……。
……来ませんね?
約束の時間を過ぎていたため、連絡した方がいいのかな? と思っていると。
――がばっ
無言で後ろから抱きつかれました。
一瞬、すごく怖くなったのですが、聞こえてきた声で安心します。
「……ふふふ、天使。私の天使……!」
囁きが聞こえてくる方へ顔を向けると、そこにはよく知っている人がいました。
「お疲れさまです、ナオさん」
そうです。
今日一緒にお出かけする約束をしていたのは、このナオさんなのです。
ナオさんはモデルみたいにきれいな人です。
内巻きカールのブロンドのミディアムヘアに若干垂れ目で垂れ眉、左の目尻に黒子があって、ふっくらとしている唇が色っぽく。
百八十センチという長身で顔は小さく、脚はスラッとしていて長めで。
四十代とのことですが、二十代にしか見えません。
私の憧れの女性です。
そんなナオさんはノースリーブにデニムのパンツにパンプス、手にはポーチを持っていました。
私が笑顔で挨拶をすると、表情を変えずに私を抱きしめる腕の力を強くするナオさん。
「……疑問。なんでキミは私の子じゃないの?」
「そんなこと言われても……」
ナオさんってメールだと明朗快活そうな印象を受けるのに、実際に会ってお話しすると物静かなんですよね。
表情の変化もあまりないのでちょっと何を考えているのかわかりづらいところがあるのですが、私のことをとても気遣ってくれるのでいい人なのは間違いありません。
私が回答に困っていると、ナオさんは手を差し出して言ってきました。
「……お出かけ、楽しむ。新作ケーキ、待ってる……」
「……はい!」
私はナオさんの手を取って。
私とナオさんはラ・カージュという洋菓子屋さんがある駅の方へと向かって行きました。
……うーん。
やっぱり似てますね。
ナオさんとイチ姉。
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