第65話(第二章第23話) ラストスパート1

――「黒光りするアレ(通称:G)ポーション」



 マーチちゃんに不名誉極まりない名称をつけられてしまいましたが、ぐいっといっちゃいましょう! ぐいっと!


========


名前:セツ      レベル:146(レベルアップまで569Exp)

職業:薬師(生産系)

HP:170/170

MP:4/259(+1)

攻撃:294,237(×2,622.44)

防御:379,567,876(×2,684,355.56)

素早さ:600,547(×2,622.48)

器用さ:287


装備:『寒熱対策のローブ』

   『防塵ゴーグル』

   『魔力のペンダント』

   『速さの白い靴』


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 あるだけのMPをつぎ込んだら、素早さバフポーションL(Lv:6)が出来上がりました。

 これはゴリポ……コホン!

 攻撃バフポーションと同じ数値です。

(装備分、素早さは少しだけ加算されていますが)

 素早さ60万超え……。

 ちょっと、というか、かなり? やりすぎた感は否めませんが、これも死なないようにするため……!

 手を抜いてはいけないところです!


 これで一からやり直しになるリスクは格段に下げられたと言っていいでしょう。

 ですが、まだ完全ではありません。

 やはりまだちょっと不安があるHPをどうにかしたいところです。

 市販のものでは時間が経つと超過分がなくなってしまいますから通常のプディンを見つけないといけないのですが、六時間探しても出会えなかったんですよね……。

 どうしたものかと考えていると、マーチちゃんが言ってきました。


「……ふう。所持アイテム欄がいっぱいになったから、今日はこれをポイントに替えて終わろうと思うの。お姉さんはまだやるつもりなの?」


 時刻は②の十七時五十三分。

 現実で言えば十時半ちょっと前といったところ。

 いつもより終わるのが少し早いような気がしました。

 尋ねてみると、これからちょっとした検査があるとのことです。


「そっか。じゃあ私も終わろうかな」


 マーチちゃんがログアウトすると言うので、私もログアウトすることにしました。

 やりたいことも終わっていましたし、一人でやるのはちょっと寂しい、そんなふうに感じて。

 私たちは今、別行動をすることが多いのですが、それでも彼女がログインしているのとしていないのとでは何かが違う気がしたのです。


 ということで二人で宿屋を出て、マーチちゃんがポイントへの変換を行います。



パーティ名:ファーマー――291,412ポイント



 ……めっちゃ上がってる。

 確か、五月三日が終わった時には70,000ポイントくらいだったはずなのですが、それが四倍以上になっていました。

 イベントが始まって、現実時間で二日(正確には一日半)が経とうとしていますから、二倍になるならわかるのですが……四倍?

 つい、何をしたの? という顔でマーチちゃんを見てしまいます。

 すると、私の表情の意味を汲み取った彼女がこう返してきました。


「……その顔はボクがしたいの。ボクは昨日と同じことしかしてないから、稼げたのは合計で140,000ポイントくらい。残りの150,000ポイントはお姉さんが稼いでいるの。いったい何をしたの? ……まあ、大方の予想はついてるの。レベルがめっちゃ上がってるから、例のアレでゲットした魔石をポイントに替えたんでしょ?」


 マーチちゃんの言う「例のアレ」とはボス周回のことです。

 そういえば、それを行って所持アイテムの一枠でスタックしきれないほどに集めた緑のE魔石と錫のE魔石をポイントに変換したら149,000ポイントになったって言われたような……。

 めっちゃ上げたの、私でした……。

 っていうか、マーチちゃんすごい。

 私のこと、お見通しなんですね……。


「あ、あはは……。そうです……」

「はぁ……」


 苦笑いすることしかできない私。

 マーチちゃんが溜息を零します。


 そのあと、ログアウトしようとしたマーチちゃんを私は止めました。


「それじゃ、ボクは――」

「あっ! 待って、マーチちゃん! これ、マーチちゃんに!」

「え? 何、この金の旗……――っ!?」


 私はマーチちゃんに渡したのです。

 『踏破者の証』を。


「こ、ここここ、こんなもの、どこで!?」


 声が震えているマーチちゃん。

 ここまでテンパっている彼女を見るのは新鮮な気がします。


「えっ? 例のアレをしてる時に出てきたレアっぽいモンスターを倒したら出てきて……。あっ、これがそのモンスターを倒した時に出てきた魔石、ね」

「っ!? ……っ」


 マーチちゃんにどこでゲットしたのかを聞かれたので、一応証明のためにと紺碧錫玉こんぺきしゃくぎょくE魔石を渡して説明すると、彼女は一瞬目を見開いたあとに、私にあり得ないものを見るような目を向けてきました。


「……ゲーム初心者がなんでベータテスト組を置き去りにできるの? 威厳が保てなくなるからそういうのはできればしないでもらいたいのだけど……」

「えっ、ええー……?」


 ジト目でそんなことを言われても困ってしまいます。

 私、マーチちゃんを置いてけぼりにしたつもりなんて一切ありませんし、これまで必死にやってきただけですし……。

 マーチちゃんはそう呟いたあと、検査があるから、と現実に戻っていきました。

 私はというと、マーチちゃんが消えたあともしばらくの間呆然と立ち尽くしていました。



……………………



 五月五日。

 現実では六時、ゲーム内では②の0時にログインして、メールボックスを確認します。

 『運営』からのメッセージが届いていました。


『イベント中間発表、その2!(5月5日:ゲーム内①0時‐現実0時)



 いつもご利用いただきありがとうございます。

 「ギフテッド・オンライン」運営チームです。


 現在行われている「魔石集めイベント」の中間発表をさせていただきます。

 10位から1位のパーティ名とポイントを公開いたします。

 上位を狙いたいパーティの皆様は参考になさってください。


 10位 ベータテスターの集い    99,600ポイント

 9位 お菓子がないならプデ…… 102,444ポイント

 8位 イベント特攻隊      109,440ポイント

 7位 MARK4          110,119ポイント

 6位 真のギフテッドマスター  130,560ポイント

 5位 ギフテッドの旅団     165,193ポイント

 4位 ファーマー        291,412ポイント

 3位 プディン帝国       304,652ポイント

 2位 我がままに我がままを   738,264ポイント

 1位 シニガミ         858,112ポイント


 イベント期間中に効果を発揮する課金アイテムはまだまだ販売しております。

 ぜひご利用ください。


 引き続き、「ギフテッド・オンライン」をよろしくお願いいたします。

 「ギフテッド・オンライン」運営チーム一同より』


 私たちはまだ四位をキープできているとのこと。

 初イベント最終日。

 頑張りましょう!

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