第89話(第三章第5話) 耐久値
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寒熱対策のローブ……(98/98)
気候によるダメージやステータスの変化を防ぐことができるローブ。
耐久値『98』。
相手の攻撃力が「999」までの場合、攻撃を受けると耐久値が「1」減る。
相手の攻撃力が「1,000」以上の場合、「998」を引いた分の数値が
耐久値から削られる。
また、装備しているプレイヤー自身の攻撃力が「1,000」を超えていた場合、
攻撃した時「999」で割った数値(小数点以下繰り上げ)が耐久値から削られる。
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……。
マーチちゃんに教えてもらって調べてみたのですが、装備に耐久値の項目が追加されていました。
前者の攻撃を受けたら耐久値が減る、というのは傷んでしまうからということで理解できるのですが、問題は後者です。
……何、この仕様?
自分が攻撃しても減るって……。
えっと、私の今の攻撃力ってどれくらいでしたっけ?
――攻撃:347,420(×0.9・種族補正)(×2,622.44・バフ補正)
……あっ。
これ、ダメですね……。
単純計算で「347」。
耐久値は「98」しかないので、どう計算しても私が一回攻撃するだけで装備が壊れます。
これって改悪なのでは……? と呆然とする私に、マーチちゃんの解説が続けられました。
「装備が壊れたら身に着けることができなくなって、強制的に初期装備に戻されるそうなの。初期装備だけは耐久値が『
また確認。
するとマーチちゃんが言っていた通り、『素早さの白い靴』や『防塵ゴーグル』、『魔力のペンダント』にもそれぞれ耐久値が設定されていました。
これは、相手の攻撃を受けた部分によってその部分に装備している武器や防具の耐久値が下がる、ということなのでしょうか?
それと、こちらが攻撃したことによって下がる耐久値に関してですが、
服などの胴体を守る防具は基本的にどんな攻撃をしても減り、
靴などの足元の防具は踏ん張りを利かせた時や蹴りなどをした時、
帽子やゴーグルなどの頭に着ける防具は頭突きなどをした時
に減るとのことです。
頭突きって……。
例外だったのはペンダントなどのアクセサリーというカテゴリーの防具。
これだけはこちらが攻撃してもその耐久値は下がらないそうです。
……設定がごちゃごちゃしてて覚えづらいです。
「装備が壊れちゃったら買い直さなくちゃいけないってこと? ……あっ、だからアイテムを売りにくくしたのかな? お金を大事に使わせるために……。あんまり壊さないようにしたいけど、私の攻撃力だと一発でアウトなんだよね……。でも、装備が壊れたらすぐに初期装備に替わってくれるってことは裸になっちゃうってことはないってこと、だよね? それなら、なんとか……」
私はマーチちゃんの話を纏めました。
理解するために口にも出します。
そして私が率直な感想を述べると、マーチちゃんが一つ訂正を入れてきました。
それは、私の重視することが恥ずかしくないかどうか、に偏ってしまっていたため気づかなかった重要なことで。
「……確かにそこも大事だけど、心配する必要はないと思うの。このゲーム、18禁じゃないの。だからそういうのは運営がしっかり守ってるはず……そうじゃなくて!
――服やゴーグルがあるからダンジョンに入れてるのに、それがなくなったら最悪、一からのやり直しにさせられることだった考えられるの!
第二層や第三層は特殊なつくりをしてるから……!」
「あ……っ」
……そうでした。
第二層の「リスセフ遺跡」以外のダンジョンでは急激に暑かったり反対に寒かったりするため、『寒熱対策のローブ』がないと時間ごとにダメージを受けたりステータスが下がってしまったりします。
砂嵐が発生する場所もあり、『防塵ゴーグル』がないと視界が悪すぎてとても進めたものではありません。
第三層の「アホクビ海底谷」ダンジョンに至ってはずっと水の中です。
『水中自在のウエットスーツ』と『空気のシュノーケル』がなければダンジョンを進むどころかダンジョンに入ることすらままならないでしょう。
そんな必須の装備をもし、ダンジョン攻略中に壊してしまったとしたら……?
第二層ではまだなんとかなるかもしれません。
ですが第三層、「アホクビ海底谷」で、特に「息継ぎの心配がなくなる」という『空気のシュノーケル』がなくなってしまったとしたら、最悪のケースも想定されます。
――窒息死するというケースが。
このゲームは無駄にリアルを追及してしまっている部分がありますから、その可能性がないとは言い切れません。
モンスターに、ではなく、
まだ第三層のエリアボスを倒せていなかったということが大きく響いてきていました。
「
水の中から出ることが叶わない「
私はまだ行っていませんが、エリアボスがいるであろうB12階(プディンの巣がB11階にあったため)も水で満たされていて、私の高すぎる攻撃力が誤作動を招いたとしたら、エリアボスを倒せたとしてもその反動で装備を失って第四層へ繋がるゲートに辿り着く前に力尽きてしまうかもしれないのです。
なんとか第四層に行けることもあるかもしれませんが、それはエリアボスを一撃で倒せた時の話……。
攻撃を躱されたり、万が一、一撃で倒せなかったりしたら……。
考えただけでも鳥肌が立ちます。
さらに言ってしまえば、第二層と第三層を攻略するのに必須となる装備があったわけですから、第四層以降にもこの仕組みが継続されている可能性は大いにあります。
第三層を運よく突破できたからと言って、第四層も上手くいくとは限りません。
……対策を立てなければならないでしょう。
「うーん……。『上書き』、とか? 低めの攻撃バフポーションをつくって攻撃力を抑えた方がいい、のかな……?」
私が考えて思いついた解決策はこれでした。
ですが私の攻撃力を減らすことには、マーチちゃんは首をひねりました。
「うーん、折角の優位性を失うのは……――あっ」
そこで彼女は閃きました。
「そうなの! このシステムが導入されて強化された職業があるの! その職業の人に頼んでみるっていうのはどう!?
――鍛冶師に!」
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