第95話(第三章第11話) 特殊効果の付与
「マーチ。セツに見せてやってください。嫌っつっても
「うっ。……わかったの」
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名前:マーチ レベル:195(レベルアップまで135Exp)
職業:商人(生産系)
HP:341/341
MP:419,619/185
攻撃:272(×0.9)
防御:224
素早さ:207(×1.32)
器用さ:418(×1.1)
装備:『寒熱対策のローブ』
『防塵ゴーグル』
『速さのペンダントR』
『速さのブーツR』
スキル:『収納上手×1』☆☆☆☆
『石像化』☆☆
『ポケットの中のビスケット+』☆☆☆☆
ジョブ専用スキル:『交渉』(ジョブクラス:L)
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――マーチ所持金121,329,243,870G
「おおう……っ」
これがライザに説得されたマーチちゃんが私に見えるようにしてくれた彼女のステータス。
マーチちゃんは、私がテストでこっちに来られない間に『踏破者の証』を増やしては売って、という行為を繰り返していたらしいのです。
所持金が1,000億を超えてる……。
すごい! と賞賛するでもなく、何やってるの? と呆れるでもなく、もはや何も考えられません。
私、ただただ立ち尽くしていました。
ライザによると、一個4万Gで売れる『踏破者の証』をマーチちゃんが増やして売りさばき荒稼ぎをしてしまったことで、まずいと判断した「運営」がゲーム内の一日で売れるアイテムの個数に制限をかけたのはまず間違いない、とのこと。
ほへぇ……。
プレイヤーの動きで仕様が変更されることってあるんですね……。
などという呑気な感想しか出てこない私。
この時の私は、感覚がおかしくなっていました。
私が落ち着いていられたのは、私よりも激しく取り乱している人がいたことが大きかったのでしょう。
……クロさんです。
クロさんは、あの数の素材が短時間で集まってしまったことにも、あの大金をポンと出されたことにも、驚きを隠せないようでした。
ひどく怯えた様子で
「……変態覗き魔……ポーションオバケ……ロリ富豪……っ。アブノーマルパーティ……」
とか言っていました。
……ポーションオバケって私のことですか?
ちょっと可愛い表現ですね。
(今までがゴリラとかゾンビとかGだったので)
でも、そういう感じの名前じゃなくて別の呼び方がいいです……。
放心状態になっていたクロさんの意識を引き戻して、早速初期装備に特殊効果をつけてもらおうとしました。
ですが、クロさんの方の準備がまだ整っていないそうです。
今納めた「スクオスの金糸」がまだ品質を上げられていなかったからです。
『数だけ強くなれる』は一回使用するのに四秒ほど要するみたいで、これから大体六時間くらいかかるとのこと。
なので、特殊効果の付与は明日ということになりました。
……あっ。
クロさんの目の下にクマがあって、私に恨みがましい目を向けてきたのって……。
私はクロさんに言いました。
「あ、あの……。急いでないので、ゆっくりでいいですよ……?」
お身体を気遣ったつもりなのですが……。
クロさんにはこう言われて。
「……催促。あのMPポーション、そういう意味。じゃなきゃ、あんなの渡さない。推測、遅れたら、ネットに書かれる、悪口。生産職、評判、大事……」
「い、いえ! そんなつもりは……!」
「……お引き取り。邪魔、合成の」
私とライザは鍛冶屋さんから追い出されてしまいました。
マーチちゃんだけは追い出されなかったのが謎でした。
(あとから自分でお店から出てきました)
時間ができてしまい、けれどやることもないので、今日はもう終わろうか、という話になった時です。
ライザに指摘されました。
「……いつ言おうかと思ってたんですが、『鍵』使ってなくねぇですか?」
「「……あっ」」
……ヤバかったです。
素材とお金のことで頭がいっぱいになっていて大事なことを忘れていました。
ライザに教えてもらわなかったら、クロさんの機嫌を損ねていたかもしれません。
というわけで、この日はマーチちゃんが増やした『武器・防具スロット解放の鍵』を「薬師の白衣」に使い、所持アイテムを整えてから終了しました。
ちなみにですが、「薬師の白衣」のスロットは四つ解放しています。
(スロットをどれだけ解放できるのかが気になって確かめたら四つだった、というだけのことですが)
……………………
六月一日(木曜日)。
現実では夕方にログインして、宿屋の受付でみんなで集まってから外に出てみると、鍛冶屋さんのお店の前でクロさんが腕組みをしながら待っていました。
「クロさん!」
私が駆け寄ると、
「……遅い!」
ガンを飛ばされました。
彼女のことをよく見てみると、昨日(現実)会った時よりもクマが濃くなっていて……。
既にご機嫌斜めの様子です。
ほんと、昨日終わる前にライザが声をかけてくれてよかったです……。
装備のスロットはこっちでどうにかする、と言っていましたから、それができていない状態のままクロさんの元に行っていたら睨まれるだけでは済まなかったでしょう。
……ありがとう、ライザ。
クロさんがバイトをする鍛冶屋さんにて。
私は「薬師の白衣」に特殊効果をつけてもらいました!
それがこちら!
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薬師の白衣……薬師の白衣
特殊効果:『全地形ダメージ無効及び全地形による悪影響無視』
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なんと!
「ローブ」や「ゴーグル」、「ウエットスーツ」や「シュノーケル」が持っている特殊効果をこれ一つに纏めてくれたのです!
『名匠たる所以』、すごすぎます!
「い、いいんですか!? こんなすごい特殊効果をつけてもらって……!」
と私がクロさんに尋ねたら、少し悲しい答えが返ってきました。
「……絶縁。サービスしてあげたから、もう来ないで、厄介なパーティ」
「……」
私たちはクロさんに相当嫌われてしまったみたいです。
「……その子はいい。来て、大丈夫」
「……」
訂正。
嫌われたのは私とライザだけみたいです。
マーチちゃんはクロさんに会いに行ってもいいとのこと。
……なんで?
兎にも角にも。
これで耐久値に悩まされることなく、第三層の地形も気にしなくていい装備にすることができました。
街の門番さんに止められることはなく外に出られます。
そこはもう水の中だというのに普通に動けるし、息をすることもできました。
すごく薄い膜のようなものに覆われているみたいで濡れることすらありません。
これはすごい装備だと思います!
二人が、というか、第三層にいる私以外の全てのプレイヤーが『ウエットスーツ』と『シュノーケル』をつけているので若干浮いている感じは否めませんが。
(装備はマーチちゃんたちが第三層に来た時にライザの分も合わせて買っていたそうです)
さて。
『第三層水中エリアダンジョン4・アホクビ海底谷』へ向かいましょう!
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