第64話(第二章第22話) 素早さを上げよう
ボスを倒したことで現れた光のゲートをくぐった先にあったのは水の街でした。
第三層・水中エリアです。
さっきまで砂がメインの乾燥したエリアにいたこともあり、一瞬にして潤いに満ちたエリアに変わったことに私は感嘆させられました。
第三層にある街・ブクブクの街はスノードームを大きくした容器のようなものにその全体が覆われていました。
スノードームは中が液体なのに対して、ここは中に空気があって外が水のようでしたが。
街にある家もガラスのような素材でできていて、スノードームの一部がくり抜かれたような形をしていました。
なんて表現すればいいでしょうか?
……そうです!
かまくらです!
武器屋や道具屋などの建物はかまくらみたいな見た目になっていました。
そして、なんと言ってもすごかったのは中央にある噴水です。
水の街だからでしょうか?
今までに見た噴水の中で一番大きく、その中央には女神と思われる像も設けられていてとても豪華に感じました。
その噴水から噴き上がる水の量も多く、時折街を覆うドームに噴きつけてドームに水を伝わらせていて、その光景がなんとも幻想的でした。
ドームと地面の境には溝があるようで、それによって街が水浸しにならない構造になっているようです。
私はしばらくの間噴水に見惚れていましたが、第三層までやってきた要件を思い出して行動を開始します。
……っと、その前に第三層に来れたことをマーチちゃんに知らせないと!
――プルルルル、プルルルル
……電話を掛けてみましたが、出ません。
魔石を増やす作業に没頭しているようです。
これは、マーチちゃんがこのイベントで結果を残そうとしているということですから、その邪魔をしてはいけないと思います。
ですから、マーチちゃんが集中できるように電話をするのは切り上げました。
メッセージだけ送っておこう。
マーチちゃんにメッセージを送り終えた私は街を探索することにしました。
「まずは図書館からだね」
ここに来た目的はハヤ草を手に入れることなので、入手できるアイテムを調べるには図書館が最適です。
ということで図書館へ。
第三層でゲットできるアイテムの一覧を調べてみると、
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・状態回復草・ハヤ草・オソ草・悪心草(ドロップアイテムを除く)
========
「あっ! あった!」
ハヤ草の表記を見つけました!
この第三層にあるようです。
場所は……「ダンジョン3(西)」。
難易度の高い方にあるんですね……。
何はともあれ。
素早さをどうにかできれば一からやり直しになるリスクをさらに抑えることができます。
私は意気揚々と図書館を飛び出して、早速街の西側のゲートへと向かって行きました。
街の外に出ようとして止められます。
「ちょっとアンタ。そんな格好じゃ溺れちまうよ。武器屋にこの外でも活動できるようになる装備が売ってるから揃えてから来な」
門番さんにそう注意を受けました。
私が身に着けていたのは砂漠エリアで活動できるようにするための『寒熱対策のローブ』と『防塵ゴーグル』で、これらがないと第二層のダンジョンには行けないというものでした。
第三層のダンジョンに行くためにも特定の装備が必要になるようです。
というわけで武器屋へ。
そのお店に置かれている防具はほぼ一律で156,800Gというお値段になっていました。
た、高いです……っ。
今まで一つのステータスしか上げられなかったのが、「攻撃が16%、防御が4%上がる」という具合に二つのステータスを上げられる性能になっているのですが、高くて手が出せません。
それらをスルーして奥へ行くと、二つの商品が目に入ってきました。
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水中自在のウェットスーツ……39,200G
水の中で自在に動けるようになるウェットスーツ。
まるで陸にいるかのように動くことや、魚の如く泳ぐことが可能になる。
空気のシュノーケル……39,200G
水の中で呼吸ができるようになるシュノーケル。
これがあれば水の中にあるダンジョンも息継ぎの心配がなくなる。
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……これですね、第三層をクリアするのに必要な装備って。
『寒熱対策のローブ』と『防塵ゴーグル』は一つ9,800Gだったのに、39,200Gって……。
これも値上がりしてるんですか?
これ、一番大変なことってもしかして、次のエリアにあるダンジョンに入るために絶対に必要になる装備を買うための資金を集めることなんじゃ……?
魔石は
それで約80,000Gも稼がないといけないなんて……。
しかもそれは一人分。
もし四人パーティなら320,000G近く必要になります。
うちにはマーチちゃんがいますから、この心配はほとんどないのですが。
……マーチちゃんがいなかったらと思うとえげつなさを感じます。
そして、今の私の残金なのですが、「セツ:所持金64,420G」――。
足りません……。
マーチちゃんに頼めば済む話なのですが、彼女は今忙しいみたいですし……。
第二層に戻ってモンスターを倒してお金を集めてこようかな……?
……あっ、エリアボス戦で使っていなかったアイテムがありました。
薬品系のアイテムで使用期限があるため、売ってしまいましょう。
市販の防御デバフポーションが残っていたことを思い出した私は道具屋へ向かいました。
「……え?」
これは道具屋に着いて、防御デバフポーションを売ろうとした時の私の一言です。
買った時は2,000Gの防御デバフポーションR。
売る場合は半値になるため、三つで3,000Gにしかならないかな? と勝手に思っていました。
ですが、売値は
――768,000G
それもそのはずです。
私が売ろうとしたのは防御デバフポーションRではなく、『ポーション昇華』を使って品質を高めた防御デパフポーションL(Lv:3)だったのですから。
残しておいても消滅するだけなので売ってしまいましたが、なんかすごく悪いことをしている感じがして居たたまれなくなりました。
マーチちゃんだけじゃなくて私のスキルも、錬金術ができてしまうんですね……。
……………………
無事(……無事?)装備を揃えることができた私は「第三層水中エリアダンジョン3・リスセフの沈没船」へ。
そこは沈没船なのに中には何故か空気があって、豪華客船をモチーフにした感じのダンジョンでした。
リスセフをデフォルメしたような緑色の実をつけたハヤ草はそこに生えているわけではなく、収納スペースの中や、客室のベッドの下なんかに隠すように置いてありました。
ダンジョン一階だけを巡って、かなりの数のハヤ草を手に入れられたので帰還します。
『帰還の笛』を使って街の広場に戻って、すぐさま『寒熱対策のローブ』に着替えました。
着替えは一瞬で、濡れた身体も髪も着替えると同時に乾きました。
流石ゲームの世界です。
着替えたのはマーチちゃんがいる第二層に行くから、なのですが、その、なんというかウェットスーツを長時間着ていたくなくて……。
『踏破者の証』を使ってカラカラの街の宿屋へ行き、つくった素早さバフポーションをマーチちゃんに見せた時の反応は……。
「……え? お姉さんの耐久があってそんなに素早さ上げたら、それもうゴキブ――」
「わぁああああ!」
……遺憾です。
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