第102話(第三章第18話) マーチに武器を2

 目の前には大きな木がそびえ立ち、右側の大きな大きな樹の幹が大きくひび割れて中へ入るように誘導してきます。

 私はマーチちゃんと顔を合わせてボス部屋に入っても大丈夫か確認しました。

 すると、頷いたマーチちゃん。

 問題なさそうです。

 一応ライザの方も見ると行けそうだったので、私たちは幹が割れてできたゲートをくぐりました。


 部屋に入るとゲートが塞がれます。

 そして現れる十二体の青プディン。

 マーチちゃんの初陣です!


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名前:マーチ     レベル:196(レベルアップまで8,326Exp)

職業:商人(生産系)

HP:343/343

MP:417,880/186

攻撃:273(×0.9)

防御:225

素早さ:217(×1.48)

器用さ:423(×1.1)


装備:『速さのローブR』

   『速さのバンダナR』

   『商人のスリングショット』

   『速さのブーツR』


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マーチの所持アイテム一覧

・踏破者の証

・帰還の笛

・特大フラスコ(神聖水)16/16

・特大フラスコ(MP回復ポーションL Lv:6)13/16

・特大フラスコ(猛毒薬L)16/16

・特大フラスコ(猛毒薬L)15/16

・特大フラスコ(空)0/16

・特大フラスコ(プディンの粘質水)8/16

・上質な回復草×9

・上質な回復草×9

・上質なMP回復草×9

・上質なMP回復草×9

・緑の魔石×5

・緑の魔石×99

紺碧錫玉こんぺきしゃくぎょく魔石×1

・紺碧錫玉魔石×99

深紅銅玉しんくどうぎょく魔石×1

・深紅銅玉魔石×99


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 「タチシェスの自然保護区」は、この装備をつけていないと入れない! ということがないため、マーチちゃんは装備を素早さ重視のものに替えていました。

 マーチちゃんも種族が「精霊族」なので攻撃力が下げられてしまっているのが少し気懸かりではありますが、それでも重要なのは素早さだとマーチちゃんは言っていました。



――「一回の攻撃で倒せなかったとしても何回も繰り返せば必ず倒せるの。だから、相手から攻撃をもらわないようにすることの方が大事なの」――と。



 確かにその通りかもしれません。

 マーチちゃんには『ポケットの中のビスケット』がありますから「商人のスリングショット」の欠点である、魔石が切れると攻撃できなくなる、という欠点が彼女に限っては欠点とはなりにくいのです。

 MPがあれば弾をつくれるわけですから。

 まさに、マーチちゃんのための武器って感じです。

(クロさんはマーチちゃんのスキルを知らなかったはずですが)


 ちなみに、このダンジョンに向かう前に倉庫から紺碧錫玉魔石と深紅銅玉魔石を一つずつ引き出して増やしているマーチちゃん。

 抜かりがありません。

(緑の魔石を持っているのは、私がいない間に第二層のエリアボスに挑んで、勝ってドロップしたものとのこと)

(私の「白衣」に特殊効果をつけるための素材を増やす際に倉庫に預けていたのを思い出して引き出していました)


 一個目の魔石を番えるマーチちゃん。

 ゴムを張って狙いを定めています。

 敵の数が多いので、私は何かあった時にすぐに動けるように構えていました。


「……それっ!」


 マーチちゃんが射た魔石は一体の青プディンへと飛んでいきます。

 マーチちゃんの武器はいわば遠距離攻撃。

 遠くにいる敵を攻めることが可能なのですが、初めてだからでしょうか?

 少し軌道が逸れていて、当たるには当たるでしょうが、だいぶ端っこの方になってしまいそうでした。

 これでは大きなダメージにはならないのではないか? と危惧していたところにそれは起きました。



――弾が急に動きを変えたのです!



 それは、青プディンの中心目がけて軌道が修正されているように見えました。

 狙われていた青プディンも驚いているようでした。

 魔石は結局、青プディンの中心に当たることはありませんでしたが、それでも確かに中心の方に寄っていっていて……。


――パァアアアアンッ!


 魔石が命中した青プディンが弾け飛びます。

 一撃……。

 クロさんがつくった武器、強すぎませんか?


「っ! やった、やったの! ボクも戦える……! これでやっと、お姉さんたちの役に立てるの!」


 マーチちゃんがとても嬉しそうだったので、よかったということにしておこうと思います。

 ……けれど、マーチちゃん。

 マーチちゃんは最初から役に立ってたよ?

 戦闘で何もできていなかった、ということがマーチちゃんにとっては他のことが霞んでしまうほどに大きな悩みだったのでしょうか?



 それから、マーチちゃんはスリングショットの練習を続けました。

 中には一撃で倒せなかった青プディンもいましたが、ライザによるとそれは、相手が守りの態勢に入っていたから、とのことでした。

 相手のHPは「74」で防御力は「170」らしく、マーチちゃんの今の攻撃力で攻撃が当たると「117~156」のダメージを与えることができるそうです。

 ただ、このゲームには「掠り」、「構え」、「通常」、「急所」、「致命的」という当たり判定があって、


「掠り」だと四分の一の威力に、

「構え」をされていると二分の一に、

「急所」に当たると二倍に、

「致命的」な一撃になると四倍の威力になる

(「通常」は一倍)


 とか。

 だから相手に構えられると威力が「58~78」になって一撃で倒せなくなることがある、という講義をライザから受けました。

 あと、このゲームにおいて「器用さ」は命中率(特に遠距離攻撃の)に関係しているとのことで、先ほどマーチちゃんの放った弾が曲がったのは器用さが高かったから補正がかかったのだとライザが言っていました。


 兎に角。

 マーチちゃんが魔石を射て。

 接近を許してしまった青プディンは私が対処して。

 そうやって十二体の青プディン全てを倒し切りました。


 マーチちゃんはボス戦に自分も参加して勝利できたことが余程快感だったのか、まだ戦いたい武器の練習がしたい! と言ってきました。

 そのため、私とマーチちゃんでボス部屋前のログアウト・アンド・ログインをすることに。

(ライザにこれをやらせるのは酷だと判断したため、最上階の安全地帯セーフティエリアで待機してもらうことになりました)


 十二体の青プディンとの再戦。

 マーチちゃんから、できるだけ一人でやってみたい、という要望があったので私は万が一のために控えているだけでした。

 基本的にはマーチちゃんが一人で全ての青プディンと対峙しています。

 彼女の顔は生き生きとしていて、私も楽しくなって。

 私はふと思ったのです。



――マーチちゃんをこんなに笑顔にできるあの人に、私たちの仲間になってもらえないかな?



 と。

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