第77話(第二章第35話) トリックスター

 ポーションをつくる前に、エリアボス戦です。

 この前は私一人で戦って第三層に行ってしまいましたから、マーチちゃんたちも行けるようにしたいです。

 一緒に冒険がしたいですから。

 ちなみに、マーチちゃんが『踏破者の証』を使っても第二層までしか行けませんでした。


 というわけで、『リスセフ遺跡』最上階、エリアボス前の安全地帯セーフティエリアへ。

 隠し部屋から移動してきたわけですが、その道中、モンスターハウスを通ることになります。

 またあの数と戦わなければいけないのかと危惧していたのですが、そんなことはありませんでした。

 敵はいなかったのでささっと通過。

 ライザさんの指示に従えばモンスターハウスの外でもリスセフと遭遇することなく、北側の上り階段に辿り着けました。

 ……五体の緑プディン戦は行われましたが。


 今は「レメディ」に触れたあとで、最終確認をしているところです。



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名前:セツ      レベル:196(レベルアップまで7,059Exp)

職業:薬師(生産系)

HP:225/225

MP:344/344(+1)

攻撃:386,023(×2,622.44)

防御:500,363,876(×2,684,355.56)

素早さ:797,233(×2,622.48)

器用さ:382


装備:『寒熱対策のローブ』

   『防塵ゴーグル』

   『魔力のペンダント』

   『速さの白い靴』


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名前:マーチ     レベル:195(レベルアップまで261Exp)

職業:商人(生産系)

HP:341/341

MP:185/185

攻撃:302

防御:224

素早さ:207(×1.32)

器用さ:380


装備:『寒熱対策のローブ』

   『防塵ゴーグル』

   『速さのペンダントR』

   『速さのブーツR』


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セツの所持アイテム一覧

・踏破者の証

・帰還の笛

・特大フラスコ(神聖水)16/16

・特大フラスコ(神聖水)16/16

・特大フラスコ(神聖水)16/16

・特大フラスコ(MP回復ポーションL Lv:4)15/16

・特大フラスコ(猛毒薬L Lv:4)16/16

・特大フラスコ(プディンの粘質水)8/16

・上質な麻痺草

・緑の魔石×109

・赤い魔石×54

・青い魔石×74

・黄色い魔石×221

・黄金の魔石×52


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マーチの所持アイテム一覧

・踏破者の証

・帰還の笛

・特大フラスコ(神聖水)16/16

・特大フラスコ(MP回復ポーションL Lv:4)15/16

・特大フラスコ(猛毒薬L)16/16

・特大フラスコ(猛毒薬L)15/16

・特大フラスコ(プディンの粘質水)8/16

・上質な回復草×9

・上質な回復草×9

・上質なMP回復草×9

・上質なMP回復草×9


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 今回は猛毒薬を試す予定なのでアイテムはそんなに持ってきていません。

 ライザさんが大丈夫と言っていたので通用するはずです。

 もし仮に猛毒薬が効かなかったとしても、私もライザさんも第一層のエリアボスを一発で仕留められるほどの攻撃力を持っているのでどうにかできると思います。

 マーチちゃんにプディンの粘質水が入った特大フラスコ、上質な回復草や上質なMP回復草を増やしてもらっているので、持久戦となってもHP回復ポーションやMP回復ポーションをつくれる状態にはしています。

 最終手段として『帰還の笛』を使って逃げるという選択肢もありますし、手抜かりはないでしょう。


 しっかり確認して大丈夫だと判断した私は大きな扉の方へと向かおうとしました。

 しかし、そこでマーチちゃんに呼び止められます。


「よし、それじゃあ――」

「待ってほしいの、お姉さん。……ライザ。ステータスを確認させてほしいの。ボクはあなたのことがよくわからない。よくわからない人と一緒に未知のエリアボス戦はできないの」


 マーチちゃんはライザさんの強さを疑っているようでした。

 ライザさんは第一層のエリアボスを一発で倒して見せたのに……。

 ステータスを見れば納得する、とマーチちゃんは言いましたが、ライザさんは渋ります。


「わたくしは、このゲームにおいてステータスは他人に見せるべきではないと教わりましたが? このゲームには『決闘』なるものが存在しますから、ステータスを知られることは、スキルを奪われることに直結するのではございませんか?」


 ライザさんの言い分は正しいように思えます。

 どれだけ強い状態でゲームを始められているかはわかりませんが、経験値が入らない彼女はこれ以上強くなれません。

 ステータスを見せないことで彼女はその身を守ろうとしているように受け取れました。


 私はマーチちゃんを宥めようとしましたが、聞き入れてはもらえず……。

 その様子を見ていたライザさんが折れる形になりました。


「おかしいの! 納得ができないの! ステータスを見れば何かわかるかも――」

「ま、マーチちゃん、無茶言っちゃダメだよ……!」

「セツ様、結構でございます。仕方がありませんので、わたくしが折れて差し上げます。わたくしのステータスはこちらでございます」


 そう言って私に触れてから、私たちにステータスが見えるように表示するライザさん。


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名前:ライザ     レベル1(レベルアップまで--)

職業:鑑定士(生産職)

HP:225/225

MP:291/343

攻撃:386,023(×2,622.44)

防御:500,363,876(×2,684,355.56)

素早さ:797,221(×2,622.44)

器用さ:382


装備:『寒熱対策のローブ』

   『防塵ゴーグル』


   『最初の靴』


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「な、なんなの、この数値……!?」


 マーチちゃんが目を見開きます。

 ライザさんのステータスは確かに強いものでした。

 強いなんてものじゃない……。

 けれど、この数値には違和感があります。

 ……いいえ、違和感しかありませんでした。



――それに、この感じはいったい……?



 押し寄せてきているのは倦怠感。

 私は立っていられずに地面へと崩れ落ちました。

 そのまま倒れ込もうとする私の身体を慌てて支えるマーチちゃん。


「お姉さん!? ……っ! お前! お姉さんに何をしたの!?」


 マーチちゃんがライザさんを睨みつけます。


「わたくしは何もしていませんよ? セツ様は体調が優れなかったのでございましょうか? 無理をなさってはいけませんよ?」


 ライザさんはそう言いますが、



――私を心配する素振りは見せていなくて。



「しらばっくれるな、なの! だったらどうしてステータスがお姉さんのものと似通っているの! それに倒れたお姉さんのことを気に掛けている様子が見られない! お前が何かしたとしか考えられないの!」


 問い詰めるマーチちゃん。

 すると、深い溜息を私の耳が捉えました。



「……はぁ。二人称なーがうるせぇから使ったらこんなことになりやがりました。マジでめんどくせぇです。本当だったらエリアボスと一戦やってる時にやる予定だったっつーのに……」



 その声は間違いなく彼女のものでした。

 でも、その口調は彼女のものとは思えないほどに粗暴なもので……。

 もう、何がなんだかわからなくなっている私が発した言葉に彼女が返してきます。


「……ライザさん? なんで……っ」

「『なんで』? 楽しそうでムカつきやがったからですよ! 一人称わーは全然楽しくさせてもらえてねぇってーのに! だから、



――クソザコのわーと恵まれてるなーのステータスを入れ替えさせてもらったんです!



『トリックスター』の力で!」

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