第63話(第二章第21話) 第二層のエリアボス2
第二層のエリアボスは背中にドクロの模様が描かれた翅が生えた大きいリスセフ。
翅を激しく羽ばたかせて空を飛び始めます。
部屋を見渡してみるとこのボスのために用意された場所であるように感じられます。
天井が高く、ボスは地面と天井のちょうど中間辺りに浮いていました。
地面から五、六メートルくらいの位置でしょうか……。
これでは攻撃が届きそうにありません。
どうすればいいのか、考えます。
翅を動かして飛んでいるということは、動かせなくなったら飛べなくなるということでしょうか?
可能性はあります。
そうだとしたら、用意したこのアイテムが使えるかもしれません。
========
麻痺薬L(Lv:2)…… 使用すると四秒間、痺れさせて動きを封じることができる。
耐性ができてしまうため同じ対象に何度も使用することはできない。
対象の麻痺耐性を256%の確率で無視する。
有効時間は四秒。
使用期限は購入してから四日。
========
市販のものを昇華のスキルで品質を高めた麻痺薬L(Lv:2)です!
痺れさせられる時間はコモン品質の時と変わりませんでしたが、状態異常に耐性を持つモンスターにも通用するという効果が得られました!
256%とあるので、確実に効いてくれるはずです!
(前に麻痺薬をレジェンドLv:3まで上げたことがあるのですが、その効果は「麻痺耐性を1,024%の確率で無視する」だったんですよね)
(「256%無視する」と「1,024%無視する」の違いが私ではわかりませんでした……)
私は自分に素早さバフポーションを使って、麻痺薬のビンを持って振りかぶりました。
現実では球技があまり得意ではない私ですが、ステータスが上がっているおかげでしょうか?
外す気がしません。
しっかり狙って投げると麻痺薬が入ったビンはボスのリスセフに向かって真っすぐにものすごい速さで飛んでいき、その身体のちょうど真ん中に命中します。
「やった……!」
当てられたことに喜んで攻め込むのを忘れてしまいそうになりましたが、止められる時間が四秒しかないことを思い出して慌てて接敵しようとしました。
しかし、次のテロップが表示されたのです。
――『レジストされました』――と。
「な、なんで!?」
足が止まります。
私はわけがわからなくなっていました。
確実に痺れさせられるように品質を上げていたのに……!?
「麻痺耐性を256%無視する」って必ず麻痺状態にできるってことだよね!? 違うの!? と頭の中で叫んでいると、『声さん』が反応してくれました。
『麻痺耐性は無視できますが、「麻痺無効」は無視できません』
「ま、『麻痺無効』……!?」
また新しい言葉が……。
「無効」ということは、効力や効果をなくすということ……。
どうやらこのボスは、その「麻痺無効」という力を持っているようです。
だから絶対に麻痺にはならない、と。
……毒が効かなかった第一層のエリアボスといい、本当にエリアボスは私が悩み抜いて考えついた対策をいとも簡単に対策してきますね。
相手が痺れている間に決着をつけようとしていたので素早さバフポーションを使い切ってしまっていました。
早く打開策を講じなければまずいかもしれません。
ステータスが上がっているのでジャンプをすれば相手に届かないか、と考えてやってみましたがダメでした。
ジャンプで飛べる高さは素早さに依存するらしく、高さは充分でした。
むしろ天井に達しましたから高すぎるほどです。
ですが、問題は跳ぶことに慣れていなかったこと。
空中での動きが不安定なため、緑のオーラを纏いに纏った相手にあともう少しのところで躱されてしまったのです。
「……あっ! くぅっ!」
私は焦っていました。
一回目はそのまま落ちて地面に着地して、もう一回ジャンプして相手を掴みに行きます。
しかしまた避けられて、私は天井へ。
そこで、天井を蹴って落下の加速も利用すれば相手の空中で避ける速さに追いつけるのでは? と思いつきます。
私はそれを試そうとしました。
その時です。
「うぐ……っ!?」
私の身体は急に動かなくなりました。
どうやっても動かせなくなったのです。
この感覚を、私は知っていました。
――虹色のプディンと戦った時に。
麻痺状態にされたのだと私は瞬間的に理解しました。
何もできずに地面へと落下していきます。
……ほんと、私は相手を痺れさせられないのに相手はできるって、なんなんでしょう?
(……って! そんなこと考えてる場合じゃないっ!)
私は頭から地面へと向かって行っていました。
まだ痺れているので身動きが取れません。
どんどん近づいてくる地面に、私は恐怖を覚えます。
(これ、死ぬんじゃ――)
頭がぐちゃっと潰れるのを想像してしまって、身の毛が
それでも何もできぬまま……。
私は頭から着地しました。
一瞬、死んだと思いましたが、私は無事でした。
現実なら高い可能性で死んでいたと思います。
私はその感覚になってしまっていましたが、ここはゲームの世界。
私に入っていたダメージは僅か「1」でした。
ゲームの世界でよかった……! 防御を上げたままにしておいてよかったぁ……!
防御を攻撃同様に下げていたら結果は変わっていたかもしれません。
最悪、素早さを上げた状態で高く跳びすぎて着地に失敗したことによる死で一からのやり直しになっていたかも……。
もしそうなっていたら笑えません。
動けるようになったので身体を起こして、生きていたことに胸をなでおろしていると、また動きを止められました。
そして迫ってくる翅の生えたリスセフ。
まったく……。
情緒も何もあったものではありません。
私はボスリスセフの攻撃を受けました。
何回かその
けれど、一番ボスに接近できたのです。
このタイミングを逃すわけにはいきません。
私は動けるようになると同時にボスリスセフを追いました。
攻撃バフポーションを全て使って。
素早さバフポーションの効力がまだ切れていなかったため、追いつくことに成功します。
やっとボスを捕らえました。
「ゲッ、ゲエエエエッ!?」
しっかり掴んで逃げられなくしてから、防御デバフポーションを相手に浴びせて、
「せいっ!」
ボスリスセフを投げ飛ばしました。
「グゲェ……ッ!」
地面にたたきつけられて黒い粒子となって消えていくボスリスセフ。
第二層エリアボス制覇です。
倒せなかったらまずいと思って攻撃バフポーションを全て使ってしまったのですが、攻撃力18,495でも過剰だったでしょうか……?
その姿がなくなって、残ったのは緑のE魔石が五つ。
……エリアボス、やっぱりケチです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます