第74話(第二章第32話) 上質な素材
ライザさんが言いました。
「あの場所だけ奥に空間がございます。炎や毒を使用すれば通れるようになるはずでございます」
と。
私は猛毒薬を持ってきていなくて焦っちゃったけれど、私には頼りになる仲間がいました。
マーチちゃんが猛毒薬を持ってきてくれていたのです!
マーチちゃんがそれを、ライザさんが示した場所に使うと道を塞いでいた茨が消え、奥に進めるようになりました。
ライザさんの先導でついて行くと、また少し広い空間があって、そこには、
――大きなハート型の赤い実をつけた植物がありました。
「ライザさん、これは……!?」
「上質な回復草――回復草より品質が良く、レアリティが一段階高いアイテムとのことです。隠し部屋から訪れることが可能な二つ目の隠し部屋でございますので、わたくしたち以外ご存じないかもしれませんね?」
私は思わずライザさんに聞いてしまっていました。
この場所のことも、ここにあるアイテムのことも知りたい情報を与えてくれるライザさん。
私は知らないことが多いので本当に助かっています。
私たちが上質な回復草をもらっていい、とライザさんが言ってくれたのでお言葉に甘えることにしました。
マーチちゃんに回収してもらいます。
スキルを使ったライザさん曰く、このダンジョンには行った方が良い場所はもうないとのことで、私たちは『帰還の笛』を使って街まで戻りました。
時間はそれほど経っていなかったので宝探しを続行することに。
ライザさんも手伝ってくれるとのことで、これなら今日中に探し終えられるかもしれません。
ライザさんに協力をお願いすると何故かマーチちゃんが不機嫌になってしまいましたが……。
やっぱりマーチちゃん、ライザさんのことが嫌いなのかな……?
……………………
宝探しは思いの外順調に進みました。
『天からのお告げ』がヤバすぎたからです。
チートです、あれ。
『アホクビの住む洞』ダンジョン二階南側にある色の違う壁をすぐに見つけてしまいました。
薄暗くて見分けづらいのに本当に一瞬で。
それはスイッチのようになっていて押すと、洞になっている木の壁の一部が丸く切り抜かれたように奥へと移動しました。
倒れるのではなく、スライドするように。
それからその切り抜かれた丸い木の板は、右の方へと転がって壁の裏に収まりました。
どうやらそういう開き方をする扉だったようです。
私たちはその奥の部屋で『HP・MP完全回復薬』を手に入れました。
そして、このダンジョンにも行った方がいい場所が存在しているようで……。
ダンジョン二階の北側にいくつもある大きな木のブロック(1.8m四方くらい)をライザさんの指示通りに動かしていくと一つのブロックに逆U字型の扉が出現しました。
中には上質なツヨ草がありました。
マーチちゃんは、こんなのベータテストにはなかった……、と嘆いていました。
ちなみに、ライザさんによるといくつかの木のブロックをあのように動かしたあとに上から見るとアホクビの絵が出来上がっているとのことです。
まだ時間にかなり余裕があったので、『タチシェスのいる自然公園』へ。
今回は一階東側にライザさんのスキルの反応があったということで先にそちらへ行くことに。
十個以上もある苔の生えた岩を決められた順番に触れたことで近くにあった小さいけれど深い池の水が引いていき、その底に上質なヨワ草がありました。
メインの宝探しの方は……。
三階西側の左右で数が違う岩がある場所で、その岩の数が左右で同じに見える角度があり、その位置で数分間岩を眺め続けていると、数が少ない右側の、左側と比べた時にそこに岩があったら左右で対象になるというところに宝箱が出現しました。
中身は『魔法の槌』。
……武器です。
私たちには装備できません。
せめて防具だったら……。
でも一応回収しました。
まだまだ時間があったので、最後の『スクオスの森』へ。
一階北側階段付近にある大樹の根元に地図を持った私たちが近づくと、突然ゴゴゴゴッと地震のような振動に見舞われて立っていられなくなります。
大樹を支えにしていると、その大樹は徐に浮き上がり始めました。
私たちを乗せてどんどん高くまで昇っていく大樹。
それは有名なアニメ映画のワンシーンのようでした。
(ちなみにですが、大樹が地面から離れようとした時、誰かはわかりませんが一人のプレイヤーが大樹に駆け寄ろうとしていました)
(ですがその人はいつの間にか発生していた見えない壁に当たって、離陸しようとする大樹に乗ることは阻まれていました)
大樹は高度を増していき、空高くへ。
何故か空に浮くようにして存在していた宝箱が、大樹が浮き上がった時その根っこが一緒に空へと持ってきた土の上に乗り、大樹は上昇するのを止めました。
……もしかして宝箱をゲットするためだけにここまでの仕掛けを?
なんて大掛かりな……。
ちなみに中身は『武器・防具のスロットを解放する鍵』でした。
スロットって……?
マーチちゃんなら知っていそうと思ったので彼女に確認すると、何故かライザさんから、スロットとは装備におけるスキルのようなもの、という答えが返ってきました。
マーチちゃんは意気揚々と答えようとしていたのに自分の役目を横取りされたような形になって、ますます機嫌を悪くさせてしまいました。
うぅ、仲良くしてほしいんだけど……。
宝箱の中身を回収すると、根っこが持ち上げていた地面に三つの魔法陣が現れました。
左から順に、一階入口付近、二階聖水の祠付近、三階
ライザさんが四階に行きたいと言ったので、私たちは一番右の魔法陣の中に入りました。
転移する前にライザさんが、この魔法陣も最初のダンジョンにあったように地図を持っていないと発動しない仕組みになっている、と教えてくれました。
それを受けて私は、もし転移するタイミングで他のプレイヤーさんがちょうど転移先にいたらどうなるの? 怖いこと(スプラッター映画みたい)にならない? と危惧したのですが、そんなことにはなりませんでした。
そこに他のプレイヤーさんはいなかったので。
ただ、間近に二体のスクオスがいて転移直後に襲い掛かってきました。
投げて返り討ちにしましたが。
ライザさんの希望で四階に行くことになった私たちはボス部屋前の安全地帯へ。
階段を上ろうとすると久しぶりの光景を目の当たりにしました。
進路と退路を塞がれたのです、茨で!
そして開かれるボス部屋への道!
私は混乱しましたがマーチちゃんによる説明で、クリアしていない人が同行してると再度ボス戦をする必要が出てくることを知りました。
三体の黄プディン戦を難なく制覇します。
マーチちゃんはライザさんの強さを見たいと言っていましたが、ライザさんが複数を相手にするのはやったことがないから自信がないと断ったため、私が戦いました。
そして四階へ。
エリアボスがいる部屋へと続く扉とは反対側の南側の壁――その一部は実は幻影ですり抜けられるようになっていました!
奥には上質な猛毒草があり、入手します。
……質がいい猛毒草ってどういうことなんでしょう?
ちょっと不思議な表現です。
上質な素材を手に入れたあと、ライザさんが提案してきました。
「折角ここまで参ったのでございますから、エリアボスに挑みたいと存じます」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます